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つかまり立ちは早いほど喜んでいいの? – 知っておきたい「はいはい」の大切さ

「うちの子、もうつかまり立ちを始めたんです」
同じくらいの月齢の赤ちゃんを育てるママからそう聞くと、「すごいね」と思う一方で、まだ床をはいはいしているわが子を見て、少し心配になることがあります。

つかまり立ちが早いのは、発達が早いということ?
はいはいの期間が長いのは、何か遅れているということ?

先に答えると、早くつかまり立ちを始める子も、長くはいはいを続ける子もいます。早く立つことが悪いわけではなく、まだはいはいしていることを急いで心配する必要もありません。

ただ、つかまり立ちや歩き始める時期ばかりに目を向けていると、その前に赤ちゃんが床の上で経験している、とても大切な時間を見落としてしまいます。

はいはいをしている赤ちゃんの身体の中では、何が育っているのでしょうか。
AMI(国際モンテッソーリ協会)が保護者向けに公開している「Aid to Life」と、現在の発達研究を手がかりに、歩く前の赤ちゃんの動きを見てみましょう。

つかまり立ちが早いことも、はいはいが長いことも、その子の発達

同じ月齢でも、赤ちゃんの動きは一人ひとり違います。
床の上を盛んに移動する子もいれば、座ったまま周囲をじっくり見ている子もいます。はいはいを始めたと思ったら、すぐにつかまり立ちへ向かう子もいます。

そのため、つかまり立ちが早いから「優れている」、はいはいの期間が長いから「遅れている」と、早さだけで比べることはできません。

早くつかまり立ちを始めた赤ちゃんが、自分の力でその姿勢を獲得したのであれば、それもその子の自然な発達です。止めてまで、はいはいをさせる必要はありません。

一方で、まだはいはいを続けている赤ちゃんも、何も進んでいないわけではありません。床の上を移動しながら、歩く前に必要となるさまざまな身体の使い方を経験しています。

見える変化が早いことだけが、発達ではないのです。

はいはいをしている間、赤ちゃんは全身を使っている

はいはいでは、両手と両膝で身体を支えながら、手足を動かして前へ進みます。

手のひらを床につける。
腕や肩で体重を支える。
お腹や背中を使って身体を安定させる。
左右の手足を協調させる。
進みながら頭を上げ、周囲を見る。

赤ちゃんは、こうした動きを誰かに教えられて行っているわけではありません。「あそこへ行きたい」「あれに触りたい」という自分の目的に向かって何度も身体を動かす中で、少しずつ調整できるようになっていきます。

また、はいはいは身体を鍛えるだけの運動でもありません。

床の感触を手のひらや膝で感じる。
物との距離を見ながら近づく。
家具の間を通り抜ける。
段差の前で止まり、どう進むかを考える。

自分で移動できるようになることで、赤ちゃんが見ている世界も、触れられる世界も大きく広がります。

AMIは「ハイハイを促す環境を作りましょう」と伝えています

AMIが保護者向けに公開している「Aid to Life」には、「ハイハイを促す環境を作りましょう」というページがあります。

そこでは、床の上に転がるボールを用意したり、赤ちゃんの手がわずかに届かない場所に興味のある物を置いたりすることが紹介されています。

大切なのは、大人が赤ちゃんの手足を動かして、はいはいの練習をさせることではありません。

赤ちゃんが自分から、

「触ってみたい」
「あそこまで行ってみたい」

と思える環境をつくり、自分の力で近づこうとする時間を待つことです。

欲しそうにしているからと、いつも大人が物を取って手渡してしまえば、赤ちゃんは移動する必要がなくなります。すぐに渡さず、困らせるわけでもなく、自分で近づこうとしている様子を少し見守ってみます。

大人が歩行を早める必要はありません

Aid to Lifeの「ハイハイや歩行に関してよく聞かれる質問」では、歩行を早めるための器具を使って、子どもの自然な発達を急がせないように伝えています。

AMI 0〜3トレーナーのNancy Kodera(ナンシー・コデラ)氏も、赤ちゃんに自由に動ける環境があれば、ずりばい、はいはい、伝い歩き、そして独立歩行へと、自分の力で経験を重ねていくと説明しています。

