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3年目に子どもは何を得るのか – サンドラ・ジラート先生が語る、子どもの家の3年サイクル

モンテッソーリの「子どもの家」では、一般に3〜6歳頃の子どもたちが、異年齢の環境で一緒に過ごします。

けれど、保護者にとっては、

「同じ教室で数年間を過ごすことに、どんな意味があるの?」
「年齢ごとにクラスを分けたほうが、学びやすいのでは?」
「いちばん年上になった子どもは、そこで何を学ぶの?」

と感じることもあるかもしれません。

AMI 3–6歳トレーナーのサンドラ・ジラート先生は、AMI公式「Voices of AMI Training」の中で、子どもの家における「3年サイクル」について語っています。

それは、同じことを数年間繰り返すという意味ではありません。

教えてもらう子から、自分でできる子へ。
そして、やがて誰かを支えられる子へ。

子どもが一つのコミュニティの中で、少しずつ役割を変えながら成長していく時間なのです。

今回お話を紹介するAMIトレーナー

Sandra Girlato(サンドラ・ジラート)

AMI 3–6 Trainer/Director of Training

カナダ・トロントのFoundation for Montessori Educationで、3〜6歳レベルの教師養成責任者を務めるAMIトレーナー。レニルデ・モンテッソーリのもとでAMI教師養成とトレーナー養成を受け、1995年にAMIトレーナーとなりました。AMI試験官、コンサルタント、講師、保護者教育者としても活動しています。

出典:Foundation for Montessori Education/AMI公式
※人物イラストはAMI公式動画を参考に制作したイメージです。

3年サイクルは、一つの長い発達の時間

一般的な教育では、1年ごとに学年が変わり、教室や先生、学ぶ内容も区切られます。

しかし、子どもの発達は、年度が変わったから突然次の段階へ進むものではありません。

昨日まで難しかったことが、ある日できるようになる。
何度も繰り返していた活動への理解が、少しずつ深まっていく。
自分のことで精いっぱいだった子が、やがて周囲の子どもへ目を向け始める。

