赤ちゃんの「ひとりで眠る」を急がなくていい – モンテッソーリから考える睡眠の自立

「抱っこしないと寝てくれない」「そろそろひとりで眠れるようにした方がいい?」「寝かしつけに毎晩時間がかかってしまう」――赤ちゃんの睡眠について、こんな悩みを抱えている方は少なくないと思います。
モンテッソーリ教育では「自立」をとても大切にします。それなら、眠ることについても早くひとりでできるようにした方がいいのでしょうか。
AMI(国際モンテッソーリ協会)の0–3歳トレーナー Molly Schayot氏は、AMI Training Voicesの記事「Collaborating Toward Sleep Independence」の中で、睡眠の自立について興味深い考え方を紹介しています。
「自立」は、ひとりにすることではありません
モンテッソーリ教育でいう自立は、大人が手を引いて「自分でやりなさい」とすることではありません。
歩くことも、食べることも、着替えることも、ある日突然ひとりでできるようになるわけではありません。大人に支えてもらいながら少しずつ経験を重ね、必要な援助がだんだん少なくなっていきます。
Schayot氏は、眠りについても同じように考えます。子どもによって気質も発達のペースも違い、比較的早く眠りへの移行が安定する子もいれば、長い間、大人の存在や援助を必要とする子もいます。
大切なのは「何か月になったから、もうひとりで寝られるはず」と急ぐことではなく、目の前の赤ちゃんをよく観察することです。
大人の仕事は「寝かせること」ではない
これは、モンテッソーリらしい考え方かもしれません。
大人が赤ちゃんを「寝かせる」のではなく、赤ちゃん自身が眠りへ移っていけるような環境と流れを整える。Schayot氏は、そのために秩序や予測できる流れを大切にしています。
例えば、毎晩まったく違う時間、違う場所、違う方法で寝かしつけるよりも、
お風呂に入る
着替える
部屋を少し暗くする
静かに過ごす
いつもの場所へ行く
というように、眠るまでの流れがある程度決まっている方が、赤ちゃんにとって「次に何が起こるのか」が分かりやすくなります。
これは厳密な時間割を作るということではありません。毎日の生活の中に、赤ちゃんが感じ取れる一定のリズムをつくるということです。
泣かせれば「自立」するわけではない
Schayot氏が特に強調しているのは、子どもを不快な状態のままひとりにしておくことと、自立を助けることは同じではない、という点です。
泣いている赤ちゃんがやがて疲れて眠ったとしても、それだけで「自分で眠る力を身につけた」と考えることはできません。
モンテッソーリの援助は、必要なときにはそばにいて、子どもが自分でできるようになってきたら少しずつ大人が引いていくことです。
昨日は抱っこが必要だったけれど、今日はそばにいるだけで落ち着いた。以前はずっと背中をなでていたけれど、最近は途中で手を止めても眠れるようになった。
そんな小さな変化を観察しながら、子どもが必要とする援助を少しずつ減らしていく。睡眠についても、そのような「一緒に自立へ向かう」という見方ができます。
「早くひとりで寝られる子」が自立しているわけではありません
赤ちゃんを育てていると、どうしてもほかの子と比べてしまいます。
「○か月なのにまだ夜中に起きる」
「友達の赤ちゃんはひとりで寝るらしい」
「抱っこで寝かせているから自立できないのでは?」
でも、睡眠のあり方には個人差があります。モンテッソーリ教育で大切なのは、月齢だけを見て「もうできるはず」と判断するのではなく、その子自身を観察することです。
自立は競争ではありません。
大人の援助を必要としている間は援助し、必要なくなってきたら、その分だけ大人が一歩引く。それを繰り返しながら、子どもは少しずつ自分の力を獲得していきます。
ただし、赤ちゃんの「安全な睡眠」は別に考えましょう
ここはとても重要です。
AMIの記事では、子どもの自立を支える物理的環境の一例として、床に近い低い寝床(フロアベッド)についても紹介されています。大人が子どものそばに座り、必要に応じて優しく触れたり歌ったりしながら、少しずつ援助を減らせるという考え方です。
しかし、モンテッソーリの環境づくりの考え方と、乳児の睡眠時の安全基準は分けて考える必要があります。
日本のこども家庭庁は、1歳未満の赤ちゃんについて、寝かせるときはあおむけにすることを勧めています。また、睡眠中の窒息を防ぐため、身体が沈み込まない硬めで平坦な寝具を使うこと、1歳までは掛け布団を使用しないこと、寝床に枕・タオル・ぬいぐるみなどを置かないこと、赤ちゃん専用の寝床を用意することなどを案内しています。
ベビーベッドなどの睡眠環境製品についても、国が定めた安全基準に適合した製品を選び、対象年齢や使用方法を守ることが大切です。
したがって、この記事では「モンテッソーリだから赤ちゃんにはフロアベッドを使いましょう」とはおすすめしません。
特に1歳未満の赤ちゃんについては、まず公的機関が示す安全な睡眠環境を優先してください。
「ひとりで寝られるようにする」より、観察してみる
赤ちゃんがなかなか眠らない夜が続くと、大人も疲れてしまいます。そんなとき、「どうしたら早くひとりで寝てくれるだろう」と考えてしまうのは自然なことです。
でも、少し視点を変えてみると、
今日はどのくらい眠そうだっただろう。
眠る前に刺激が多すぎなかっただろうか。
毎日の流れは赤ちゃんにとって予測しやすいだろうか。
今、この子はどのくらい大人の助けを必要としているだろう。
と、観察できることがたくさんあります。
そして昨日よりほんの少し大人の援助が少なくても安心して眠れたなら、それも立派な自立への一歩です。
モンテッソーリ教育が大切にしているのは、できるだけ早く大人から離すことではありません。子どもが「自分でできる」ようになっていく過程を観察し、そのとき必要なだけ手を差し伸べ、必要がなくなった援助を静かに手放していくことです。
眠ることも、歩くことや食べることと同じように、その子自身の発達の道のりの中にあるのかもしれません。
参考資料
・Association Montessori Internationale, Molly Schayot, “Collaborating Toward Sleep Independence”, Voices of AMI Training
https://montessori-ami.org/trainingvoices/collaborating-toward-sleep-independence
・こども家庭庁「赤ちゃんが安全に眠れるように ~1歳未満の赤ちゃんを育てるみなさまへ~」
https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/kenkou/sids
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