歩行器に入れたり、大人が両手を持って何度も歩かせたりして、準備が整う前から歩行を急がせる必要はありません。

歩くために必要なのは、足を交互に動かすことだけではないからです。

自分で身体を起こす。
つかまって立つ。
重心を移す。
バランスを崩したら座る。
もう一度立ってみる。

赤ちゃんは、こうした過程も含めて自分の身体を使えるようになっていきます。

もちろん、赤ちゃんが自分から家具につかまって立ち始めたら、それを止める必要はありません。倒れやすい家具を片づけ、安定してつかまれる場所を用意し、安全に試せるようにします。

大人の役割は、つかまり立ちを早めることでも、はいはいに引き戻すことでもなく、その子が今しようとしている動きを安全に経験できるようにすることです。

「はいはいをしなかったら問題」とは限りません

ここは、AMIの考え方と現在の発達研究を分けて見ておく必要があります。

Aid to Lifeは、はいはいを歩行へ向かう大切な段階として強く位置づけています。モンテッソーリの0〜3歳の環境でも、赤ちゃんが床の上で自由に動けることをとても大切にします。

しかし現在の発達研究では、すべての赤ちゃんが同じ時期に、同じ形のはいはいを経験するとは考えられていません。

四つばいになる子もいれば、お腹を床につけたずりばいを長く続ける子、お尻をつけて移動する子、はいはいの期間がとても短い子もいます。はいはいをほとんどしないまま歩き始める子もいます。

そのため、

「はいはいをしなかったから、将来必ず問題が起きる」
「はいはいを長くさせれば、運動や学習の能力が必ず高くなる」

とまでは言えません。

はいはいには豊かな身体経験があります。けれども、それを「必ず通過しなければならない試験」のように考えると、今度は別の不安を保護者に与えてしまいます。

見るべきなのは、はいはいを何か月したかだけではありません。

赤ちゃんが自分なりの方法で移動しようとしているか。
身体の左右をどのように使っているか。
床の上で手を伸ばし、姿勢を変え、周囲を探索しているか。

一つの動きだけで判断せず、その子の身体全体の使い方と、発達の流れを見ていきます。

はいはいを「させる」のではなく、はいはいできる暮らしを

赤ちゃんに、長くはいはいをさせようとする必要はありません。

できることは、はいはいを始める前から、赤ちゃんが自分の身体を自由に使える時間と場所を用意することです。

床の上に、安全に動ける空間をつくる。
身体を締めつけず、手足を動かしやすい服を選ぶ。
興味を持てる物を、少し手を伸ばしたくなるところに置く。
バウンサーやベビーカーなどで身体を固定する時間が長くなりすぎていないか見直す。
自分で取ろうとしているときに、すぐ手渡さず少し待ってみる。

特別な運動を教えなくても、赤ちゃんには自分から動こうとする力があります。

早くつかまり立ちを始めた子も大丈夫。
まだはいはいを楽しんでいる子も大丈夫。

どちらが早いかを比べるよりも、その子が今、どのように身体を使い、何をしようとしているのかを見てみる。

はいはいの時間は、歩くまでの待ち時間ではありません。
赤ちゃんが自分の身体を使って世界へ近づいていく、大切な発達の時間なのです。

参考資料・出典

Association Montessori Internationale(AMI)/Aid to Life
ハイハイや歩行に関してよく聞かれる質問

Association Montessori Internationale(AMI)/Aid to Life
動きを促す玩具――ハイハイを促す環境を作りましょう

Association Montessori Internationale(AMI)/Aid to Life
動きに関する10のヒント

Nancy Kodera, AMI 0–3 Trainer
Meeting an Infant’s Movement Needs

Kretch, K. S. et al.(2024)
Early Mobility and Crawling: Beliefs and Practices of Pediatric Physical Therapists

Zubler, J. M. et al.(2022)
“Learn the Signs. Act Early.”: Updates and Implications for Physical Therapists

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