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自己中でOK!? モンテッソーリ教育に学ぶ言葉がけ

おもちゃを取り合う子どもたち

子どもと大人が対立する理由として、子どもの発達段階が理解されていないということがあると感じているのですが、
その大人にとって分かりにくい発達段階の一つに
「自己中なのが当たり前の時期」というのがあります。

具体的には、1歳半頃~3歳半頃まで(あくまでも目安であり、個人差があります)。
言い換えると、「自分の気持ち以外は見えていない」という時期です。この時期をみんな通って、4歳頃から少しずつ「相手にも気持ちがある」ことが分かるようになります。

この時期の子どもは、自分が使いたいおもちゃを他のお友達が持っていたら、悪気なく取ろうとします。そして実際に取り上げて、相手を怒らせたり泣かせたりして、子ども同士のトラブルになります。

私がこの時期の子どものことをよく分かっていなかったときにしていた言葉がけで、失敗した例を何個か挙げてみますと、

何で人のもの取るの!

この大人の「何で」って曲者だなぁといつも感じています。純粋な疑問じゃないですよね。「取っちゃダメでしょ!」と意味で、詰問調で使ってるんですけど、この時期の子どもには伝わりません。
「何で」と聞かれたから「使いたいから!」と答える子どももいます。
「そういうこと聞いてるんじゃないんだよ!」とこちらの怒りを倍増させ、大人も子どもも分かり合えません。また、責め口調のため、おとなしい子どもはそこで押し黙ってしまい、「何で答えないの!」とまた怒られる。
結果として、子どもに伝えたいことが一切伝わりません。対立だけで終わってしまいます。

何でそんな意地悪なことするの!

意地悪のつもりはないんです。ただ単純に、「自分が使いたいものを、たまたま相手が持っていた。だから取った」子どもの中ではこれだけのことなんです。自分の気持ちがいちばん、そこしか見えていないんです。そういう時期なんです。相手にも相手の気持ちがあるとか、自分がしたことが相手の気持ちを害したとか、そんなところまで考えも及ばなければ理解も難しい、それが普通の発達段階の時期です。みんなこの時期を通ります。
なので、この時期の子どもに、

お友達の物、取ってもいいんだっけ?

と聞くと、「いい」って答えます。大人からしたら、「えーっ!なにこの、自己中な子!」って感じですが、大事なことなので何度でも言います。これが普通です。
この声かけが有効なのは、「いけないとはわかっていたけど取ってしまった」場合のみ。主に年中~年長さんにこう聞くと、「…取っちゃダメ。」としぶしぶ相手に返すことができますが、そもそもいけないことだという認識がまだない子どもにはまだ早い声のかけ方でした。

と、いろいろ失敗してみて、
この時期の子どもにいちばんよく伝わる言い方は何だったか。

「あのね、あなたが使いたくても、他の人が使っていたら取らないんだよ」

このシンプルな声かけだということがわかりました。怒るわけでもなく責めるわけでもなく、ただ淡々と、でも真剣に愛をもって、みんなと一緒に過ごす上で、してはいけないことをシンプルに伝える。

愛をもって、というところがいちばんのポイントです。この時期の子どもは、「自分がいるこの世界は愛にあふれている、自分は愛されている、生きていていいんだ」ということを無意識に吸収する時期でもあるからです。

最初は「でも使いたい~」と逆に泣かれたり怒られたりしますが、「一回返そうね、お友達が終わったら貸してもらおうね」と根気よく関わり続け、これを1日に何回も、毎日毎日繰り返します。しかも、「前にも言ったでしょ!」ではなく、いつも初めてのときのように新鮮に伝え続けること。ここは大人のほうが訓練が必要かもしれません。

この時期が過ぎて「人にも気持ちがある」ということが何となくわかり始める4歳頃から、少しずつですが人の物を取らなくなったり、譲ることができたり、相手の気持ちを害したときに「ごめんね」が言えるようになったりします。(何度も言いますがこの時期には個人差があります。)

自分の訓練ができてくると、この時期の子どもたちに関わるのはとても楽しくなります。私の場合はこの時期のことを知ることができて、「自己中な時期だもんね、しょうがないよね、でもダメなことは毎回伝えるからね、何度でも伝えるからね」というおおらかな心がまえでいられるようになり、こちらの気持ちがささくれ立つことが減りました。
そして目の前の子どもが、お友達が終わるまで待っていられたり、貸してくれた時に「ありがとー!」と言えたり、「先生、〇〇ちゃんが貸してあげた!(貸してくれた、の意)」と報告に来る姿を見られるのが、本当に嬉しくなります。

「自己中でもしょうがない時期」、心のどこかにとどめておいてください。

ライター/コマツヒロコ   AMI公認国際モンテッソーリ教師(2歳半~6歳+)、保育士。
東京国際モンテッソーリ教師養成センター卒業後、さいたま市にあるモンテッソーリあかねこどものいえに4年勤務。現在は横浜市の保育園に勤務中。
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