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赤ちゃんにモビールは必要? まだ手を伸ばせない時期に育っている「見る力」

まだ寝返りをせず、物へ手を伸ばすこともない赤ちゃん。仰向けに寝たまま天井を見ていると、「退屈しているのでは?」「何か遊んであげたほうがいいのかな」と思うことがあります。

けれども、赤ちゃんは何もしていないわけではありません。光の変化を感じ、顔の輪郭を見つめ、ゆっくり動く物へ焦点を合わせようとしています。

まだ手で物をつかめない時期、赤ちゃんにとって「見ること」は大切な活動です。その活動を支える環境のひとつが、モビールです。

モビールは、赤ちゃんをあやすための飾りではありません

AMI(国際モンテッソーリ協会)が保護者向けに発信している「Aid to Life」では、誕生から8か月頃までの運動環境のひとつとして、「動きに役立つモビール」を紹介しています。

モビールというと、ベビーベッドにつける飾りや、音楽を流して赤ちゃんを楽しませる玩具を思い浮かべるかもしれません。

しかし、Aid to Lifeが大切にしているのは、大人が次々に刺激を与えることではありません。赤ちゃんが自分の目で動く物を見つけ、焦点を合わせ、目で追うための環境を用意することです。

赤ちゃんは、まだ身体を大きく動かせない時期にも、目を使って自分から世界に関わっています。

まだ手を伸ばせなくても、「見る活動」は始まっています

生まれて間もない赤ちゃんの視覚は、まだ発達の途中です。遠くの物や細かな模様を、大人と同じようにはっきり見ているわけではありません。

それでも、目の前に現れた輪郭へ焦点を合わせようとしたり、ゆっくり動く物を視線で追ったりします。最初はほんの短い時間でも、経験を重ねるうちに、物の動きを追える範囲が少しずつ広がっていきます。

じっと見つめていたかと思うと、急に視線を外すこともあります。顔はほとんど動かさず、目だけで追っていることもあります。

大人には小さすぎて見逃してしまいそうな変化ですが、これも赤ちゃんが自分の力で行っている活動です。

モンテッソーリの乳児環境で知られる二つのモビール

バンビーノの乳児環境に吊るされたムナリ・モビール(中央)とゴビ・モビール(右)

モンテッソーリの乳児環境では、赤ちゃんの視覚の発達に合わせた、さまざまなモビールが用いられています。なかでもよく知られているのが、「ムナリ・モビール」と「ゴビ・モビール」です。

写真中央の白黒のモビールは、ムナリ・モビールです。イタリアの芸術家・デザイナー、ブルーノ・ムナーリの動く造形作品に由来するとされ、白黒の幾何学形態と、光を反射する透明な球体で構成されています。わずかな空気の流れで、全体がゆっくりと動きます。

写真右側の緑色の濃淡が並んだものは、ゴビ・モビールです。マリア・モンテッソーリの協力者であったジャンナ・ゴビが考案したもので、同じ色の明るさが少しずつ変化する球体が並んでいます。色の違いが見え始めた赤ちゃんが、濃淡を見比べられるモビールです。

どちらも、派手な音や光で赤ちゃんの注意を引き続けるためのものではありません。自然な空気の流れによって静かに動き、赤ちゃんが自分から見つめたり、視線で追ったりできるように考えられています。

最初は白黒、その後は色のあるモビールへ

Aid to Lifeでは、初めの時期には、白と黒のようにコントラストのはっきりしたモビールを勧めています。視覚が発達の途中にある赤ちゃんにも、形の境界を捉えやすいからです。

白黒のムナリ・モビールを以前ほど見なくなったり、視線がすぐに別の場所へ移るようになったりしたら、色のあるモビールへ替えてみます。

ゴビ・モビールのように、一つの色が濃い色から淡い色へ変化していくものを用意すると、赤ちゃんは色の違いを見比べることができます。

ただし、「生後何か月になったら必ず交換する」と暦だけで決める必要はありません。新しいモビールへ替えたときに、再びじっと見るようになるかを観察します。

交換する時期を教えてくれるのは、商品に書かれた対象月齢だけではなく、目の前にいる赤ちゃんの姿です。

どこに吊るせばいいの?

モビールは、赤ちゃんを仰向けに寝かせたときに、無理なく見られる場所へ吊るします。生まれて間もない時期には、遠すぎる物へ焦点を合わせにくいため、本当に見えているかを大人が確かめる必要があります。

赤ちゃんの真上に吊るしただけで安心せず、どこへ視線を向けているかを見てみましょう。モビールではなく窓の光や手前の壁ばかり見ているなら、位置や距離が合っていない可能性があります。

視覚を使うためのモビールは、赤ちゃんの手が簡単には届かない位置にします。高く吊るしすぎて見えなくなっては意味がないため、「手は届かないけれど、よく見える」位置を、赤ちゃんの視線を観察しながら探します。

速く回り続けなくてもいい

Aid to Lifeでは、空気の流れによって自然に漂うようなモビールが紹介されています。トンボやハチドリ、熱気球など、空中にあることが不自然ではない題材も挙げられています。

わずかな空気の動きで向きが変わり、しばらく止まり、またゆっくりと動く。動く時間と止まる時間があることで、赤ちゃんは形を見つめたり、再び動き始めた物を追ったりできます。

