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「人間の傾向性」って何? なぜモンテッソーリ教師はこれほど大切に学ぶのか

上野毛モンテッソーリこどものいえ「バンビーノ」での活動写真

「人間の傾向性」って何?

モンテッソーリ教育を学んでいると、何度も出会う言葉があります。
「傾向性」です。

一般の方には、少し聞き慣れない言葉かもしれません。
しかし、モンテッソーリ教師にとって「人間の傾向性(Human Tendencies)」は、とても重要な学びの一つです。

では、「傾向性」とはいったい何なのでしょうか。

傾向性とは、人間が環境に適応し発達していくために持つ力

簡単に言えば、傾向性とは、人間が環境と関わりながら、自分自身を発達させていくために持っている普遍的な性向のことです。

人間は、生まれた瞬間から周囲の環境と関わり、その環境を理解しながら成長していきます。

そのために、人間には自然とある方向へ向かおうとする力があります。

例えば、初めて訪れた場所に行ったとき、私たちは自然と周囲を見渡します。

「ここはどんな場所だろう」
「入口はどこだろう」
「自分はいまどこにいるのだろう」

環境を理解し、自分の位置を確かめようとします。

知らないものがあれば近づいて確かめる。
新しい道具があれば触ってみる。
うまくできなければ、もう一度試してみる。
慣れてくれば、もっと上手に、もっと正確にできないか工夫する。

誰かに命令されたからではありません。
人間には、環境に適応しながら成長していこうとする自然な傾向があるのです。

モンテッソーリ教育では、このような人間に普遍的に備わった性向を「人間の傾向性」と呼んでいます。

「できる力」ではなく「向かおうとする力」

傾向性を理解するときに大切なのは、「能力」とは少し違うということです。

探索できる能力ではなく、探索しようとする。

繰り返せる能力ではなく、繰り返そうとする。

正確にできる能力ではなく、より正確にしようとする。

人と関わる能力ではなく、人とつながろうとする。

人間の中には、環境を理解し、学び、発達していく方向へ向かおうとする力があります。

だから「能力」ではなく、「傾向性」と表現されるのです。

子どもの姿を見ると、傾向性がよく分かる

小さな子どもを見ていると、人間の傾向性がとてもよく表れています。

歩き始めた子どもは、家の中を何度も探索します。

引き出しを開ける。
物を取り出す。
気になるものに触ってみる。

同じことを何度も繰り返す。

大人から見ると、
「またやっている」
「もう分かったでしょう」
「やってあげた方が早い」

と思うこともあるかもしれません。

しかし、その行動の奥には、
「知りたい」
「確かめたい」
「やってみたい」
「できるようになりたい」

という人間の力があります。

少し大きくなると、「自分で!」という姿が見られるようになります。

自分で靴を履きたい。
自分で水を注ぎたい。
自分でボタンを留めたい。

大人がやればすぐ終わることでも、子どもは自分の力で取り組もうとします。

それは単なる「こだわり」ではありません。
環境と関わりながら、自分自身を発達させようとする力が表れているのです。

だからモンテッソーリ教師は「傾向性」を学ぶ

モンテッソーリ教師が傾向性を学ぶ理由は、子どもの行動の奥を見るためです。

例えば、部屋の中を歩き回っている子どもを見たとき。

「落ち着きがない」と見ることもできます。

しかし、「この子はいま環境を探索し、理解しようとしているのかもしれない」と見ることもできます。

同じ活動を何度も繰り返している子どもを見たとき。

「もうできたから次に行こう」と考えることもできます。

しかし、「この子には、いま繰り返すことが必要なのかもしれない」と考えることもできます。

傾向性を理解すると、同じ子どもの姿でも見える意味が変わります。

モンテッソーリ教師は、表面に見える行動だけで子どもを判断するのではなく、

「この子はいま、何をしようとしているのだろう?」

と、その奥にある人間の力を見るのです。

教具を学ぶ前に、人間を理解する

モンテッソーリ教育では、教具や活動が注目されることが多くあります。

もちろん、教具の使い方や提示方法を学ぶことは大切です。
しかし、モンテッソーリ教育の本質は、教具そのものだけにあるわけではありません。

なぜ子ども自身に選ばせるのか。
なぜ教師はすぐに手を出さないのか。
なぜ繰り返すことを大切にするのか。

その根底には、「人間には、自ら環境と関わりながら成長していく力がある」という人間への理解があります。

だからモンテッソーリ教師は、教具だけではなく、その土台となる「人間」について学びます。

そして、その人間理解に欠かせないものの一つが「人間の傾向性」なのです。

参考資料

・Association Montessori Internationale(AMI)
Glossary of Montessori Terms「Human Tendencies」

・Association Montessori Internationale(AMI)
Human Tendencies in the Second Stage of Development

・Mario M. Montessori
The Human Tendencies and Montessori Education


人間の傾向性とモンテッソーリ教育[新版]
(国際モンテッソーリ協会(AMI)公認シリーズ)

マリオ・M. モンテッソーリ (著), AMI友の会NIPPON (翻訳)

普遍的な人間の特質とは何か? 本邦初。誰も訳していなかったモンテッソーリ理論の原典、待望の翻訳化。 イタリアが生んだ偉大な医師であり教育者、そして平和活動家でもあったマリア・モンテッソーリの子息、マリオ・M.モンテッソーリが“人間の傾向性”について語った講演記録。
出版社 ‏ : ‎ 風鳴舎
発売日 ‏ : ‎ 2018/10/1
言語 ‏ : ‎ 日本語
本の長さ ‏ : ‎ 133ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4907537018 ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4907537012 商品の重量 ‏ : ‎ 220 g

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