赤ちゃんのおもちゃは、たくさんあったほうがいい?「選べる数」と集中の関係

出産祝いでもらったおもちゃ。月齢に合わせて買ったガラガラ。音が鳴る物、握る物、転がる物、歯固め、布絵本――。
赤ちゃんのために選んだ物が増えてくると、「せっかくあるのだから、全部見えるところへ出しておこう」と思うかもしれません。たくさんの中から好きな物を選べたほうが、赤ちゃんにとっても楽しいように感じます。
しかし、大人には「選択肢が豊富」に見える環境も、赤ちゃんには、いくつもの色や音や形が同時に目へ入ってくる環境です。赤ちゃんがひとつを見つけ、自分から手を伸ばし、十分に確かめるためには、選べる物の数を少し絞ったほうがよいことがあります。
「選べること」と「たくさん並べること」は違います
AMI(国際モンテッソーリ協会)が保護者向けに発信している「Aid to Life」では、赤ちゃんが自由に動ける運動マットに、興味を持ちそうな物を置くことが紹介されています。
まだ大きく移動できない時期には、手で握りやすい物や、触れるとゆっくり転がる布製のボールなどを置きます。はいはいが始まる頃には、少し速く転がるボールや車輪のある物が、赤ちゃんが自分から動くきっかけになります。
ここで大切なのは、赤ちゃんの周りをおもちゃで埋め尽くすことではありません。発達の状態に合った物を、赤ちゃんが見つけられるように置くことです。
モンテッソーリでいう「選べる環境」とは、数が多い環境ではありません。目の前にある物の違いが分かり、自分でひとつを選び、その物へ向かえる環境です。
おもちゃが多いと、遊び方はどう変わる?
2018年に学術誌『Infant Behavior and Development』に掲載された研究では、36人の幼児が、4個のおもちゃがある環境と16個のおもちゃがある環境で、それぞれ自由に遊びました。
おもちゃが4個のとき、子どもはひとつのおもちゃにより長く関わり、同じ物をさまざまな方法で使っていました。一方、16個ある環境では、次々と別のおもちゃへ移る姿が多く見られました。
ただし、この研究の対象は平均年齢がおよそ2歳の幼児で、人数も36人です。「すべての赤ちゃんに、おもちゃは必ず4個がよい」と証明した研究ではありません。
それでも、目の前にある物を少なくすると、子どもがひとつの物へ長く関わりやすくなるという結果は、赤ちゃんの環境を考えるうえでも参考になります。
赤ちゃんの集中は、静かに始まっています
赤ちゃんの集中というと、長時間遊び続ける姿を想像するかもしれません。しかし、赤ちゃんの集中はもっと小さな姿で現れます。
吊るされたモビールを目で追う。握った物を口へ運ぶ。持ち替える。振って音を聞く。落とした物を見る。同じ動きを何度も繰り返す――。
大人には短く見えても、赤ちゃんはその間、見る、触る、動かす、聞くという方法で、目の前の物を調べています。
ところが、すぐ隣に色鮮やかな別のおもちゃがあり、反対側から電子音が聞こえ、さらに大人が新しい物を手渡すと、始まりかけていた探索が途切れることがあります。
赤ちゃんを集中させるために、何かを教える必要はありません。集中が始まったときに、新しい刺激を重ねず、そのまま見守ることも大人にできる援助です。
何個なら、ちょうどいいの?
すべての赤ちゃんに共通する、正しい個数があるわけではありません。月齢、動ける範囲、興味の向かう先によって変わります。
まだ寝返りをする前なら、モビールは一度にひとつで十分です。手で物を握り始めたら、運動マットの上に握りやすい物をひとつか二つ置いてみます。自分で移動できるようになったら、手を伸ばせる場所に、性質の異なる物を数点用意できます。
たとえば、握って感触を確かめる物、振ると小さな音がする物、ゆっくり転がる物というように、それぞれに異なる動きが生まれる物を選びます。同じような機能のおもちゃを何個も並べる必要はありません。
最初から数を決めるより、赤ちゃんの姿を見ます。
どれを見ればよいか迷っているようなら減らす。ひとつずつ手に取って十分に調べているなら、その数でよい。今ある物にほとんど関心を示さなくなったら、別の物と入れ替える。
個数を決める手がかりは、収納棚の大きさではなく、目の前の赤ちゃんの動きです。
全部しまうのではなく、少しずつ入れ替えます
おもちゃを減らすというと、持っている物を捨てなければならないように感じますが、その必要はありません。今使わない物は、赤ちゃんから見えない場所へしまっておきます。
そして、現在出している物への関心が薄れてきたら、しまってある物と入れ替えます。以前よく遊んだ物も、しばらく見えない場所に置かれたあとで再び出すと、新しい動き方で確かめ始めることがあります。
ただし、大人の予定で毎週すべてを交換する必要はありません。繰り返し使っている最中のおもちゃまで片づけてしまうと、赤ちゃんが続けていた探索を断つことになります。
「もう飽きたはず」と大人が判断するのではなく、手に取らなくなった、以前ほど長く関わらなくなったという姿を見て入れ替えます。おもちゃのローテーションも、赤ちゃんの観察から始まります。
おもちゃ箱より、見渡せる置き方を
自分で移動できるようになった赤ちゃんには、低い棚に少数のおもちゃを並べる方法があります。ひとつずつ置き場所が見え、赤ちゃん自身が近づいて手に取れる高さにします。
AMIのQ&Aでも、家庭のおもちゃは棚や容器を使って整理し、すべてを大きなおもちゃ箱へ投げ込む方法は勧めていません。深い箱の中では、何があるのか見えず、使いたい物を探すために全部を出すことになりやすいからです。
棚に置く場合も、隙間なく並べる必要はありません。物と物の間に少し空間があると、一つひとつの形が見え、どこへ戻すのかも分かりやすくなります。
まだ自分で棚から選べない時期には、大人が運動マットへ少数の物を置きます。動けるようになったら、自分で近づいて選べる棚へ移していく。赤ちゃんの発達に合わせて、環境のほうを変えていきます。
よいおもちゃより、「今の赤ちゃんに合う物」
高価な知育玩具をたくさんそろえることが、発達を支えるわけではありません。赤ちゃんに必要なのは、今の手の動きで握ることができ、動かすと分かりやすい変化が起こり、自分の力で繰り返し確かめられる物です。
大人がボタンを押さなければ遊べない物より、赤ちゃん自身が握る、振る、転がす、落とすことで変化が起こる物のほうが、行為と結果のつながりを確かめられます。
もちろん、月齢に合った安全性を確認し、口に入れても外れない大きさ、壊れにくさ、角や紐の長さなどにも注意が必要です。
「足りないものを買い足す」ことから考えるのではなく、まず今ある物を少しだけ出し、赤ちゃんがどれに手を伸ばし、どのように使うのかを見てみましょう。
赤ちゃんが集中する環境は、おもちゃの多さによって生まれるのではありません。自分で見つけ、自分で選び、自分の手で十分に確かめられる余白の中で育っていきます。
参考資料
・Aid to Life「Toys for Movement(Birth to 8 Months)」
・Aid to Life「Toys for Movement(9 to 12 Months)」
・Association Montessori Internationale「Parents as Partners in Normalisation」
・Dauch C, et al.「The influence of the number of toys in the environment on toddlers’ play」Infant Behavior and Development, 2018
赤ちゃんが過ごすモンテッソーリの環境を実際に見ながら、運動、食事、睡眠、ことばなど、この時期の発達と家庭での関わり方を学ぶ全3回のクラスです。
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