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映画「モンテッソーリ 子どもの家」スペシャル企画/アレクサンドル・ムロ監督インタビュー

今回は映画「モンテッソーリ子どもの家」のアレクサンドル・ムロ監督のインタビューを掲載します。

アレクサンドル・ムロ(監督・撮影・録音)プロフィール

工学を学んだ後、ガリマール、フラマリオン、ラルース、アルテなど多くの出版社のためにCD-ROMを制作。その後、インターネットでの活動を開始するが、創作の幅を広げるため、ソルボンヌ大学で美術史を、さらにドキュメンタリー映画ワークショップ「アトリエ・ヴァラン」でドキュメンタリー制作を学ぶ。2009年、物への愛着をテーマにした最初のドキュメンタリー『Poubelles et sentiments(ゴミ箱と気持ち)』を発表。この作品は多くの映画祭で上映された。2014年より教育分野に情熱を傾け、第2作となる本作に専念。モンテッソーリ教育のことをよく知るため、2015年夏に国際モンテッソーリ協会(AMI)の3~6歳向け教師養成研修を受け始め、2018年に修了。

夢と情熱、世界の発見、環境保護があなたの基本ポイントですね。旅行記サイトの運営、グリーンピースへの参加、「Les Amis de la Terre(地球の友)」(環境NGO)の指揮といった活動は本作と関係していますか?

本作は、ひとつの教室での出来事ですが、尊敬、子どもの発達という問題を通じて大人たちに、そして未来を生きる世界中の人々に関わりがあります。教育、市民権、平和、尊敬、地球というテーマはマリア・モンテッソーリの全著作で触れられていて、それは本作にも通ずると思います。1870年に生まれ、1952年に亡くなった彼女が激動の時代を生きたことを忘れてはなりません。ファシズムが台頭したイタリア、次いでスペインから2度も亡命し、ふたつの世界大戦を経験したのです。

マリア・モンテッソーリのヴィジョンのどんなところが現代的だと思いますか?

独創的で、精神的で、普遍的なところです。彼女は世界平和について大変重要な話をしています。子どもの自主性と自信を主軸に据えた彼女の教育メソッドは、この困難な現代において本質を突いているように思います。また、これほど多くの学校が世界中に作られている教育法を編み出した人物は他にいません。

教育とは知識を伝授することではなく、子どもの精神の発達を手助けすることだと彼女は考えています。この点は非常に決定的ですし、とても現代的です。学校の改革や、最新テクノロジー導入の影響の分析、教師の育成にもこの考え方が取り入れられているのです。子どもたちだけが私たちを導き、限界を超えさせ、精神的に成長させてくれると彼女は言っています。とても力強い考えですよね。

映画はプライベートな映像から始まります。長女の誕生が本作の出発点ですか?

誕生時から子どもを撮影していました。日常の中で子どもを観察するときは、子どもに好きにさせ、自分で困難を見定めて自分のリズムで解決させていましたが、周囲に理解されず、奇異に思われたり、正気を疑われたりもしました! そのことをきっかけに本作を制作することにし、子どもの心理や教育法に興味を持つことにもなったのです。

撮影はどのようにして進めたのですか?

ルーベにある幼稚園のクラスで撮影しました。モンテッソーリの教育法の的確さ、美しさ、効果を観客に実感してもらうため、何人かの子どもたちと教師の個性に導かれるままに撮影することにしました。マリア・モンテッソーリにとっては、すべての子どもが発達の可能性に満ちています。教育者の役割は、子どもの知的、感情的、身体的、社会的な可能性を引き出し、個性に応じてそれを伸ばすことです。映画は子どもたちを追い、教師の仕事と姿勢を見せ、整えられた環境を観客に発見させます。私は、日ごとに個性を現し、能力を伸ばしていく子どもたちのさまざまな顔を捉えようとしました。ずっと隅にいた内向的な子が徐々に社交的になり、車好きな子が車に関する読み物のおかげで字がどんどん読めるようになり、落ち着きのない子が自制心を持とうとする……。教育者は発達を妨げるものから子どもを解放し、自己形成できるように力を尽くすのです。

ルーベのこの幼稚園を選んだ経緯は?

