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愛情だけでも、知識だけでも足りない – モンタナーロが伝えた「Love and Knowledge」

子どものことが大切だから、つい手を出してしまう。

転びそうなら支えてあげたい。
うまくできなければ、代わりにやってあげたい。
泣いていたら、すぐに困っていることを取り除いてあげたい。

どれも、子どもを大切に思う気持ちから生まれる行動です。

では、子どもへの愛情が十分にあれば、それだけで子どもにとってよい援助ができるのでしょうか。

反対に、発達についてたくさん勉強し、モンテッソーリ教育について詳しく知っていれば、それだけでよい教師や親になれるのでしょうか。

AMI 0–3トレーナーのAlejandra Rosas(アレハンドラ・ロサス)は、2026年9月15日に公開されたAMI公式「Voices of AMI Training」の「Montessori: An Aid to Life」で、この問いにつながる大切な考えを紹介しています。

それが、0〜3歳のモンテッソーリ教育に大きな足跡を残したSilvana Quattrocchi Montanaro(シルヴァーナ・Q・モンタナーロ)が大切にしていた、

「Love and Knowledge」

という考え方です。

愛情と知識。

子どもの成長を援助するには、そのどちらも必要で、どちらか一方だけでは十分ではない、とロサスは述べています。

今回お話を紹介するAMIトレーナー

Alejandra Rosas(アレハンドラ・ロサス)

AMI 0–3 Trainer

AMI 0–3トレーナー。Montessori Stoppani InstituteのTraining Directorを務めています。イタリアでAMI 3–6ディプロマを取得し、その後サンディエゴでシルヴァーナ・Q・モンタナーロの指導のもとAMI 0–3ディプロマを取得。乳幼児期の発達とモンテッソーリ教育に長年携わり、教師養成や保護者・教育者向けの研修にも携わっています。

出典:Association Montessori Internationale(AMI)/Montessori Stoppani Institute
※人物イラストはAMI公式および公開されている本人写真を参考に制作したイメージです。

「愛しているからやってあげる」は、いつも子どものため?

たとえば、1歳半くらいの子どもが自分で靴を履こうとしているとします。

なかなか足が入りません。
向きも反対です。

大人から見れば、手伝えば10秒で終わります。

「時間がないから、今日はやってあげよう」

そう思うのは自然なことです。

しかも、それは愛情がないからではありません。
むしろ、困っている子どもを助けたいという愛情から手を出していることも多いでしょう。

でも、もしその子が今、

「自分でやりたい」

という発達の時期にいることを大人が知っていたら、見え方が少し変わります。

すぐに靴を履かせてあげることが、本当にその子への一番よい援助なのか。

少し待つことの方が、今のその子には必要なのではないか。

愛情だけでは、この判断は難しいことがあります。

そこで必要になるのが、子どもの発達についての「知識」です。

では、知識があれば大丈夫?

反対のこともあります。

モンテッソーリ教育について学ぶと、

「手を出しすぎてはいけない」
「子どもが自分ですることが大切」
「大人は待つ」

といった考え方を知ります。

すると今度は、

「自分でやらせなければ」

という気持ちが強くなることがあります。

でも、まだその動きをできるだけの力が育っていない子どもに、

「自分でやって」

と任せ続けたらどうでしょう。

疲れているとき。
初めてのことに不安になっているとき。
少しだけ大人の助けがあれば次へ進めるとき。

そんなときにも、

「モンテッソーリでは自分でやらせるから」

と見守るだけなら、それもまた子どもを見ているとは言えません。

知識だけを基準にすると、目の前の子どもではなく、頭の中にある「モンテッソーリの子ども像」を見てしまうことがあります。

だから、知識だけでも足りないのです。

モンタナーロが伝えた「Love and Knowledge」

シルヴァーナ・Q・モンタナーロは、医師であり、AMIの0〜3歳教育の発展に大きく貢献した人物です。

AMIは彼女について、マリア・モンテッソーリと、その協力者であるジャンナ・ゴッビの考えを世界へ広めるとともに、妊娠期から生後3年間についての心理学的理解を加え、AMI 0–3コースの発展にも重要な役割を果たした人物と紹介しています。

