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赤ちゃんにコップはまだ早い?「自分で飲む」を育てる、小さなコップの始め方

赤ちゃんが離乳食を食べ始める頃、
「飲み物はまだ哺乳瓶やストローマグでいいのかな」と思うことがあります。
コップを渡しても、きっとこぼす。服もテーブルもびしょびしょになる。そもそも、まだコップなんて早いのでは?
そう感じるのも自然なことです。

でも、赤ちゃんにとって「自分で飲む」ことは、ある日突然できるようになるものではありません。
小さな手でコップを持つ。口まで運ぶ。傾ける。飲み物が口に入ってくる量を調整する。そして、またコップをテーブルへ戻す。
大人には何気ない動作ですが、赤ちゃんにとっては、いくつもの動きを組み合わせた新しい仕事です。

コップは「上手に飲めるようになってから」使うもの?

AMI(国際モンテッソーリ協会)公式「Aid to Life」の日本語版には、「自分で飲めるようになるための準備」というページがあります。
そこでは、子どもが両手で物を持てるようになってきた頃に、子どもの手に合った小さなグラスを用意することが紹介されています。

ここで面白いのは、「こぼさなくなったらグラスを渡しましょう」ではないことです。
まだ上手に飲めない時期から、本物の「飲む」という動作に参加できる環境を準備する。
モンテッソーリらしい考え方です。

もちろん、最初から一人で上手に飲めるわけではありません。
大人がゆっくり、両手でグラスを持つ。口元まで運ぶ。少し傾けて飲む。
という動きを見せます。
子どもは説明だけではなく、大人の動きを見ながら学んでいきます。

公的な育児情報でも、コップは意外と早くから登場します

これは「モンテッソーリ独自の早期教育」という話ではありません。
米国疾病予防管理センター(CDC)は、離乳食が始まる生後6か月頃から食べたり飲んだりする技能を学び始め、蓋のないコップについては生後9か月頃から使い方を学び始めることができると案内しています。
また、12か月頃には、大人が持った蓋なしのコップから飲めるようになる子もいるとしています。

英国NHSも、離乳食を始める生後6か月頃から、食事の際にオープンカップやバルブのないフリーフローカップで水を少しずつ飲む経験を勧めています。
ここで大切なのは、「○か月になったから、一人でコップ飲みを完成させなければいけない」という意味ではないことです。

発達には個人差があります。
姿勢が安定しているか。両手で物を持てるか。口元へ物を運べるか。
そうした子どもの現在の姿を見ながら、少しずつ経験できるようにします。

大きなコップでは難しいのは当たり前

大人用のコップを赤ちゃんに渡せば、当然扱いにくくなります。
大きい。重い。両手で持っても安定しない。
モンテッソーリ教育で環境を整えるときに大切なのは、「子どもにできる大きさにする」ということです。

Aid to Lifeでも、子どもの手で扱える小さなグラスが紹介されています。
これは、子ども用だからかわいらしい物を選ぶ、という意味ではありません。
自分の手で持てる。自分の口へ運べる。飲み終わったら自分で置ける。
その動作を可能にするための大きさです。

つまり、小さなコップは「子ども向けグッズ」ではなく、子どもの自立を助ける環境のひとつなのです。

「ガラスのコップじゃないとダメ」ではありません

モンテッソーリの乳幼児環境では、小さなガラス製のグラスが使われることがあります。
ただし、「赤ちゃんには必ずガラスのコップを使わなければならない」という医学的な決まりがあるわけではありません。

CDCやNHSが勧めているのは、オープンカップなどから飲む経験であって、素材をガラスに限定しているわけではありません。
家庭では、安全性や床の状況、子どもの発達に合わせて選んでよいでしょう。

大切なのは、子どもの手で持てること。口に対して大きすぎないこと。扱いやすい重さであること。そして、大人がそばで見守れること。
「モンテッソーリだからガラス」と形から入るよりも、「この子が自分で飲むには、どんな器なら扱いやすいだろう?」と考える方が、本来のモンテッソーリの考え方に近いでしょう。

安全のために、大人がそばで見守る

「自分で飲む」ことを大切にするといっても、赤ちゃんにコップを渡して一人にするという意味ではありません。
特に始めたばかりの時期は、安定して座った状態で、大人がすぐそばで見守りながら行います。

