世界初は日本にあった。モンテッソーリが認知症・高齢者ケアにも広がっている

モンテッソーリ教育と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは子どものための教育ではないでしょうか。
ところが今、その考え方は幼児教育の枠を越え、認知症のある人や高齢者、障害のある成人を支えるケアの分野にも広がっています。
そして2025年、AMI(Association Montessori Internationale/国際モンテッソーリ協会)の「Montessori for Dementia, Disability and Ageing(MDDA)」において、世界で初めてGlobal Accreditationを受けたケアコミュニティーが誕生しました。
その施設は海外ではありません。東京都羽村市にある「デイサービス・ポピー」です。
世界で初めてAMIのMDDA Global Accreditationを取得
AMIの公式発表によると、デイサービス・ポピーは2025年5月、世界で初めてMDDAのGlobal Accreditationを受けたケアコミュニティーとなりました。AMIの紹介では、週6日運営され、1日12人にケアと支援を提供しています。
ここで興味深いのは、「モンテッソーリ」という名前を掲げていることだけではありません。施設で行われている日々の生活そのものに、モンテッソーリの考え方が取り入れられています。
高齢者が「してもらう人」にならない
AMIの記事には、ポピーで高齢者が取り組んでいる活動として、パズルや色塗り、マッチングなどのほかに、食事の準備、アイロンがけ、掃き掃除、園芸といった活動が紹介されています。
幼児期のモンテッソーリ教育を知っている人なら、どこかで見たことのある光景だと感じるかもしれません。モンテッソーリの「日常生活の練習」と、とてもよく似ています。
ただし、大切なのは「高齢者に子どもと同じ活動をさせる」ということではありません。その人がこれまでの人生で行ってきたこと、その人にとって意味のある活動に、自分の力で参加できる環境をつくることです。
AMIのMDDAでは、本人の尊厳、選択、自立、意味のある活動への参加を大切にしています。
「自分で選ぶ」
「自分でできることをする」
「誰かの役に立つ」
「生活の中に自分の役割がある」
何もすることがなく、誰かにすべてをしてもらうのではなく、そんな環境をつくっていく。ここには、子どものモンテッソーリ教育と通じるものがあります。
「自分でできるように手伝ってください」は、子どもだけの願いではない
モンテッソーリ教育では、大人が先回りして何でもしてしまうのではなく、子ども自身ができるように環境を整え、必要なところだけを援助します。
高齢者のケアでも、同じような問いを持つことができます。
「この人には何ができないのか」ではなく、「この人が今もできることは何だろう?」と考えることです。
身体機能や認知機能に変化があったとしても、その人の能力がすべて失われるわけではありません。環境や活動の提示の仕方を変えることで、自分で選び、自分で行動できる場面が生まれることがあります。
MDDAがモンテッソーリから受け継いでいる重要な考え方のひとつが、この「人の中に残されている力を見る」という視点です。
子どもと高齢者が、同じ場所で生活する
さらにポピーには、とても興味深い特徴があります。隣にモンテッソーリの幼児施設があり、子どもたちと高齢者が日常的に交流しているのです。
AMIの記事では、高齢者と子どもが一緒にパズルに取り組む姿も紹介されています。MDDA公式ページに掲載されている写真を見ると、一緒に植物を植えたり、高齢者が子どもを手伝ったりする様子も確認できます。
ここで生まれているのは、単に「子どもが高齢者を慰問する」という一方向の関係ではありません。
子どもにもできることがあり、高齢者にもできることがある。お互いが生活の中で自然に関わります。
年齢によって人を分けるのではなく、異なる世代がそれぞれの力を持ち寄って暮らす。これはモンテッソーリが大切にしてきた「コミュニティー」という考え方にもつながっているように思います。
MDDAとは何なのか
Montessori for Dementia, Disability and Ageing(MDDA)は、認知症、障害、高齢者ケアの領域にモンテッソーリの原理を応用するAMIの取り組みです。
AMIでは専門的な研修を行うだけでなく、成人ケアサービスを対象としたQuality Framework(品質のための枠組み)を整備しています。
さらにGlobal Accreditation Programmeでは、モンテッソーリの環境を提供する成人ケア施設と協力しながら、実践を評価し、改善し、その質を維持していく仕組みを設けています。
つまり「モンテッソーリという名前を使っている施設」を認定するだけではありません。
継続的な振り返りや改善、専門的な支援を通して、モンテッソーリの原理が実際のケアに反映されているかを見ていくプログラムです。
世界初の認定施設が、日本にあるということ
世界で最初の施設が東京都羽村市にあるというのは、日本のモンテッソーリにとっても興味深い出来事です。
しかし、それ以上に考えてみたいのは、モンテッソーリは、いったい何歳までのものなのかということではないでしょうか。
0歳の赤ちゃんにも、3歳の子どもにも、小学生にも、青年にも、そして年齢を重ねた人にも、自分で選び、自分の力を使い、周囲の人と関わりながら生きていきたいという人間としての願いがあります。
モンテッソーリが見つめていたものを「幼児教育の方法」としてだけ捉えると、認知症ケアとモンテッソーリの組み合わせは意外に見えます。
けれども、その中心にあるものを人間の尊厳と自立を支えるための環境づくりとして考えてみると、幼児教育と高齢者ケアは決して遠く離れた世界ではありません。
東京の小さなデイサービスから始まった世界初の認定。そこには、モンテッソーリが「子どもの教育」を越えて、人生全体へと広がっていく可能性が見えてきます。
参考資料
Association Montessori Internationale / Montessori for Dementia, Disability and Ageing
「First AMI Global Accreditation Program Service」
AMI公式記事を見る
デイサービス・ポピー
デイサービス・ポピー公式サイト
厚生労働省 介護サービス情報公表システム
デイサービス・ポピーの事業所情報を見る
羽村市公式サイト
社会福祉法人ココロの会が市長を表敬訪問
一般社団法人日本モンテッソーリケア協会
日本モンテッソーリケア協会 公式サイト
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