こうした変化は、子どもの内側で連続して起きています。

サンドラ先生は、3年サイクルを単なるクラス編成の方法としてではなく、子どもの発達が展開していくための時間として捉えています。

1年目——環境を知り、安心できる場所をつくる

新しい環境へ入った子どもにとって、そこにあるものは、ほとんどすべてが初めてです。

どこに何が置かれているのか。
活動をどのように運ぶのか。
終わったら、どこへ戻すのか。
先生や友達と、どのように関わるのか。

大人には、ただ周りを見ているだけに見える時間にも、子どもは教室の秩序や生活の流れを吸収しています。

そのとき、年上の子どもたちの存在が大きな助けになります。

教具を丁寧に運ぶ姿。
水をこぼしたら、自分で拭く姿。
長い活動に集中する姿。

まだ自分ではできなくても、子どもは少し先を歩く子どもの姿を見ながら、環境の中での過ごし方を学びます。

1年目に大切なのは、目に見える成果を急ぐことではありません。

「ここは安心して活動できる場所だ」と感じ、環境や大人との信頼関係を築くことです。

2年目——繰り返しによって、自分の力を確かにする

2年目になると、教室はもう知らない場所ではありません。

どこに何があるかを知り、一日の流れを理解し、自分で活動を選べるようになっていきます。

そして、以前に経験した活動へ何度も戻ります。

大人は、何かが一度できると、すぐに次の段階へ進ませたくなることがあります。

「それはもうできるでしょう」
「今度はもっと難しいことをしてみたら?」

けれど、一度成功することと、その力が自分のものになることは同じではありません。

繰り返すうちに、手の動きが滑らかになります。
活動の順序が確かになります。
自分の間違いに、自分で気づけるようになります。

そして、誰かに褒められなくても、

「自分はこれができる」

という感覚が、子どもの中に育っていきます。

2年目は、繰り返しを通して、能力と自信を自分の中に定着させていく時間です。

3年目——教えてもらう側から、支える側へ

3年目になると、子どもは、その環境に長い経験を持つ存在になります。

どこに何があるかを知り、教室の流れを理解し、多くの活動を経験しています。

そして、以前は年上の子どもを見ていた自分が、今度は年下の子どもから見られる側になります。

困っている子に、物の場所を教える。
こぼれた水を一緒に拭く。
活動の仕方を、自分の動きで静かに示す。
教室の植物や道具を、自分から気にかける。

こうした姿は、大人から役割を与えられたから現れるのではありません。

自分が助けてもらった経験と、自分でできるようになった経験があるからこそ、今度は周囲の人へ目を向けられるようになります。

「自分でできる」という喜びが、「誰かの役に立てる」という喜びへ変わっていく。

それが、サンドラ先生の語る3年目の大きな成長です。

異年齢の環境だから経験できること

異年齢の環境は、年上の子が年下の子へ一方的に教える場所ではありません。

年下の子は、年上の子の姿から、未来の自分を思い描きます。
年上の子は、年下の子の姿を見ることで、自分が積み重ねてきた経験に気づきます。

また、年下の子を助けることは、年上の子自身の学びにもなります。

相手が何に困っているのかを観察する。
自分が知っていることを整理する。
すぐに代わりにやらず、相手ができる部分を待つ。

こうした関わりには、知識だけでなく、社会性や責任感、相手を尊重する姿勢が必要です。

ある場面では助けてもらい、別の場面では誰かを助ける。

それぞれが異なる力や経験を持ちながら、一緒に生活すること。

それが、異年齢のコミュニティで子どもが経験する社会です。

3年間いること自体が目的ではない

3年サイクルは、「同じ教室に3年間在籍すれば、自動的に子どもが成長する」という意味ではありません。

子どもが自分で活動を選び、繰り返せること。
発達に合った活動が用意されていること。
異年齢の子どもたちが、実際に関わりながら生活していること。
大人が急いで教えすぎず、子どもの変化を観察していること。

こうした環境があって初めて、3年サイクルが生きたものになります。

また、子どもの発達や家庭の事情、園の環境はそれぞれ異なります。「必ず3年間いなければならない」と一律に求めるものでもありません。

大切なのは、在籍した年数だけを見ることではなく、子どもが環境の中でどのような経験を積み、どのように役割を変えているかを見ることです。

そして、モンテッソーリ教育そのものは、子どもの家で終わるものではありません。

6〜12歳、12〜18歳と、それぞれの発達段階に応じた環境へ続いていきます。子どもの家で育った自立や集中、社会との関わりは、その後の環境でさらに発展していきます。

まとめ

1年目には、環境を知り、安心して過ごせるようになる。
2年目には、活動を繰り返し、自分の力を確かなものにする。
3年目には、その力をコミュニティの中で生かし、年下の子どもを支える存在になる。

3年サイクルの中で、子どもは同じ場所に留まっているのではありません。

環境との関係が変わり、活動との関係が変わり、周囲の人との関係が変わっていきます。

かつて助けてもらった子どもが、やがて誰かを助ける人になる。

サンドラ先生が語る「3年サイクルの魔法」とは、子どもがコミュニティの中で役割を変えながら成長していく、その長い過程にあるのではないでしょうか。

参考資料・出典

Association Montessori Internationale(AMI)
Sandra Girlato「The Magic of the Three Year Cycle: A Community that Grows Together」
Voices of AMI Training
AMI公式記事を見る

Foundation for Montessori Education
Sandra Girlato 公式プロフィール
公式プロフィールを見る

Association Montessori Internationale(AMI)
Foundation for Montessori Education/AMI Training Centre Information
AMI公式トレーニングセンター情報を見る

※本記事は、AMI公式「Voices of AMI Training」に掲載されたサンドラ・ジラート先生の記事をもとに、その主旨を日本の保護者や教育関係者にも読みやすい形で紹介したものです。

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