最初はコップいっぱいに飲み物を入れず、ほんの少量から始めると、子ども自身も扱いやすくなります。
また、ガラス製のグラスを使う場合は、落として割れる可能性があることも忘れてはいけません。
床の材質や子どもの動き、年齢などを見ながら、必要であれば割れにくい素材のコップを選ぶこともできます。

割れたグラスを子どもが触らないよう、破損した場合はすぐに大人が対応します。
そして、熱い飲み物を子ども自身に持たせないことも大切です。

「自分でやること」と「一人に任せること」は同じではありません。
子どもが自分で取り組める範囲を、大人が安全に守る。
それも、子どもの自立を支える環境の一部です。

こぼすのは「失敗」ではなく、学んでいる途中

コップ飲みを始めると、ほぼ間違いなくこぼします。
口まで届く前に傾けてしまう。勢いよく傾けすぎる。飲み終わったあと、そのまま横へ倒してしまう。
大人から見ると、「ああ、やっぱりまだ早かった」と思いたくなる瞬間です。

でもAid to Lifeでは、あごから水が垂れたり、注ぐときにこぼしたりすることを、新しい技能を学ぶときに起こる自然なこととして扱っています。
ここはとても大切です。
こぼしたということは、自分でやってみたということでもあります。

大人がずっとコップを持ってあげれば、床は濡れません。
でも、子どもは、どのくらい傾けると水が出るのか。どのくらい傾けると出すぎるのか。コップが空になると重さがどう変わるのか。
そうしたことを自分の手で知ることができません。

でも、わざと何度もこぼさせる必要はありません

ここも間違えたくないところです。
「失敗から学ぶのだから、好きなだけこぼさせればいい」ということではありません。

最初はほんの少しだけ飲み物を入れる。両手で持つところをゆっくり見せる。必要なら、大人が少しだけ支える。
子どもが扱いやすい環境にすることで、成功しやすくすることができます。

モンテッソーリ教育でいう「自由」は、何でも好きなようにやらせることではありません。
子どもが自分でできるように、環境と援助を整えたうえで任せることです。

ストローが悪い、という話でもありません

ストローマグは外出時にも便利ですし、家庭によっては必要な場面があります。
ですから、「ストローはダメ。オープンカップだけが正解」という話にする必要はありません。

ただ、便利な道具だけで生活していると、子どもがコップを傾けて飲む経験をする機会が少なくなることはあります。
だから、ストローも使う。でも、食卓では小さなコップも経験する。
そんなふうに考えてもよいのではないでしょうか。

飲めるようになったら、「注ぐ」へ

Aid to Lifeでは、子どもがグラスから飲めるようになってくると、次に小さなピッチャーから自分で飲み物を注ぐことも紹介しています。
これは少し先の段階です。

小さなピッチャーを両手で持つ。コップの中央へ注ぎ口を合わせる。ゆっくり傾ける。必要なところで止める。そしてピッチャーを戻す。
大人にとっては「水を入れるだけ」ですが、子どもにとってはかなり複雑な動きです。

しかも、自分で注いだ水を自分で飲む。
ここには、「自分のことを自分でする」という大きな喜びがあります。

「飲ませてもらう」から「自分で飲む」へ

赤ちゃんのお世話をしていると、大人がしてあげることが圧倒的に多い時期があります。
抱き上げる。着替えさせる。食べさせる。飲ませる。

でも、子どもは少しずつ、自分で持ちたい。自分で口へ運びたい。自分でやってみたい。という姿を見せ始めます。

そのとき大人がすることは、「まだ無理だから」とすべて代わることでも、「もう自分でやって」と突然任せることでもありません。
今の子どもができるところまで、自分でできるように環境を整えることです。

小さなコップひとつでも、「飲ませてもらう人」から、「自分で飲む人」へ。
そんな小さな変化を支えることができます。

最初は、少しこぼしてもいい。
上手にできるようになってから始めるのではなく、やってみるから、少しずつできるようになる。
赤ちゃんの「自分で飲む」は、そこから始まります。

参考資料

Association Montessori Internationale / Aid to Life 日本語版
「自分で飲めるようになるための準備」

Centers for Disease Control and Prevention(CDC)
“Fingers, Spoons, Forks, and Cups”

National Health Service(NHS)
“From around 6 months”

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