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「言うことを聞かせる」ことでは育たない。子どもの自己規律はどう育つ?

「何度言っても聞いてくれない」
「さっきはできたのに、今はやってくれない」
「わざと反抗しているのかな?」

小さな子どもと暮らしていると、そんなふうに感じることがあります。大人としては、何度も注意しなくても、自分で考えて行動できるようになってほしい。けれど、そのために「言うことを聞かせる」ことを増やせば、本当に子どもの自己規律は育つのでしょうか。

AMI 3–6歳トレーナーのPolli Soholt(ポリ・ソーホルト)先生は、AMI公式「Voices of AMI Training」の中で、子どもの「自己規律」について語っています。そこで重要な手がかりとして紹介されているのが、マリア・モンテッソーリが観察した「服従の3段階」です。

ここでいう「服従」は、大人の命令に従う従順な子どもを育てる、という意味ではありません。子どもが自分の身体や意志を少しずつコントロールできるようになり、やがて自分から周囲に応じて行動できるようになる。その発達の過程を表しています。

今回お話を紹介するAMIトレーナー

Polli Soholt(ポリ・ソーホルト)

AMI 3–6 Trainer

1970年にAMI Primary(3–6歳)のトレーニングを修了。モンテッソーリガイドとして29年間、学校管理者として36年間の経験を持ち、2011年にAMI Training of Trainers Programmeを修了しました。長年にわたり3〜6歳の子どもたちと関わり、現在はAMIトレーナーとして教師養成に携わるほか、コンサルタント、講師、試験官としても活動しています。

出典:Association Montessori Internationale(AMI)/Montessori Northwest
※人物イラストはAMI公式動画および公開されている本人写真を参考に制作したイメージです。

「言うことを聞く」と「自己規律」は同じではない

自己規律というと、「言われたことを守れること」「我慢できること」「静かにしていられること」を思い浮かべるかもしれません。

しかし、大人が強く指示をして子どもがその通りに動いたとしても、それだけで自己規律が育ったとは言えません。大人によって外側から行動をコントロールされることと、子ども自身が自分の動きや行動を調整できることは別だからです。

モンテッソーリ教育で大切にしているのは、後者です。自分で動き始める、自分で止める、待つ、やり遂げる、必要に応じて行動を変える。

こうした力が子どもの内側から育っていくことが、自己規律につながっていきます。

モンテッソーリが観察した「服従の3段階」

マリア・モンテッソーリは、子どもが大人の求めに応じられるようになるまでには、発達の段階があることを観察しました。

それが「服従の3段階」です。

第1段階:できるときもあれば、できないときもある

第2段階:できることなら、大人の求めに応じられる

第3段階:相手の意図を理解し、自分から応じようとする

この流れを見ると、モンテッソーリのいう「服従」が、単に「言うことを聞く子になる」という意味ではないことが分かります。

子どもの身体、意志、理解する力が発達し、それに伴って他者との関係も変化していく。その過程なのです。

第1段階——「昨日できたのに、今日はできない」

最初の段階では、子どもは大人の求めに応じられるときもあれば、応じられないときもあります。

「おもちゃを戻そうね」と言われて戻せるときもある。でも別の日には、そのまま走っていってしまう。大人からすると、「できるのに、どうしてやらないの?」と思ってしまいます。

けれど、小さな子どもは、理解したことをいつでも自分の意志で実行できるとは限りません。何をすればよいか分かっていても、身体や衝動をコントロールする力がまだ十分ではないことがあります。

Polli先生は、多くの子どもが2歳を過ぎる頃まで、このような不安定な段階にいると説明しています。

つまり、「できることがある」ことと、「いつでも自分の意思でできる」ことは違うのです。

昨日できたから今日もできるはず、と大人が考えてしまうと、発達の途中にいる子どもを「わざとやらない」「反抗している」と誤解してしまうことがあります。

第2段階——「できることなら、応じられる」

発達が進み、自分の身体や行動をコントロールする力が安定してくると、第2段階へ進みます。

この段階になると、大人から求められたことを理解し、それを行う能力があれば、応じられるようになってきます。Polli先生は、3歳を過ぎる頃になると、こうした力がより安定してくると説明しています。

ここで大切なのは、子どもが「従うことを教え込まれた」からできるようになったわけではないことです。

自分で歩く。物を運ぶ。こぼした水を拭く。活動を始め、繰り返し、終わったら元へ戻す。そうした経験を重ねながら、自分の身体と意志を使う力が育ってきた結果として、大人の求めにも応じられるようになります。

