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モンテッソーリ建築が世界的建築賞を受賞 – タンザニアの学校に生かされた28のデザイン原則

※モンテッソーリ建築をイメージした画像です。

モンテッソーリ教育にとって、「環境」は単なる学びの背景ではありません。

子どもが自分で活動を選び、身体を動かし、人と関わりながら成長していくための、教育そのものの一部です。では、その考え方を家具や教具の配置だけでなく、建物全体へ広げたら、どのような学校が生まれるのでしょうか。

国際モンテッソーリ協会(AMI)とArthur Waser Foundationが進めてきた「Montessori Architecture」の考え方を基に建設されたタンザニアの学校が、2023年、世界的な建築賞で二つの賞を受賞しました。

タンザニアのモンテッソーリ学校が世界的建築賞を受賞

受賞したのは、タンザニア北部のンガボボ村に建てられた「Simba Vision Montessori School」です。

AMIが2023年12月13日に発表した公式ニュースによると、同校はDezeen Awards 2023において、「Architecture Project of the Year」と「Education Project of the Year」の二つを受賞しました。

Dezeen Awardsは、国際的な建築・デザインメディアDezeenが主催する賞です。2023年は94か国から4,800件を超える応募があり、その中からSimba Vision Montessori Schoolが建築部門の年間最優秀プロジェクトに選ばれました。

学校を設計したのは、タンザニアのArchitectural Pioneering Consultants(APC)と、建築家のヴォルフガング・ロスバウアー氏です。

28の「建築パターン」から生まれた学校

この学校の設計には、書籍『Montessori Architecture: A Design Instrument for Schools』で示された28の建築パターンが用いられています。

本書は、建築家のスティーブ・ローレンス氏とベンジャミン・スターリ氏が、世界各地のモンテッソーリの学び舎を調査し、子どもの発達を支える空間に共通する特徴を整理したものです。

ここでいう「パターン」とは、世界中の学校を同じ形にするための設計図ではありません。子どもの身体の大きさ、活動の流れ、内と外のつながり、光や素材、個人で過ごせる場所と共同体で集まる場所など、学校を設計する際に考えたい基本的な視点です。

AMIは、これらのパターンを、気候、文化、経済的な条件が異なる地域でも、それぞれの土地に合わせて解釈できる「デザインのための道具」と位置づけています。

現地の気候と素材を生かす

Simba Vision Montessori Schoolが建つンガボボ村は、キリマンジャロ山とメルー山の間に広がるタンザニア北部の地域です。

建物には、現地で調達できる火山岩や砂を使ったブロックが用いられています。室内の一部には、音や温度を整えるために藁や泥を使った仕上げが施され、地域の伝統的な技術も取り入れられました。

大きく張り出した屋根は、強い日差しや雨から活動空間を守ると同時に、雨水を集める役割も持っています。自然の風、日陰、壁が蓄える熱などを利用し、機械による冷暖房に大きく頼らなくても過ごせるように設計されています。

モンテッソーリ建築は、決まった外観や豪華な設備を意味するものではありません。その土地にある素材、技術、気候をよく観察し、そこで暮らす子どもたちに適した環境をつくることが大切にされています。

廊下を、ただ通り過ぎる場所にしない

一般的な学校では、教室と教室の間に長い廊下があり、そこは目的地へ移動するためだけの場所になりがちです。

Simba Vision Montessori Schoolでは、それぞれの空間が連続するように配置され、典型的な廊下をできるだけ設けない設計が採用されています。入り口や階段、段差も単なる通路ではなく、座る、読む、話す、遊ぶといった活動が生まれる場所として考えられています。

壁の一部を主軸に対して45度に振ることで、小さなグループや一人で落ち着いて過ごせる場所もつくられています。広い共同空間だけでなく、子どもが少し離れて集中できる場所が、建物の中に自然に組み込まれているのです。

教室と外の世界を切り離さない

建物の外には、木陰や庭、農園、屋外で活動できる場所が広がっています。室内と屋外の間には、屋根に守られた半屋外の空間があり、子どもは活動に合わせて内と外を行き来できます。

外へ出ることが特別な行事ではなく、日々の生活や学びの一部になる構成です。

モンテッソーリ教育では、子どもが自分の身体を使い、実際の環境と関わることを大切にします。水を運ぶ、植物を育てる、食事の準備をする、身の回りを整える。建物は、こうした活動を制限する器ではなく、子どもの動きを支える環境である必要があります。

美しい建物だから受賞したのではない

AMIは今回の受賞について、モンテッソーリの考え方に基づく建築が、文化に適し、持続可能で、教育を支える価値を持つことが国際的に認められたものだと述べています。

Simba Vision Montessori Schoolの特徴は、目立つ形をつくるためにモンテッソーリを利用したことではありません。

子どもの身体の大きさや活動を出発点にすること。
現地の気候や文化、利用できる素材を尊重すること。
一人で集中する場所と、共同体で過ごす場所の両方を用意すること。
室内と自然を切り離さないこと。

こうした教育的な問いを一つずつ建築へ置き換えた結果として、その土地に必要な学校の形が生まれました。

モンテッソーリ建築は、家庭や小さな教室にもつながる

大きな学校を新築しなければ、モンテッソーリ建築を実践できないわけではありません。

子どもの目線から何が見えるか。
必要な道具へ自分で手が届くか。
人の動線が活動を妨げていないか。
一人で集中できる場所と、人と関われる場所があるか。
室内と屋外のつながりをつくれるか。

これらは、既存の幼稚園や保育園、モンテッソーリ教室、家庭でも考えられることです。建物をすぐに変えられなくても、家具の配置や物の置き方、光の入り方、子どもが歩く道筋を見直すことはできます。

モンテッソーリ建築とは、特定の形をまねることではなく、そこで生活する子どもを観察し、その発達を支える空間を考え続けることなのかもしれません。

関連記事・書籍紹介
今回の学校づくりに用いられた28の建築パターンを、写真や図面とともに紹介する書籍の日本語版が刊行されています。
『モンテッソーリ建築|子どもの学び舎のためのデザイン』の紹介記事を読む

参考資料・出典

Association Montessori Internationale「Montessori School Wins Not One But Two Important Architectural Prizes!」

Association Montessori Internationale「Montessori Architecture」

Association Montessori Internationale「AMI Talks – Building Schools」

Montessori Architecture公式サイト

Dezeen「Simba Vision Montessori School named best building」

Divisare「Simba Vision Montessori School」

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