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赤ちゃんとの関係は、生まれてから始まる? 妊娠中から変わり始めるママの心と脳

妊娠してから、以前より涙もろくなった。小さなことが気になり、まだ生まれていない赤ちゃんのことを何度も考えるようになった。

うれしいはずなのに不安になったり、理由もなく気持ちが揺れたりすることもあります。つわりや眠気で思うように動けず、「こんな状態で母親になれるのかな」と感じる人もいるでしょう。

しかし、母親になる変化は、赤ちゃんが生まれた日に突然始まるものではありません。妊娠中から、身体だけでなく心や脳にも少しずつ変化が起きています。

母親になる過程は、妊娠中から始まっています

AMI(国際モンテッソーリ協会)の0〜3歳トレーナー、クリステル・ルイス先生は、AMIの公開記事「Attunement and Montessori」の中で、「マトレセンス」という言葉を紹介しています。

マトレセンスとは、女性が母親になっていく移行の過程を表す言葉です。それは出産後だけの出来事ではなく、妊娠中から始まるとされています。

妊娠すると、身体の変化だけでなく、関心の向かう先や物事の感じ方も変わっていきます。これまで気にならなかった音や危険に敏感になったり、赤ちゃんが無事に育っているかを繰り返し考えたりすることもあります。

こうした変化には個人差がありますが、単に「神経質になった」「弱くなった」と片づけるものではありません。新しい命を迎え、その小さな合図に気づくための準備が始まっていると捉えることもできます。

赤ちゃんを理解する力も、少しずつ育っていきます

生まれたばかりの赤ちゃんは、言葉で要求を伝えられません。泣き声や表情、身体の動き、視線、呼吸の変化などを通して、自分の状態を知らせます。

ルイス先生は、妊娠や出産、赤ちゃんとの継続的な関わりを通して、親や日常的に養育する人の脳にも変化が起こり、赤ちゃんの言葉にならない合図へ注意を向けやすくなると述べています。

ただし、母親になれば赤ちゃんの気持ちがすべて分かるようになる、という意味ではありません。泣いている理由が分からないこともあります。抱いても泣きやまず、自信をなくす日もあるでしょう。

大切なのは、一度で正解を当てることではなく、「どうしたのだろう」と赤ちゃんを見て、考え、応えようとすることです。その繰り返しの中で、大人は少しずつ、その子特有の表情や泣き方、落ち着き方を知っていきます。

モンテッソーリの「観察」は、自分を見ることから

モンテッソーリ教育では、子どもをよく観察することを大切にします。しかし、観察するのは子どもだけではありません。大人が自分自身の状態に気づくことも、子どもを理解するための準備になります。

今、自分は疲れている。少し不安になっている。周囲の言葉に敏感になっている。今日は人と話す余裕がない――。

こうした状態を否定せずに知ることで、「赤ちゃんのためにもっと頑張らなければ」と自分を追い込むのではなく、休む、誰かに頼る、予定を減らすといった選択がしやすくなります。

妊娠中に行うモンテッソーリの準備は、特別な胎教を始めたり、早くから教材をそろえたりすることではありません。赤ちゃんを迎える大人が、自分の身体と心に耳を傾けられる状態を整えていくことも、大切な準備のひとつです。

お腹の赤ちゃんに、何かしてあげたほうがいい?

お腹に話しかけなければならない、毎日音楽を聴かせなければならない、早くから知的な刺激を与えなければならない――そう考える必要はありません。

話しかけたいときには、自然に話しかければよいでしょう。お腹に手を当てて動きを感じたり、静かに過ごしたり、家族と赤ちゃんのことを話したりするだけでも、ママにとって赤ちゃんの存在を感じる時間になります。

それは、赤ちゃんに何かを「教える」ための時間ではありません。これから出会う一人の人間へ、ゆっくりと気持ちを向けていく時間です。

ママの変化を、上の子も感じています

二人目以降の妊娠では、ママの変化を感じ取っているのは、お腹の赤ちゃんだけではありません。そばにいる上の子も、いつもとは違う暮らしを経験しています。

つわりで横になることが増えた。食べられないものが増えた。抱っこを断られるようになった。病院へ行くことが増え、大人たちが知らない話をしている――。

妊娠の仕組みを十分に理解できない幼い子どもでも、「ママがいつもと違う」ことには気づきます。何も説明されなければ、自分が悪いことをしたからママの具合が悪いのではないか、と受け取ることもあります。

詳しく説明しすぎる必要はありません。年齢に合わせて、今起きている事実を短く伝えます。

「ママのお腹の中で、赤ちゃんが育っているよ」
「今日は少し具合が悪いから、横になって休んでいるよ」
「あなたが悪いことをしたからではないよ」
「今日は抱っこできないけれど、ここで一緒に絵本を読もう」

変化そのものをなくすことはできなくても、何が起きているのか、次にどうなるのかを伝えることはできます。子どもに見通しを渡すことは、安心できる環境を整えることにつながります。

「お姉ちゃんになるんだから」と急がせない

赤ちゃんが生まれると聞いた上の子に、「もうすぐお姉ちゃんだね」「赤ちゃんのお世話をしてあげてね」と声をかけることがあります。温かな言葉ですが、繰り返されるうちに、子どもが「もう甘えてはいけない」と感じることもあります。

赤ちゃんの服を一緒に選ぶ。小さなタオルを棚へ置く。本人が望めば、迎える準備に参加してもらうことはできます。しかし、お姉ちゃんになることを理由に、急に我慢や責任を求める必要はありません。

家族の中に新しい命を迎えるまでの時間は、上の子にとっても大きな移行の時期です。以前より甘える、怒りやすくなる、できていたことを「やって」と頼む。そんな姿が見られたときは、困った行動だけを見るのではなく、「今までと同じように大切にされているかを確かめているのかもしれない」と考えてみます。

親子の関係は、ずれてもつなぎ直せます

ルイス先生が紹介する「アチューンメント」とは、相手の表情や声、身体の状態に注意を向け、その人が必要としていることを感じ取りながら応答することです。

けれども、親子がいつも完全に分かり合えるわけではありません。疲れて応えられない日もあれば、子どもの求めていることを取り違える日もあります。大切なのは、ずれを一度も起こさないことではなく、ずれたあとに、また相手を見てつながり直すことです。

妊娠中から完璧な母親になる必要はありません。自分の変化に気づき、お腹の赤ちゃんへ気持ちを向け、そばにいる上の子の表情にも目を向ける。その小さな積み重ねの中で、母親になる過程と、新しい親子の関係はすでに始まっています。

参考資料

Association Montessori Internationale「Attunement and Montessori」Cristel Ruiz
Association Montessori Internationale「The Development of Independence in the First 3 Years of Life」Teanny Hurtado V.

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