外からの命令によって動かされているのではなく、自分の意志で自分を動かせるようになってきた。

ここが大きな違いです。

第3段階——言われなくても、自分から動く

そして、さらに発達すると、第3段階の姿が現れてきます。

大人から「これをしてください」と言われてから動くのではなく、相手が何を必要としているのか、周囲で何が起きているのかを理解し、自分から応じようとする姿です。

困っている子どもがいたら手伝う。
誰かが咳をしていたら水を持っていく。
花瓶の花がしおれていることに気づく。
教室で何かが乱れていたら、自分から整える。

Polli先生は、このような姿が5歳頃に見られることがあると紹介しています。

ここには「先生に言われたから」という理由はありません。周囲を見て、必要なことを理解し、自分の意志で行動しています。

一見すると「よく言うことを聞く子」よりも、さらに先にある姿です。

大人から指示されなくても、自分自身を調整しながら、周囲の人や環境と関係を結べるようになる。

モンテッソーリが「服従」の発達として見ていたのは、こうした姿までを含んでいます。

だから、無理に「従わせる」必要はない

服従の3段階を知ると、子どもが言うことを聞かないときの見方が変わってきます。

第1段階にいる子どもに、第2段階や第3段階の行動を求めても、まだその力が十分に育っていないかもしれません。

そこで大人が「言うことを聞かせよう」と指示や叱責を増やしても、子どもの内側に自己規律が育つわけではありません。

必要なのは、従わせることではなく、自分自身をコントロールできる力が育つ経験を用意することです。

そのために必要なのが「目的のある動き」

Polli先生が自己規律の発達と結びつけて語っているのが、子どもの「動き」です。

活動を棚から机まで運ぶ。
床に落ちたものを掃く。
植物に水をあげる。
家具を拭く。
使ったものを元の場所へ戻す。

こうした活動では、子どもは自分で動きを始め、続け、そして終わらせます。

同じ活動を何度も繰り返すうちに、自分で始めること、自分の動きを調整すること、必要なところで止めることが少しずつできるようになります。

自己規律というと、「じっと座っていられること」を想像しがちですが、モンテッソーリ教育では逆です。

十分に動くことによって、自分の動きをコントロールできるようになる。

目的を持って身体を使う経験そのものが、意志と自己規律を育てていきます。

大人の役割は「コントロール」ではなく「援助」

もう一つPolli先生が大切にしているのが、大人と子どもの信頼関係です。

大人の言葉は、短く、分かりやすく、一貫していること。たとえば、出かける時間になっても靴を履かない子どもに、「早くして。何回言ったら分かるの?」と言葉を重ねるのではなく、「靴を履こうね」と必要なことを簡潔に伝える。

まだ一人で全部できないのであれば、必要なところだけ手伝います。

大切なのは、何でも一人でやらせることでも、何でも大人がやってしまうことでもありません。

子どもが自分でできるところは自分で行い、まだできないところだけを大人が援助する。

そうすることで、子どもは「自分で自分を動かす」経験を積み重ねることができます。

「言うことを聞かない」ときこそ、発達を見る

子どもが言うことを聞いてくれないと、大人はつい、「どう言えば聞いてくれるだろう」「もっと厳しくしたほうがいいのかな」と考えます。

でも、服従の3段階を知っていると、別の問いを持つことができます。

言っていることを理解できているだろうか。
その行動をするための身体的な力は育っているだろうか。
自分の衝動を止められる段階にいるだろうか。
大人の言葉が多すぎないだろうか。
自分で動き、繰り返す経験を十分に持てているだろうか。

「言うことを聞かない」という行動だけを見るのではなく、その向こう側にある発達を見る。

そのために必要なのが、モンテッソーリ教育で大切にされている「観察」なのです。

まとめ

モンテッソーリが示した「服従の3段階」は、子どもを従順にするための方法ではありません。

第1段階——できるときもあれば、できないときもある。
第2段階——できることなら、大人の求めに応じられる。
第3段階——相手や周囲の必要を理解し、自分から応じようとする。

この変化の背景には、自分の身体を動かす力、意志を働かせる力、言葉を理解する力、そして周囲の人と関係を結ぶ力の発達があります。

だから、昨日できたことが今日できなくても、すぐに「わがまま」「反抗している」と判断する必要はありません。

子どもは、大人に従う練習をしているのではなく、自分自身を自分で動かせる人へと育っている途中にいる。

「どうしたら言うことを聞かせられるだろう」と考える代わりに、「今、この子はどの段階にいるのだろう」と観察してみる。

Polli先生の言葉は、子どもの自己規律を育てるために、大人ができることの出発点を教えてくれます。

参考資料・出典

Association Montessori Internationale(AMI)
Polli Soholt「How Do Children Develop Self-Discipline?」/Voices of AMI Training
AMI公式記事を見る

Association Montessori Internationale(AMI)
Glossary of Montessori Terms
AMI公式用語集を見る

Montessori Northwest
Polli Soholt 公式プロフィール
公式プロフィールを見る

※本記事は、AMI公式「Voices of AMI Training」に掲載されたPolli Soholt先生の記事をもとに、その主旨を日本の保護者や教育関係者にも読みやすい形で紹介したものです。本文中に登場する年齢は発達の目安として紹介されているもので、すべての子どもに一律に当てはまるものではありません。

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