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遊びに夢中でトイレに行かない -「声かけを増やす」より先に知っておきたいこと

「トイレに行く?」
「行かない!」

そう答えて遊び続けていたのに、しばらくするとパンツが濡れている。
「さっき聞いたのに」「もう少し早く連れていけばよかった」。着替えを用意しながら、そんな気持ちになることはありませんか。

思い出したときには行けるのに、遊び始めると間に合わない。すると大人は、もっとこまめに声をかけたほうがよいのだろうか、と考えます。

けれども、声かけの回数を増やす前に、一度立ち止まって考えたいことがあります。
子どもにとって「遊びを止めてトイレへ行く」とは、どれくらい複雑なことなのでしょうか。

今回は、主に1歳半〜3歳頃の日中の排泄の自立について、AMI(国際モンテッソーリ協会)の「Aid to Life」と、AAP(米国小児科学会)の保護者向け情報を手がかりに考えます。

「トイレを知っている」と「遊びを止めて行ける」は違う

Aid to Lifeの排泄FAQには、何かに夢中になると活動を止められず、おもらしをしてしまう子どもについての相談が載っています。

その回答は、まず、排泄にはいくつもの力が必要であることに目を向けています。体の内側から届く感覚に気づき、それに応じて行動する。しかも、別のことに夢中になっているときには、続けたい気持ちをいったん抑えなければなりません。

AAPの解説も、トイレを自分で使うには、体の感覚だけでなく、記憶や注意、行動を組み立てる力、必要な助けを伝える力などが関わると説明しています。

「おしっこが出そう」と感じる。
トイレに行こうと思う。
遊びを中断し、途中で別のものに気を取られずに移動する。

大人にはひと続きに見える行動も、子どもはその一つひとつを結びつけている途中です。
トイレの場所や使い方を知っていても、必要なときに自分から向かえるとは限りません。

「できるのに、やらない」と考える前に、「どの部分には、まだ助けが必要なのだろう」と見直してみたいところです。

声かけの回数より、生活の流れを見直す

Aid to Lifeがこの相談に対して提案しているのは、トイレを使いやすく整えることと、生活の中に排泄の習慣をつくることです。起床後、食後、おやつの後などを例に、毎日の流れにトイレへ行く機会を組み込むよう勧めています。

家庭で取り入れるなら、まずは無理なく続けられそうな節目を一つ見つけてみましょう。

たとえば、朝起きて着替えるときにトイレへ誘う。お昼寝から起きたら、次の遊びを始める前に誘う。毎回その場で「そろそろかな」と考えるだけでなく、いつもの生活の流れの中に置いてみるのです。

AAPも、トイレの場所や手順をできるだけ一定にし、関わる大人同士で対応をそろえることを勧めています。ただし、子どもの様子は変化するため、一度決めた方法を続けるだけでなく、観察しながら調整することも大切にしています。

「今日は何回誘ったか」だけでなく、「どんな場面なら、無理なくトイレへ向かえていたか」。そんな見方も加えてみてください。

「トイレに行く?」ではなく、「さあ、トイレに行こう」

生活の中にトイレへ行くタイミングをつくったら、もう一つ見直したいのが、そのときの言葉です。

「トイレに行く?」
「行かない!」
「でも、行っておこうよ」

こんなやり取りになっていないでしょうか。

「行く?」と尋ねることは、言葉の上では「行くか、行かないか」を子どもに選んでもらうことです。それなのに、「行かない」と答えた後で「行きなさい」と言われると、選んでよいのか、よくないのかが曖昧になってしまいます。

Aid to Lifeの「選ぶこと」に関する助言では、子どもに選択肢を示すときには、どちらを選んでも大人が受け入れられるものを用意し、子どもの決定を尊重することを勧めています。選ばせる形にして、大人の望む答えへ誘導するのではない、という考え方です。

この考え方と、トイレへ行く機会を日課にするという助言を、毎日の声かけに生かしてみましょう。
いつもの節目では「行く?」と毎回判断を求めるより、「さあ、トイレに行こう」と、次にすることを穏やかに伝えます。

朝起きたときには、
「おはよう。さあ、トイレに行こう」

おやつを食べ終えたときには、
「おやつが終わったね。トイレに行こう」

「トイレに行きたいか」を何度も確認するのではなく、いつもの流れを短い言葉で知らせる、ということです。

ここでいう「決まったタイミング」は、時計を見て一律に何分おきにも連れていく、という意味ではありません。起床後や食後などを手がかりに、その子の排泄の様子や生活の流れに合わせて、無理のない機会を見つけていきます。

ただし、「行こう」と誘うことと、嫌がる子どもを無理に座らせたり、出るまで座らせ続けたりすることは別です。言い方を変えれば、必ず応じるというわけでもありません。強く嫌がるときには、怖さや不快さにも目を向け、押し問答にしないようにします。AAPも、排泄を大人と子どもの力比べにしないことを大切にしています。

目指すのは、子どもから「行かない」と言わせないことではありません。
まだ自分だけでは難しい生活の切り替えを、分かりやすい流れと言葉で手伝うことです。

「行こう」と思った後に、難しいところはない?