フランス中の22のモンテッソーリ学校を見て回った後で、ここに決めました。雰囲気、子どもたち、そして教育者としても人間としても素晴らしい先生に惹かれたのです。このジャンヌ・ダルク学校は1946年から幼稚園と小学校でモンテッソーリ教育を実践している私立校で、フランス最古のモンテッソーリ学校です。ドミニコ会修道女たちによって創立され、マリア・モンテッソーリから直接指導を受けた修道女もいました。現在650人の子どもが通っていますが、私が選んだのはクリスティアン・マレシャル先生が受け持つ6歳までの28人のクラスです。学校はルーベの中心部にあり、多様な境遇の子どもを受け入れています。特権階級のための学校でもなければ、全員顔見知りの田舎の学校でもなく、また経済的、社会的、言語的な困難を抱えた家庭の多いZEP(優先教育地区)の学校でもないことが私にとって非常に重要でした。

なぜ「観察映画」のスタイルにしたのですか?

その点は決定的でした。インタビューで構成した映画にも、学習や子どもの発達に関する理論的な問題を議論する映画にもしたくなかったし、組織や学費の問題、中国でのこのメソッドの導入に関する問題などを扱う気もありませんでした。モンテッソーリの教育法を見せたかったのです。教室に入ったら、すべての先入観を捨て、自分の気配を消し、クリスティアンがどのようにモンテッソーリの思想を実践しているかを撮影すること。またモンテッソーリの知られざる声をできるだけ直接的に聴けるようにしたい、彼女の思想と彼女が推奨したことの現代性を示し、彼女が考案し今も使われている教具を見せたいと思いました。

ひとりで撮影することに決め、自由に動けるように小型カメラに脚を付け、マイクを2個付けました。そして子どもたちの背の高さで撮影したのです。教室を3週間観察した後で2015年3月に撮影を開始しました。子どもたちの中にそっと溶け込めるように機材を少しずつ運び込み、映像の前に写真を撮ることから始めました。できるだけ目立たないように引っ込んでいても、子どもたちは私のことを覚えて質問してきます。教師研修を受けた後は、教具を見せてあげたり子どもたちと一緒に作業をしたりもしました。撮影は2016年6月に一旦終わりましたが、その後も何度も訪れ、クラスの様子や子どもたちの成長ぶりを撮り続けました。今でも子どもたちの家族と連絡を取っているんですよ。ルーベでの試写会は、子どもたちとその全家族に加えて620人の観客が集まり、とても感動的なものになりました。

編集の際は、実際の音と会話を尊重しましたが、モンテッソーリの著作から抜粋した言葉をナレーションの形で加えることにしました。彼女の姿は冒頭に写真で登場するだけです。彼女についての映画ではなく、彼女の思想についての映画を作りたかったのです。

中心となっている子どもたちはどのようにして選んだのですか?

私は子どもたちを選んではいないし、撮影中に特別に何人かの子にカメラを向けていたわけでもありません。ルーベに規則正しく撮影に通いましたが、何が起きるかはまったくわからなかったのです。1日のスケジュールが決められていたり活動を指示されたりしないのがこのメソッドの原則です。私にとっては本当に難しい撮影でした。常に待機し、とっさに動き、ひとりですべての機材を操作し、照明の調整もしなくてはなりません。確かに映画の中では何人かの個性が際立っていきます。彼らの学びにおける魔法のような瞬間を捉えるチャンスに恵まれたからです。教師が忍耐強く待つのと同じです。発見し、文字を読み、米を移すことに夢中になり、目をきらきらと輝かせる。楽しさとやさしさにあふれたシーンの数々。取りかかるまでに長時間ためらい、迷う子どもたちもいました。撮影を観察していた子どもたちの姿もスクリーンで見られます。観客は彼らをその他大勢と見なしますが、それは映像の読解論であり、私の意図したことではありません。このメソッドのおかげで自立や集中、他者との関わり方、謙虚さを体得した子どもたちが、この映画を導いてくれたのです。


