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おしゃぶりで言葉が遅れる? – モンテッソーリのAid to Lifeと最新研究を比べてみた

赤ちゃんが泣いているとき、おしゃぶりをくわえると落ち着く。
寝かしつけのときにも助かる。

一方で、「おしゃぶりを使っていると言葉が遅れる」「口に何か入っていると、話す練習ができない」と聞いて、心配になったことがある方もいるのではないでしょうか。

AMI(国際モンテッソーリ協会)の子育て支援サイト「Aid to Life」にも、実はおしゃぶりについてかなりはっきりとした記述があります。

では、本当におしゃぶりは赤ちゃんの言葉の発達を遅らせるのでしょうか。
現在の研究まで調べてみると、答えは、「おしゃぶりを使ったら言葉が遅れる」と単純には言えない。でも、使う時間や時期は考えた方がいい、というものでした。

Aid to Lifeは「喃語の邪魔になる」と説明している

Aid to Life日本語版の「赤ちゃんとコミュニケーションについてよく聞かれる質問」には、「おしゃぶりは子どもの言語発達に良くないのでしょうか?」という質問があります。

そこでAid to Lifeは、英国のRCSLT(Royal College of Speech and Language Therapists/英国王立言語聴覚士協会)の情報をもとに、喃語期におしゃぶりを常用すると、赤ちゃんが唇、舌、口、顎を使って音を出す機会を妨げる可能性があると説明しています。

モンテッソーリ教育では、まだ意味のある言葉を話す前の喃語も大切に考えます。
「あー」「うー」「ばばば」と、赤ちゃんは何度も音を試しながら、自分の口や舌を動かし、周囲から聞こえてきた音を再現しようとしています。

赤ちゃんに話しかけるとき、大切なのは「待つこと」

Aid to Lifeの「赤ちゃんと会話しましょう」では、大人が一方的に話し続けるのではなく、赤ちゃんの声を聞き、その反応を待ち、喃語にも本当の会話のように応えることを勧めています。

赤ちゃんへの話しかけ方というと、「たくさん言葉を聞かせなければ」と考えがちですが、大切なのは大人が話すことと同じくらい、赤ちゃんが返してくる声を待つことです。

赤ちゃんへの話しかけ方を紹介する動画。動画:Michael Olaf Montessori Company/紹介:Aid to Life「赤ちゃんと会話しましょう」

声をかける。
少し待つ。
赤ちゃんが声や表情で返してくる。
それに大人がまた応える。

こうしたやり取りそのものが、赤ちゃんに「会話とはこういうものなんだ」という経験を届けています。
赤ちゃん自身が声を出そうとしている時間を大切にする。
ここには、モンテッソーリらしい一貫した考え方があります。

ところが、現在のRCSLTの説明はもう少し細かい

ここで興味深いことがあります。
Aid to Lifeが根拠として名前を挙げているRCSLTの現在の公式情報を確認すると、おしゃぶりについて、もう少し限定した説明になっています。

現在のRCSLTは、寝かしつけや、子どもを落ち着かせるためにおしゃぶりを使うこと自体は、発話の発達に影響しないとしています。
一方で、子どもが話しているときには口から外すこと、そして話し始める時期に日中長時間使い続けることは避けるよう勧めています。

つまり、単純に「おしゃぶりは言葉に悪い」ということではなく、いつ、どのくらい、どんな場面で使っているのかを見る必要がありそうです。

最新研究でも「使ったら言葉が遅れる」とは言えない

2025年には、18〜36か月の子ども98人を対象に、おしゃぶりの使用と語彙発達との関係を調べた研究が発表されています。

研究者たちは、おしゃぶりを使う子どもでは語彙が少なくなる可能性を予想していました。ところが実際には、おしゃぶりの使用と語彙全体の大きさとの間に有意な関連は見つかりませんでした。
抽象的な言葉の獲得についても明確な差は確認されていません。

少なくともこの研究からは、「おしゃぶりを使っている幼児は言葉が遅れる」とは言えません。

ただし「言葉」と「発音」は分けて考えたい

「言葉が遅れる」という言い方には、いくつかの意味があります。
言葉を理解すること。
知っている単語が増えること。
文章を作ること。
口や舌を使って音を正確に発すること。

