「抱っこしすぎると自立できない?」赤ちゃんの愛着と自立をモンテッソーリの子育てから考える

「抱っこしすぎると、甘えん坊になるのでは?」
「赤ちゃんのうちから、少しずつ一人でできるようにした方がいい?」
赤ちゃんを育てていると、「たくさん応えてあげること」と「自立を育てること」の間で迷うことがあります。
でも、この二つは本当に反対なのでしょうか。
AMI(国際モンテッソーリ協会)の0〜3歳トレーナー Ma Yu-Hung(Nicky Ma)氏は、2026年に公開された「From Attachment to Independence: The Invisible Journey of Personality Construction from Birth to Three」の中で、安定した自立は、関係を断つことによってつくられるのではなく、十分に安心できる関係の中で育っていくという考えを示しています。
これは、赤ちゃんの子育てを考えるうえで、とても大切な視点です。
赤ちゃんの「愛着」と「自立」は反対ではありません
生まれたばかりの赤ちゃんは、大人に抱かれ、授乳され、泣けばあやしてもらいながら生活しています。
そこから寝返りをし、はいはいをし、つかまり立ちをし、やがて歩き始めます。
少しずつ自分で物に手を伸ばし、自分の意思で行きたいところへ移動できるようになります。
こうした目に見える運動発達の裏側で、赤ちゃんの内面にも大きな変化が起こっています。
Nicky Ma氏は、赤ちゃんが繰り返し「理解してもらえた」「応えてもらえた」「受け入れてもらえた」という経験をすることで、世界への基本的な信頼が形成され、それが外の世界へ向かう力につながっていくと説明しています。
安心して戻れる大人がいるからこそ、赤ちゃんはそこから離れて探索することができる。
愛着は、自立を邪魔するものではありません。
むしろ、自分から世界へ踏み出していくための土台の一つとして考えることができます。
赤ちゃんの子育てでは、毎日のケアそのものが大切な関わりです
では、「安心できる関係」はどうやってつくられていくのでしょうか。
特別な知育活動をする必要があるわけではありません。
泣いている赤ちゃんを抱く。
お腹が空いたサインに応える。
おむつを替える。
お風呂に入れる。
授乳する。
着替える。
Nicky Ma氏が取り上げているのは、こうした毎日の何気ないケアです。
そしてモンテッソーリの0〜3歳では、大人が一方的に赤ちゃんの身体を扱うのではなく、これから何をするのかを言葉で伝えながら、ひとりの人として尊重して関わることを大切にします。
「おむつを替えようね」
「今からお洋服を脱ぐよ」
「きれいになったね」
まだ言葉を話せない乳児にも、穏やかに伝えながら関わっていきます。
WHO(世界保健機関)も、乳幼児の動き、声、表情、身振りなどのサインを養育者が観察し、それに一貫して適切に応える「responsive caregiving(応答的な養育)」を、乳幼児期の発達を支える重要な要素として位置づけています。
寝返り・はいはい・歩行――赤ちゃんの「自分でやってみる」が始まります
赤ちゃんの成長とともに、大人との関係だけでなく、周囲の環境との関係も変わっていきます。
寝返りができるようになる。
手を伸ばして物をつかむ。
ずりばいやはいはいで自分から移動する。
つかまり立ちをする。
やがて自分の足で歩く。
発達の時期や順序には個人差がありますが、身体を自分で動かせるようになるにつれて、子どもが自分から環境に関わる機会は広がっていきます。
ここでモンテッソーリ教育が大切にするのが、「自分でやってみることができる環境」です。
何でも大人がしてあげるのでもなく、まだできないことを無理に一人でさせるのでもありません。
その子が今できることをよく観察し、少し手を伸ばせば挑戦できる環境を用意します。
赤ちゃんの自立を育てるために、急いで手を離す必要はありません
ここは、とても誤解されやすいところです。
モンテッソーリ教育で「自立」を大切にしているからといって、赤ちゃんを早く一人でできるように訓練するわけではありません。
Nicky Ma氏も、子どもの自立を支えることは、子どもを早く成長させようと要求したり、大人から遠ざけたりすることではないと説明しています。
