「自分にもできる」という自信はどこから? NBAの常識を変えたステフィン・カリーとモンテッソーリ教育

ステフィン・カリーの3ポイントシュートをイメージしてAIで生成したイラストです。実在の写真を使用・加工したものではありません。
バスケットボールをあまり見ない人でも、ステフィン・カリーのプレーを一度見ると、その光景に驚くかもしれません。
ゴールから、かなり遠い。
「そこからシュートを打つの?」と思うような場所から放たれたボールが、高い弧を描いてリングへ吸い込まれていく。
それを、何度も繰り返します。
ステフィン・カリーは、NBAのゴールデンステート・ウォリアーズでプレーする、バスケットボール史を代表する選手の一人です。
NBA優勝4回。シーズンMVP2回。2022年にはNBAファイナルMVPを獲得。
そして2015-16シーズンには、NBA史上初めて、投票した全員から1位票を獲得する「満票MVP」となりました。
何よりカリーを象徴するのが、3ポイントシュートです。
NBAレギュラーシーズン通算3ポイント成功数で歴代1位。NBA公式でも、史上最高のシューターとして語られる選手です。
言葉で説明するより、実際のプレーを見た方が、そのすごさは伝わるかもしれません。
ステフィン・カリーの驚異的な3ポイントシュート30選。動画:NBA
何度も、何度も、同じシュートを繰り返す
カリーの3ポイントシュートを見ると、遠くから簡単に投げているようにも見えます。
でも、当然ながら、あのシュートは突然できるようになったものではありません。
足を置く。
構える。
ボールを上げる。
放つ。
軌道を確かめる。
そして、また打つ。
同じような動きを何度も繰り返しながら、少しずつ身体に定着させていく。
ここでモンテッソーリ教育との因果関係をつくることはできません。「モンテッソーリ教育を受けたから、カリーが3ポイントの名手になった」という話ではありません。
ただ、モンテッソーリの教室にも、少し重なって見える子どもの姿があります。
子どもが、自分で選んだ一つの活動を繰り返す姿です。
一度終わったのに、また最初から。
そして、また最初から。
大人には「もうできるでしょう」と思えることでも、本人は繰り返します。
自分がやりたいことだから、繰り返せる。
結果として、その繰り返しの中から集中が生まれ、動きが洗練されていきます。
そんなカリーが、自分自身の成長について振り返ったときに語っている幼児期の経験があります。
モンテッソーリ教育です。
「モンテッソーリは、今の自分になることを助けてくれた」
2013年、American Montessori Society(AMS)は、カリーと家族を取材した「Living Montessori: Stephen Curry & Family」を制作しました。
その中でカリーは、自分のモンテッソーリ経験について、非常に強い言葉を残しています。
「モンテッソーリは、今の自分になることを助けてくれたと思う」
さらにカリーが語っているのが、自信です。
モンテッソーリは幼いころの自分に大きな自信を与えてくれた。
学校へ行くのが好きだった。
なぜなら、毎日何か新しいことを学べるから。
そして、自分のペースで進み、自分の強みを生かしながら、弱いところにも取り組めたと振り返っています。
モンテッソーリ教育について語るステフィン・カリーと家族。動画:American Montessori Society
カリーがモンテッソーリで得たという「自信」
「自信のある子に育ってほしい」
そう願う保護者は多いと思います。
では、自信はどうやって育つのでしょう。
「あなたならできるよ」
「すごいね」
と大人から言われ続ければ、自信がつくのでしょうか。
カリーの話から見えてくるのは、少し違う自信です。
自分で取り組んだ。
難しいところがあった。
それでも、自分でやってみた。
そして、少しできるようになった。
そうした経験から生まれる、
「自分なら、やってみることができる」
という感覚です。
2013年のSan Francisco Chronicleの取材でも、カリーは幼児期の教育が自信につながったことを語り、モンテッソーリについて、困難にぶつかったとき、それに取り組んでいく方法を教えてくれるという趣旨の発言をしています。
失敗しないから、自信があるのではない。
うまくいかなくても、自分で取り組んだ経験があるから、もう一度やってみようと思える。
この違いは、とても大きいと思います。
