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例えしつけでも子どもをたたかないほうがいい、たった1つの理由(1)

モンテッソーリ教育を受けた子ども達

モンテッソーリ教育を受けて子ども達はどのように変化していくの?そんな問いかけにモンテッソーリ教師が体験した実例を掲載いたします。

かんしゃくを起こす年少さんのAちゃん(女の子)

4月生まれで体が大きく、負けん気も強いAちゃん。
年少さんの頃、毎日のようにかんしゃくを起こし、周りのお友達を傷つけてしまう時期がありました。

理由は大人から見れば些細なこと。
例えば「並ぶ順番は常にいちばんがいい」といったこだわりが本人の中でとても強く、それがかなわなかったときに激しくカッとなって、その場にいあわせたお友達をたたく、蹴る、突き飛ばす、もしくはそれを止めようとした先生にも同じようにする。
人がダメならロッカーや机、いすなどの物に当たり散らし、本人も大泣きでパニックに…というパターンでした。
日に日に激しさが増してきて、実際にいすを投げ飛ばしたり(!)、大きな机を蹴り倒そうとしたこともありました。私を含め先生たちは、まずはAちゃんも含めた子どもたちが傷つかないようにすることに必死でした。

どうにもこうにも手を焼いて、先生方にAちゃんのことを相談したときに、園長先生が強くおっしゃった言葉が今も忘れられません。

「まずは、私たち大人が、絶対にAちゃんをたたかないこと。」

「たとえ『手をペチン』ほどの、大人から見たら、これって暴力?単なるおしおきじゃない?と感じる程度のことでも、絶対にしないように。
こちらが『たたかれたらこれだけ痛いのよ、だからたたかないでね』という意味でAちゃんをたたいても、Aちゃんの中に残るのは『人は怒ったらたたいていいんだ。私も怒ったら人をたたいていいんだ』という無意識のメッセージだけ。」

「Aちゃんの世界から『暴力をふるわれる』という体験を消さないことには、Aちゃんの暴力的な行為はなくなりません。
何でも吸収する時期は、そういう時期です。」

吸収する時期 0~6歳頃

生まれてから6歳ころまでの子どもには、周りで起きていることや見聞きしたこと、五感を通して感じたことなどをすべて、スポンジのように吸収する、この時期特有の働きがあります(吸収する精神)。
母国語を話せるようになる、二本足で歩けるようになるのも、周りに母国語を話す大人、二本足で歩く大人がいるからです。周りにいる人の口の動きや音、足や手の動きなどを無意識に吸収(インプット)して模倣する(アウトプット)することで、自分の一部にしていきます。
さらには方言やその土地独特のイントネーション、そのおうち特有の話し方やくせなど、細かいところまで吸収して自分のものにします。この働きがあるから人間はどこで生まれてもその時代、その土地処の生活や文化に適応することができるのです。

ここで注意したいのは、3歳頃までの無意識に吸収する時期は特に、いいものも悪いものもすべて吸収してしまうこと。スポンジがきれいな水も濁った水も分別なく吸収するのと同じです。
そして3歳以降は吸収するものを意識的に選んでいきますが、この時期に、3歳までに無意識に吸収したことも意識上にのぼってきます。

「怒られてたたかれる」体験をしてきた子どもは、それがそのまま本人の中に残り、周りの人にもそのままアウトプットしてしまう=怒ったらたたいてしまうという悪循環が起こります。ここに「あなたのため」という文言がつくと、たたかれることが愛されているという間違ったインプットがされてしまう可能性もあります。

Aちゃんのケースでは、虐待ではありませんがしつけの範囲内で、ご家庭で怒られてゴツン!とされていることや、小学生のお兄ちゃんとケンカになるとたたき合っていることなどが分かっていました。
よくある、本当によく見られるご家庭の風景と言ってしまえばそれまでです。
でもAちゃんの場合はかんしゃくの起こし方が生半可なものではなかったので、おうちの方々にも「絶対にAちゃんをたたかないこと」をご協力いただき、Aちゃんの暴力体験を徹底的になくした方がよいと判断し、お話ししました。小学生には難しいかな…とも思いましたが、健気にも、「Aにたたかれてもたたき返さない、怒ってAをたたかないように僕もがんばる」とお兄ちゃんも言ってくれました。

そしてもちろんAちゃん本人にも、
「人をたたいてはいけないよ。Aちゃんの手は人をたたくためのものではないんだよ。
自分の身の回りのことをしたり、人のお手伝いをしたりするための手なんだよ。
Aちゃんにはそれができるんだよ。」ということを粘り強く伝え続けました。

それ以前に、どれだけカッとなって暴れても、どんなに些細なことでも、「怒ってたたいたら思い通りになった」という間違った成功体験だけはさせないようにというところだけは譲りませんでした。
その結果カッとなってしまったAちゃんはもうどうにも止められなかったので、ひとまず被害の少ない場所に避難させてひととおり感情を吐き出してもらい、本人の気持ちが落ち着いてから上のようなお話をしました。

それから2年後、、、Aちゃんはどんな成長を遂げたのでしょう?
>> 続きはこちらをご覧ください。

ライター/コマツヒロコ   AMI公認国際モンテッソーリ教師(2歳半~6歳+)、保育士。
東京国際モンテッソーリ教師養成センター卒業後、さいたま市にあるモンテッソーリあかねこどものいえに4年勤務。現在は横浜市の保育園に勤務中。
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