子どもがトイレへ向かう気持ちになったとして、その先はどうでしょうか。

ズボンがぴったりしていて下ろしにくい。
留め具を外すには大人の助けがいる。
便座に座ると足が浮いてしまう。

「トイレへ行く」という一言の中には、こうした動作や環境も含まれています。AAPは、衣服を上げ下げできることや、無理なく座れることも排泄の自立に関わる要素として挙げ、足を支えられる環境を勧めています。

Aid to Lifeも、着替えを始めたばかりの子どもには、自分で扱いやすい衣服を提案しています。ウエストがゴムでゆったりしたズボンなどを用意し、難しい部分があれば、すべてを代わりにするのではなく、そこだけを手伝うという考え方です。

着替えの自立については、こちらの動画も参考にしてみてください。

着替えの自立についての参考動画。動画:Aid to Life(YouTube)。関連資料:Aid to Life「ひとりで着替えられる衣服」。

たとえば、トイレまでは自分で行けるけれど、ズボンを下ろすところで止まっているなら、必要なのは「早く!」という声ではなく、衣服の見直しや、その動作への手助けかもしれません。

「行かない」とまとめてしまわずに、どこまではできて、どこで難しくなっているのかを見てみましょう。

必要なのは、声かけをなくすことではない

ここで考えたいのは、「声をかけずに、本人が行くまで待ちましょう」ということではありません。

AAPは、遊びなどに夢中になって尿意を後回しにする子どもがいることを説明し、尿意を感じたらトイレを使うこと、ぎりぎりまで我慢しないことを勧めています。生活の中に決まった機会をつくっても、それ以外の時間に必要になれば、トイレへ行けるようにします。

大切なのは、回数を増やすことだけを対策にせず、そのとき必要な援助を考えることです。

たとえば、いつもの排泄前の様子が見られたら、近くで短く伝えてみます。

「さあ、一緒にトイレに行こう」

遊びを離れたくなさそうなら、こんな言葉を添えることも考えられます。

「このブロックは、ここに置いておこう。戻ってきたら続きをしようね」

これは、遊びが終わるまで我慢させるためではなく、遊びをいったん中断できるようにするための声かけの例です。

集中を大切にすることと、体からのサインを後回しにすることは別です。遊びを守りながら、必要なときには中断できるように手伝う。その両方を考えてみましょう。

間に合わなかったときも、できることはある

パンツが濡れると、つい「だから、さっき行こうと言ったでしょう」と言いたくなることがあります。

そんなときは、理由を問い詰めるより、次に必要なことを一緒に進めてみましょう。

「濡れたね。着替えよう」
「新しいパンツは、ここにあるよ」

Aid to Lifeは、着替えを子どもが取り出せる場所に用意し、衣服の着脱や濡れたものの始末に参加できるようにすることを提案しています。排泄を、便器の中で出せたかどうかだけでなく、身の回りを整える一連の活動として捉えているのです。

もちろん、片付けへの参加は罰ではありません。「自分で濡らしたのだから、全部やりなさい」ではなく、その子にできる部分を一緒に行うということです。AAPも、失敗を罰するのではなく、前向きに関わるように勧めています。

着替えを持ってこられた。ズボンに足を通そうとした。
間に合わなかった場面でも、そうした姿に目を向けてみたいですね。

「遊びに夢中だから」だけでは説明できないことも

一方で、トイレに行きたがらない理由を、すべて遊びへの集中や発達の途中として片付けないことも大切です。

便が硬く、排便すると痛いために我慢している場合があります。我慢が続くことで、さらに便秘が悪化することもあります。AAPの便秘の解説では、便秘によって少量の便が下着につくことも紹介されています。「また失敗した」と見えているものの背景に、体の問題が隠れている可能性もあるのです。

便が硬い、排便を痛がる、便秘を繰り返す場合には、小児科で相談しましょう。

また、おしっこのときに痛がる、急に回数が増える、いったん落ち着いていたおもらしが再び始まる場合も、相談の目安です。血尿や、排尿の症状を伴う発熱があるときは、早めに医療機関へ連絡してください。これらはAAPが小児科への相談を勧めている症状です。

こうした場合に必要なのは、声かけをもっと頑張ることではなく、まず体の状態を確認することです。

「何度言えば分かるの?」から、「どこを手伝おうか」へ

遊びに夢中でトイレに行かない姿を見ると、大人はどうしても「行くか、行かないか」に注目しがちです。

けれども、その間には、体の感覚に気づくこと、遊びを中断すること、移動すること、衣服を扱うことなど、いくつもの過程があります。排泄の自立は、それらを少しずつ結びつけていく学びです。

声かけを増やす前に、生活の流れを一つ見直す。
いつもの節目では、「行く?」ではなく「さあ、トイレに行こう」と伝える。
衣服を一つ変えてみる。
どこで助けを必要としているのか、少し丁寧に見てみる。

目指したいのは、大人が何度も確認し続けることでも、子どもにすべてを任せきることでもありません。

自分の体の感覚に気づき、それに応じて動けるようになること。そのために今、どこを手伝えるだろうか。

そんな問いから、毎日のトイレへの関わりを考えてみませんか。

参考資料


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