これらは同じではありません。

2025年の研究で明確な関連が見つからなかったのは、主に語彙の大きさです。
一方、RCSLTが日中の過度なおしゃぶり使用について注意しているのは、特に発話音の発達です。

ですから、「おしゃぶりを使うと言葉を覚えなくなる」と考えるのは正確ではありません。
むしろ気にしたいのは、赤ちゃんが声を出したり、口や舌を自由に動かしたり、大人とやり取りしたりする時間まで、おしゃぶりで塞いでしまっていないかということです。

歯並びへの影響は、言葉より注意点がはっきりしている

一方、おしゃぶりを長期間使い続けることと、歯並びやかみ合わせとの関係については、より明確な注意があります。

米国小児歯科学会(AAPD)は、18か月を超えておしゃぶりを使い続けることは、発達中の口や顎に影響する可能性があるとしています。
具体的には、前歯がかみ合わない「開咬」、奥歯のかみ合わせが左右にずれる「交叉咬合」、Ⅱ級不正咬合などとの関連が示されています。

またAAPDは、36か月までには、おしゃぶりや指しゃぶりなどの非栄養性吸啜の習慣を終えていくための情報提供を保護者に行うことを勧めています。

つまり現在の情報を整理すると、言語発達については「おしゃぶりを使えば遅れる」と断定できない一方、長期間の使用と歯並び・かみ合わせへの影響には、より注意が必要ということになります。

長時間・長期間使うことは、また別の話

2026年に発表された系統的レビューでは、おしゃぶりなどの非栄養性吸啜には、新生児の処置時の痛みを和らげたり、特に早産児で吸う・飲み込む・呼吸する動きを整え、経口摂取への移行を助けたりする利点が確認されています。

その一方、長期間・無制限に続けることについては、歯列や口腔発達への影響や、発話発達との関連が指摘されています。
ただし研究者自身も、長期的な言語への影響については、大規模で質の高い研究がまだ不足しているとしています。

ここでも重要なのは、「おしゃぶりを使うこと」と「いつも口に入れたままにすること」を分けることです。

寝るときのおしゃぶりまで、急にやめる必要はありません

現在のRCSLTは、寝かしつけや子どもを落ち着かせるためのおしゃぶり使用について、発話発達への影響はないとしています。
AAPDも、乳児期のおしゃぶりには、安心させること、処置時の痛みを和らげること、SIDS(乳幼児突然死症候群)のリスク低減などの利点を挙げています。

ですから、「言葉のために今日から全部やめる」と考える必要はありません。

寝るときには使う。
起きて遊んでいるときは外してみる。
大人と顔を合わせてやり取りするときは外す。
喃語を出しているときは、その声を聞く。

そんなふうに、声や会話が生まれる時間を邪魔しない使い方を考える方が現実的です。

おしゃぶりより大切なのは、赤ちゃんとの「やり取り」

現在の研究を見る限り、「おしゃぶりを使ったから言葉が遅れる」と言い切ることはできません。

一方で、起きている時間まで長時間口に入れたままにすれば、赤ちゃんが声を試し、人とやり取りする機会は少なくなります。長期間使い続けることについては、歯並びやかみ合わせへの影響にも注意が必要です。

Aid to Lifeの考えと現在の研究を合わせて読むと、大切なのは「おしゃぶりは禁止」ということではありません。
赤ちゃんが自分で声を出し、人の声を聞き、それに応える時間を邪魔しないこと。

おしゃぶりを使うかどうかだけではなく、その子の一日の中に、そんなコミュニケーションの時間がどれくらいあるかを見ていきたいと思います。

参考資料

Aid to Life「赤ちゃんとコミュニケーションについてよく聞かれる質問」
Aid to Life「赤ちゃんと会話しましょう」
Royal College of Speech and Language Therapists「Speech sound disorders」
Barca, Mazzuca & Borghi (2025)「Impact of pacifier use and parenting characteristics on toddlers’ vocabulary development」
Popowicz et al. (2026)「Non-Nutritive Sucking (NNS)–Multifaceted Benefits and Limitations: Systematic Review」
American Academy of Pediatric Dentistry「Policy on Pacifiers」

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