実は、母ソニア・カリーがモンテッソーリ教育者だった
カリーとモンテッソーリの関係を調べていくと、もう一人、重要な人物が出てきます。
母親のソニア・カリーです。
ソニアはモンテッソーリ教育に携わり、ノースカロライナ州にモンテッソーリスクールを設立しました。
ステフィンだけでなく、弟のセス、妹のシデルもモンテッソーリで学んでいます。
AMSの家族インタビューも、この学校で撮影されました。
そしてソニアが家族にとってのモンテッソーリについて語るとき、挙げているのが、
自立。
内側から生まれる学ぶ意欲。
責任。
自分自身と他者への尊重。
です。
つまり、カリー家にとってモンテッソーリは、単に「ステフィンが幼いころ通っていた学校」ではありませんでした。
家族の教育観そのものに深く関わっていたのです。
「自分のペースで学べた」
カリー本人がモンテッソーリについて語っているもう一つの特徴が、
自分のペースで学べたこと
です。
同じ年齢だから、全員が同じところまで進む。
同じ時間だから、全員が同じ活動を終える。
そうではなく、自分に合った速さで取り組める。
得意なことは先へ進む。
難しいところには時間をかける。
カリーは、それが自分の強みを伸ばしながら、弱い部分にも取り組むことにつながったと振り返っています。
ここでも、彼のバスケットボール人生と直接の因果関係を結びつけることはできません。
でも、世界最高峰のスポーツ選手になった人物が、大人になって幼児期を振り返ったとき、
「何を早くできるようになったか」
ではなく、
「自分のペースで学べた」
ことを覚えている。
これは、幼児教育を考えるうえで、とても興味深いことです。
3ポイントシュートと、モンテッソーリの子ども
遠い位置からシュートを打つ。
外れる。
また打つ。
ほんの少し修正する。
また打つ。
何度も繰り返す。
もちろん、NBA選手のトレーニングと幼児のモンテッソーリ活動は、まったく別のものです。
それでも、その根底にある、
自分から取り組むこと。
繰り返すこと。
失敗しても、もう一度試すこと。
という姿勢には、どこか重なるものを感じます。
そしてカリー自身が、モンテッソーリで得たものとして「自信」を挙げている。
だからこそ、彼の3ポイントシュートを見たとき、完成された技術だけを見るのではなく、その後ろにある膨大な反復シュート練習にも目を向けたいと思います。
「できる子」だから、自信があるのではない
カリーは、NBA史上最高峰のシューターです。
だから今の姿だけを見ると、
「もともと才能があった人だから」
と思ってしまいます。
もちろん、類まれな才能があったことは間違いありません。
けれど、カリー本人が幼児期について語っている言葉は、才能の話ではありません。
自分のペース。
毎日新しいことを学ぶ楽しさ。
強みと弱みに自分で向き合うこと。
そして、そこから生まれた自信。
「できるから、自信がある」のではなく、「自分で取り組んできたから、やってみようと思える」。
モンテッソーリ教育が子どもに育てたい自信も、こちらに近いのではないでしょうか。
大人から「すごい」と評価されることでつくられる自信ではなく、
「自分でやってみた。うまくいかなかった。でも、もう一度やってみた」
という経験から、子どもの内側につくられていく自信です。
世界中の観客が見つめる中、信じられないほど遠い位置からボールを放つステフィン・カリー。
その彼が、幼児期を振り返って、
モンテッソーリが自分に自信を与えてくれた
と語っている。
その言葉を知ると、あの3ポイントシュートが、少し違って見えてくるように思います。
参考資料・出典
American Montessori Society
American Montessori Society 公式サイト
Golden State Warriors
Golden State Warriors 公式サイト
American Montessori Society/Stephen Curry & Family
Living Montessori: Stephen Curry & Family
※ステフィン・カリーのNBAでの成功や3ポイントシュートの技術が、モンテッソーリ教育によってもたらされたとするものではありません。本記事では、本人が語った幼児期の経験と、モンテッソーリ教育についての発言を紹介しています。
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