バンビーノの「モンテッソーリの人々」でも、シルヴァーナ・Q・モンタナーロについて詳しく紹介しています。

ロサスは今回の記事の中で、モンタナーロの考えとして、教育には「Love」と「Knowledge」のバランスが必要だと紹介しています。

子どもを深く愛すること。

そして、子どもが今どのような発達の過程にいるのかを知ること。

その両方があって、初めて大人は、

「今、この子に何が必要なのか」

を考えることができます。

同じ「泣く」でも、援助は同じではない

これは赤ちゃんの時期にもよく分かります。

赤ちゃんが泣いています。

お腹が空いているのかもしれません。
眠いのかもしれません。
暑いのかもしれません。
抱っこしてほしいのかもしれません。

少し大きくなった子なら、自分で水を注ごうとしてこぼし、悔しくて泣くこともあります。

そこで大人が、

「かわいそう、もうやってあげるね」

とすべて代わってしまえば、その瞬間の不快感はなくなるかもしれません。

でも、こぼした水をどうするのか。
次はどう持てばいいのか。
失敗しても、もう一度試せること。

を経験する機会は失われます。

だからといって、

「泣いていても自分でやらせる」

と決めてしまうのも違います。

今日は疲れているのかもしれない。
一度だけ持ち方を示せば、また自分でできるのかもしれない。

必要なのは、「泣いたらこうする」というマニュアルではありません。

目の前の子どもを見ることです。

モンテッソーリは「こうすればいい」のマニュアルではない

ロサスは今回の記事で、モンテッソーリ教育とは、

「こういうときには、こうする」

という手順を並べた方法ではない、と述べています。

同じ年齢でも、子どもは一人ひとり違います。

同じ子でも、昨日と今日では違います。

だから、

「2歳だからこうする」
「モンテッソーリだからこうする」

とは決められません。

発達について知る。
環境を準備する。
その中で子どもを見る。
必要なら環境や大人の関わり方を変える。

つまり、大切なのは「正しいやり方を覚えること」ではなく、

知識を持ったうえで、目の前の子どもを観察すること

なのです。

「しつけ」でも、結果だけを見ない

ロサスの記事では、自己規律についても触れられています。

子どもが約束や制限を守れないとき、大人はつい、

「何度言ったら分かるの?」

と思います。

でも、子どもが境界を守れないからといって、それを単純に「わざとやっている」とは考えません。

まだ衝動を抑える力が育っている途中なのかもしれない。

何をしてよくて、何をしてはいけないのかが、環境の中で分かりにくいのかもしれない。

「言ったのに守らない」という結果だけを見るのではなく、

「この子には今、何がまだ育っている途中なのだろう」

と考える。

これがKnowledgeです。

そして、すぐにできることを求めず、その子ができるようになるまで援助し続ける。

そこにはLoveがあります。

「この子にとって、今必要なことは何だろう」

今はSNSを開けば、

「こんなときの正しい声かけ」
「自立する子を育てる方法」
「自己肯定感を高める言葉」

といった情報がたくさん流れてきます。

もちろん、参考になるものもあります。

でも、モンテッソーリ教育は、すべての場面に使える「正解の言葉」を集める教育ではありません。

愛情だけなら、

「してあげたい」

になりやすい。

知識だけなら、

「こうするべき」

になりやすい。

その間にあるのが、

「この子にとって、今必要なことは何だろう」

という問いです。

今日は待つ。
別の日には少し手伝う。
ある子には言葉をかける。
別の子には、何も言わずに見守る。

その判断を支えるのがKnowledge。

そして、その子のために観察し続けようとする力がLoveです。

「愛情か、知識か」ではありません。

Love and Knowledge。

モンタナーロが伝えたこの言葉は、親にも教師にも、子どもを見るときの大切な軸になるのではないでしょうか。

参考資料

Association Montessori Internationale
Alejandra Rosas, AMI 0–3 Trainer
「Montessori: An Aid to Life」
Voices of AMI Training, 2026年9月15日

Montessori Stoppani Institute
Alejandra Rosas – Training Director

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