監督・撮影・録音:アレクサンドル・ムロ
日本語吹替:本上まなみ/向井 理
2017年/フランス映画/105分/カラー/ビスタ/5.1ch/原題:Le maître est l’enfant/ 英題:LET THE CHILD BE THE GUIDE/日本語字幕:星加久実/日本語字幕監修:田中昌子 大原青子/提供:スターサンズ、イオンエンターテイメント
配給:スターサンズ、イオンエンターテイメント
コピーライト: © DANS LE SENS DE LA VIE 2017
公式サイト:
http://montessori-movie.jp/
レイティング:G

2021年2月19日(金)公開/上映劇場
【関東地区】
・埼玉 イオンシネマ浦和美園 2月19日(金)~
・埼玉 イオンシネマ春日部 2月19日(金)~ 
・埼玉 イオンシネマ越谷レイクタウン 2月26日(金)~ 
・埼玉 MOVIX三郷 2月19日(金)~ 
・千葉 イオンシネマ市川妙典 2月19日(金)~ 
・千葉 イオンシネマ千葉ニュータウン 2月26日(金)~ 
・千葉 MOVIX柏の葉 2月19日(金)~ 
・東京 新宿ピカデリー 2月19日(金)~
・東京 イオンシネマ板橋 2月19日(金)~ 
・東京 アップリンク吉祥寺 2月19日(金)~
・東京 イオンシネマ多摩センター 2月19日(金)~
・東京 イオンシネマ日の出 2月19日(金)~ 
・東京 イオンシネマむさし村山 2月19日(金)~ 
・東京 MOVIX昭島 2月19日(金)~ 
・神奈川 イオンシネマみなとみらい 2月19日(金)~ 
・神奈川 イオンシネマ海老名 2月19日(金)~
・神奈川 イオンシネマ座間 2月19日(金)~ 
・神奈川 MOVIX橋本 2月19日(金)~ 
・栃木 MOVIX宇都宮 2月19日(金)~ 
・群馬 イオンシネマ太田 2月19日(金)~

【中部地区】
・長野 イオンシネマ松本 2月19日(金)~
・静岡 MOVIX清水 2月19日(金)~ 
・愛知 イオンシネマ名古屋茶屋 2月19日(金)~ 
・愛知 ミッドランドスクエア シネマ 2月19日(金)~ 
・愛知 MOVIX三好 2月19日(金)~ 
・愛知 イオンシネマ常滑 2月19日(金)~

【近畿地区】
・京都 イオンシネマ京都桂川 2月19日(金)~
・京都 アップリンク京都 2月26日(金)~ 
・京都 イオンシネマ久御山 2月19日(金)~ 
・京都 イオンシネマ高の原 2月19日(金)~ 
・大阪 なんばパークスシネマ 2月19日(金)~ 
・大阪 MOVIX堺 2月19日(金)~ 
・大阪 イオンシネマりんくう泉南 2月19日(金)~
・大阪 イオンシネマ大日 2月19日(金)~ 
・大阪 MOVIX八尾 2月19日(金)~ 
・兵庫 神戸国際松竹 2月19日(金)~ 
・兵庫 MOVIXあまがさき 2月19日(金)~

【中国・四国地区】
・岡山 MOVIX倉敷 2月19日(金)~
・広島 イオンシネマ広島西風新都 2月19日(金)~

【九州・沖縄地区】
・福岡 イオンシネマ戸畑 2月26日(金)~
・福岡 イオンシネマ大野城 2月26日(金)~ 
・福岡 イオンシネマ福岡 2月26日(金)~

※上映劇場が変更となる場合がありますので、鑑賞の前に必ず劇場にご確認ください。
※地区によって公開日が異なりますのでご注意ください。

デザイナー&モンテッソーリポータル「バンビーノ」編集長/池角貴也   広告デザイン会社、OL向け雑誌編集部、音楽雑誌編集部、WEB制作会社、映像制作会社勤務を経て、株式会社フラグメント(ホームページ制作会社)代表。
2020年9月世田谷区上野毛にて
上野毛モンテッソーリこどものいえ 「バンビーノ」オープンしました!
https://bambi-no.net/kodomonoie/
2020年AMI3-6モンテッソーリ教師アシスタント資格取得。

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