電動で回転し、音や光が続くモビールがすべてよくないということではありません。ただ、赤ちゃんが自分から見る活動のために、強い光や音、絶え間ない動きが必要なわけではありません。

モビールを用意する目的は、赤ちゃんを楽しませ続けることではなく、赤ちゃん自身が見ようとする力を使えるようにすることです。

赤ちゃんの「見る力」を育むモビールの役割を紹介する、AMI Montessori「Aid to Life: Movement – Mobiles」の動画

じっと見ているときは、静かに待ちます

赤ちゃんがモビールを見つめていると、「見える?」「きれいだね」と声をかけたり、もっと動かそうと手で揺らしたりしたくなるかもしれません。

けれども、赤ちゃんがすでに視線を向けているなら、その活動を大人が盛り上げる必要はありません。顔を近づけたり、次々に話しかけたりすると、赤ちゃんの視線はモビールから大人へ移ります。

赤ちゃんと話す時間も大切ですが、モビールを見ているときは、赤ちゃんが一人で集中する短い時間として守ることができます。

視線を外す、顔を背ける、泣き始めるといった姿が見られたら、もう十分なのかもしれません。長時間見せることよりも、赤ちゃんが自分から関わり、自分で終えられることを大切にします。

「見るモビール」から「触れて動かす物」へ

成長とともに、赤ちゃんはモビールを見るだけでなく、手を伸ばそうとするようになります。この頃には、見るためのモビールとは別に、ゴムなどで吊るしたガラガラや鈴、握りやすい玩具を、手が届く位置へ用意することができます。

偶然、手が触れる。吊るした物が揺れる。もう一度腕を動かすと、今度は音が鳴る――。

この経験を通して、赤ちゃんは「自分が動くと、目の前の物も動く」という関係に気づき始めます。大人が鳴らして聞かせるだけではなく、赤ちゃん自身の動きによって結果が生まれるところに意味があります。

見るためのモビールと、触れて動かすための吊り玩具は役割が異なります。赤ちゃんが盛んに手を伸ばすようになったら、自分の手で変化を起こせる環境へ移していきます。

安全に使うために

モビールや吊り玩具は、落下しないように確実に固定します。糸やゴムが外れたり、赤ちゃんの首や指に絡んだりしない構造であることも確認します。

ムナリ・モビールには、ガラスやプラスチックの透明な球体が使われていることがあります。破損や落下の危険を避けるため、赤ちゃんの顔の真上や、手が届く位置には吊るさないようにします。

赤ちゃんは日々成長します。昨日まで届かなかった物へ、突然手が届くこともあります。身体を起こしたり、強く引っ張ったりするようになったら、同じ設置方法のままにせず、位置や使い方を見直します。

「モンテッソーリのモビール」を購入する必要はありません

ここまでムナリ・モビールとゴビ・モビールを紹介しましたが、赤ちゃんのために、必ずこれらを購入しなければならないわけではありません。

Aid to Lifeが勧めているのも、特定の商品をそろえることではなく、赤ちゃんが焦点を合わせ、ゆっくりと目で追える環境を用意することです。

形が単純で見分けやすい。色のコントラストがはっきりしている。わずかな空気の流れで穏やかに動く。赤ちゃんが無理なく見られる位置へ、安全に吊るすことができる――。こうした条件を満たしていれば、市販の一般的なモビールや、大人が安全に配慮して作ったシンプルなモビールでも構いません。

反対に、「モンテッソーリ」と書かれた商品であっても、部品が多すぎる、動きが速すぎる、赤ちゃんのそばへ安全に固定できないといった物は、今の赤ちゃんに合っているとは限りません。

モンテッソーリ教育で大切なのは、決められた物を買いそろえることではありません。目の前の赤ちゃんを観察し、その時期に必要な環境を考えることです。

ムナリ・モビールとゴビ・モビールを探している方へ

ムナリ・モビールやゴビ・モビールそのものを家庭で使ってみたい場合には、完成品や手作りキットも販売されています。購入するときは、全体のバランスや動きのゆるやかさだけでなく、吊り糸や部品の強度、固定方法も確認してください。

STUDY PARK「ムナリ・モビール〈完成品〉」
STUDY PARK「ゴッビ・モビール〈完成品〉」
こどもの道具や「ゴビ・モビール〈完成品〉」

※上記は購入できる販売店の一例で、バンビーノが特定の商品を推奨するものではありません。価格、在庫、素材や仕様は変更されることがあるため、購入前に各販売ページでご確認ください。

赤ちゃんは、見ながら世界とつながっています

まだ寝返りをしない。手を伸ばさない。声を出さずに、ただ上を見ている。

そんな時期にも、赤ちゃんは焦点を合わせ、動きを追い、形や色の違いを受け取っています。

大人がすることは、見せ続けたり、楽しませ続けたりすることではありません。今の赤ちゃんが見つけられる物を、見える位置にひとつ用意し、じっと見つめる時間を残すことです。

モビールは、赤ちゃんに何かを教え込むための道具ではありません。まだ自由に移動できない赤ちゃんが、自分の目を使って世界へ働きかけるための、小さな環境なのです。

参考資料

Aid to Life日本語版「動きに役立つモビール」
Aid to Life「Mobiles for Movement」

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