何かを禁止・制限するなら、その代わりの案を ~モンテッソーリの現場で見られる、パワーの変換という発想~

人をたたく代わりに…?
前々回のAちゃん、年中さんに上がる頃に再び保護者の方から
「子どもたちに何度も『たたいてはいけないよ』とよく話して、そのたびにAも兄も力強くうんうんとうなずくのですが…どうしてもカッとなるとたたいてしまって、それで親の方も、ダメと分かっていながらAのことをゴツンってしてしまうんです…」
と涙ながらに相談がありました。
そのときに、以前モンテッソーリの講演会で聞いたことを思い出し、それをそのまま提案してみました。
「Aちゃんがどうしてもたたきたくなってしまった時のために、『たたいてもいいもの』を用意しておくのはどうでしょうか。例えばお布団とか、太鼓とか。」
「カッとなってしまって挙げた手を止めるのは、大人でも、頭でわかっていてもむずかしいですよね。その挙げた手のパワーをそのまま人にぶつけるんじゃなくて、たたいてもいいものにぶつけて消化するというやり方を教わりました。
それが例えば太鼓なら、もともとたたく楽器なのでOKですし、干してあるお布団をたたいたら結果的にはお手伝いにもなりますよね、ちょっと強引ですけど、笑」
「イメージとしては、某アニメで友達のお母さんがブチ切れたときに、ウサギのぬいぐるみをボスボスやってる、あれです。でもぬいぐるみだとかわいそうな感じがするので、できれば『もともとたたいていいもの』を用意するのがベターです。」
「人をたたいてはいけないよ、でもこれならたたいていいよ、というお話をしてみて下さい」
とお話しすると、「なるほど!」とご理解下さり、実践して下さいました。
年長さんになる頃にAちゃんの暴力行為が激減したのは、この「禁止の代わりの案を提案して、たたくパワーを別の形に変換した」効果も侮れません。
モンテッソーリの現場で見られるパワーの変換例
雨が続いて外に出られないとき、
運動の敏感期にある子どものパワーが爆発して部屋を走り回ることはよくあります。
危ないな…と思って何度止めても、子どものパワーは抑えられない。
そんなときに「じゃあ、よつんばいになって、雑巾がけしよう!」と誘うことがよくありました。
走り回る勢いで雑巾がけをして「疲れた~。もうおしまいにする」と言ったあとは、みんな何事もなかったかのように(笑)室内遊びに戻る姿が印象的でした。
また、手に持ったものを手あたり次第投げてしまう子どもには「これは投げるものではないよ、でもボールならいいよ」とそのつど「投げてはいけないもの」「投げていいもの」を伝え、外に誘い出してボール遊びで発散させていました。
ハサミを使いだしたばかりの時期は、コードでも自分の髪でも洋服でも、周りにあるものを何でも切ってみようとすることがありますが、
「これなら切っていいよ、でも他のものは切らないでね」と紙の端きれをトレーに山ほど置いておいて、「切りたい!」欲求を満たせる環境を整えました。
子どもがやりたがる、もしくは止められない動きを別の形でできるような提案をするのが共通ポイントです。
子どもも大人もハッピーな結果に
子どもの問題行動は、止めること、してはいけない理由も話すことはもちろん大切ですが、それだけではどうしてもおさまらない場合に、代わりの案を出してパワーを発散させるという発想の転換があると子どもの欲求が邪魔されず消化できます。
結果、大人との争いも最小限に抑えられて、大人の方も気持ちがグッと楽になります。
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| ライター/コマツヒロコ AMI公認国際モンテッソーリ教師(2歳半~6歳+)、保育士。 東京国際モンテッソーリ教師養成センター卒業後、さいたま市にあるモンテッソーリあかねこどものいえに4年勤務。現在は横浜市の保育園に勤務中。 |
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