大切なのは、
安心できる関係の中で挑戦できること。
発達に合った環境の中で自分から動けること。
実際の生活に少しずつ参加できること。
です。
「もう赤ちゃんじゃないんだから、自分でやりなさい」と突き放すことと、自立を支えることは違います。
必要なときには助けてもらえる。
でも、自分でやってみたいときには、その機会がある。
この両方があることが大切なのです。
乳児期の子育てで「先回りしすぎていないかな?」と考えてみる
赤ちゃんが成長してくると、大人は良かれと思って先回りしてしまうことがあります。
手を伸ばしている物をすぐ取って渡す。
自分で食べようとしているのに全部食べさせる。
自分で移動しようとしているのに、すぐ抱き上げて目的地まで連れていく。
もちろん、安全のために大人の援助が必要な場面はたくさんあります。
けれど、ときにはほんの少し待ってみると、赤ちゃんが自分で手を伸ばしたり、身体を動かしたり、方法を考えたりする姿が見えてくることがあります。
モンテッソーリ教育では、まず子どもをよく観察します。
「できる・できない」を大人が先に決めるのではなく、今、この子は何をしようとしているのだろう?と見てみる。
赤ちゃんの自立を支える第一歩は、案外そんなところにあるのかもしれません。
赤ちゃんの「イヤ」「自分で」も成長の途中にあります
乳児期から幼児期へ向かうにつれて、子どもの意思はさらに明確になっていきます。
1歳半を過ぎるころから、「イヤ」という態度が増えたり、大人が手伝おうとすると嫌がったりする子もいます。もちろん、その現れ方や時期には大きな個人差があります。
Nicky Ma氏は、18か月から3歳ごろに見られる「No」「I do it myself」という表現を、単なる反抗ではなく、意志や自己が形成されていく過程として捉えています。
だからといって、何でも子どもの好きなようにさせるわけではありません。
自分で靴を履きたいなら待つ。
でも、人に靴を投げることは止める。
子どもの意思を尊重することと、必要な限界を示すことは両立します。
これは赤ちゃんから幼児へと成長していく時期の子育てで、とても大切な考え方です。
赤ちゃんの子育てで大切なのは「離すこと」より「安心して離れられること」
赤ちゃんの自立を育てようと思うと、つい「どこまで一人でできるか」に目が向きます。
でも、その前に大切なのは、安心して戻れる関係があることなのかもしれません。
泣いたときに応えてもらった。
困ったときに助けてもらった。
自分の気持ちを受け止めてもらった。
その安心の中で、赤ちゃんは少しずつ外の世界へ手を伸ばしていきます。
そして大人は、その手が伸びたときに全部代わってしまうのではなく、子ども自身が試せる余白を残しておく。
愛着か、自立か。
どちらかを選ぶ必要はありません。
安心できる人との関係を土台にしながら、「自分でやってみたい」という力が少しずつ育っていく。
モンテッソーリの0〜3歳教育から見えてくるのは、そんな赤ちゃんの成長の姿です。
参考資料・出典
Association Montessori Internationale(AMI)
Ma Yu-Hung(Nicky Ma), AMI 0–3 Trainer
「From Attachment to Independence: The Invisible Journey of Personality Construction from Birth to Three」
AMI公式資料を見る
World Health Organization(WHO)ほか
「Nurturing Care for Early Childhood Development」
乳幼児のresponsive caregiving(応答的な養育)、早期学習、健康、安全などを包括的に扱う国際的な枠組みです。
WHO Nurturing Care関連情報を見る
※赤ちゃんの運動・言語・情緒などの発達時期や現れ方には個人差があります。本記事に記載した月齢・年齢は、一人ひとりの発達を判断する基準として示すものではありません。
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