カテゴリ / コラム 世界のモンテッソーリ研究
一覧

AI時代の到来が、モンテッソーリ教育の価値にあらためて光を当てる – これから求められる力と、100年以上前から育ててきた力が驚くほど重なっている

文章を書く。絵を描く。調べたことをまとめる。

AIによって、何かを調べたり、形にしたりする方法が大きく変わっています。では、これからの子どもたちには、何を身につけてほしいのでしょうか。

新しい道具に早く慣れることでしょうか。それとも、その道具で「何をしたいのか」を自分で考えられることでしょうか。

AI時代の教育指針とモンテッソーリ教育を並べてみると、意外な共通点が見えてきます。

AIがつくってくれる時代に、誰が目的を決めるのか

UNESCOが2024年に公表した学習者向けのAI教育の枠組みでは、技術的な知識だけでなく、人間中心の考え方、倫理、AIの出力を吟味する判断力などが重視されています。目指しているのは、答えを受け取るだけでなく、責任を持ってAIを使い、創造する人です。

たとえば、AIに文章を書いてもらうとしても、誰に、何を伝えたいのか。できあがった文章は、本当に自分の意図に合っているのか。その判断は残ります。

つくる方法が増えるほど、「何を、誰のためにつくりたいのか」が問われるのではないでしょうか。

知識がいらなくなるわけではありません。答えのおかしさに気づくにも、自分の知識や経験が手がかりになります。大切なのは、答えを手に入れることだけでなく、それを自分で考え直せることです。

「選ぶ・試す・確かめる」を、幼児期の毎日の中で

モンテッソーリ教育では、大人が発達に合った環境を整え、活動の仕方を伝えたうえで、子ども自身が選び、自分のペースで取り組むことを大切にします。実際の生活や具体物を通した経験が、その中心にあります。(参考:AMI「Montessori 3–6」

たとえば、花を生けたいと思い、道具を運び、水を用意する。それは「自分の関心を、行動に移す」経験です。

水を注いでこぼしたら、拭いて、もう一度試す。大人がすぐに代わって完成させるのではなく、必要な援助を受けながら、自分で結果を確かめる余地を残します。

そして、みんなが使う机を拭いたり、部屋に花を飾ったりすることは、自分の行動が誰かの暮らしにつながる経験にもなります。自分で取り組むことと、周囲の人や共有する環境を大切にすることは、モンテッソーリの教室の中で結びついています。(参考:AMI「Montessori Environments」

自分で目的を持つ。結果を確かめる。やり方を変える。周囲の人のことも考える。

幼児の活動と将来のAI利用は、同じ課題ではありません。それでも、その根底にある学びの姿勢には、重なるものがあるのです。

AMIでも、AI時代の「学び方」が論じられている

この接点は、AMI(国際モンテッソーリ協会)の公式発信でも取り上げられています。

公式連載「Training Voices」の記事「Learning How to Learn」で、AMI 3–6トレーナーのEsther Ho氏は、AIで答えが容易に得られる時代だからこそ、自分で目標を持ち、結果を確かめ、取り組み方を調整する「自己調整学習」の重要性を論じています。そして、その過程をモンテッソーリの日常生活の活動や教具と結びつけています。

これは、モンテッソーリ教育を受けると将来AIを上手に使える、と直接証明した研究ではありません。

注目したいのは、新しい時代に必要とされる力を、これまでの幼児教育の中に見いだす議論が、すでに始まっていることです。

AI時代への準備は、幼児にAIの操作を教えることだけではないのです。

AIの進歩が速いからこそ、子どもの成長を急がせない

日々AIに触れていると、ここ一、二か月の変化にも驚かされます。この先の一年で、働くこと、学ぶこと、つくることが、さらに大きく変わるのではないか。人類史の大きな転換点に立っているようにも感じます。

しかし、社会が急速に変わることと、子どもにも急いで新しい技術を使わせることは、別の話です。

子どもを守る動きも、すでに始まっています。UNICEFは2026年6月、AIチャットボットや、人との親しい関係を模倣するAIコンパニオンについて、子どもの権利への影響と規制上の課題を整理し、問題が起きる前に保護する必要性を示しました。

同年9月10日には、米国カリフォルニア州で、子どものAIコンパニオン利用に関して、保護者向け管理機能や独立した安全性監査などを求める法律が成立しています。(出典:カリフォルニア州知事室の発表

世界的な全面禁止ではありませんが、今後、年齢や用途によって制限が強まる可能性もあるでしょう。一方で、安全な設計や研究が進めば、そのあり方が変わることも考えられます。

だからこそ、幼児教育を「どれだけ早くAIに慣れさせるか」という競争にしたくないのです。

AIを早く使わせることと、AIを使いこなす人を育てることは、同じではありません。

自分で選ぶ。手を動かす。うまくいかないことに出会う。考え直す。人と関わる。

便利な道具で結果を手に入れても、その過程を経験したことにはなりません。幼児期には、その子自身が考え、感じ、判断する時間を、十分に残しておきたいと思います。

これからの幼児教育として、モンテッソーリに光が当たる

モンテッソーリ教育の最初の「子どもの家」が開かれたのは1907年。AIの登場を予測してつくられた教育ではありません。

それなのに、AI時代に求められる主体性や判断力、試行錯誤する姿勢と、その教育の根底にある考え方が、驚くほど重なっています。

だからこそ、AI時代を見据えて幼児教育を選ぶとき、モンテッソーリ教育は、これまで以上に注目されるようになるのではないでしょうか。

最新の技術を、いち早く子どもに使わせる教育だからではありません。その技術を使って何をしたいのかを、自分で考え、選び、判断する人の土台を育てようとしているからです。

100年以上前から大切にしてきたことが、未来に向けた教育の選択肢として、新しい意味を持つ。

私は、AI時代の到来が、モンテッソーリ教育の価値にあらためて光を当てる、大きなきっかけになると考えています。

RECENT ENTRY 一覧

2026.09.18カテゴリ / コラム AMIトレーナーの言葉

自然遊びを「イベント」にしない。 水やり・収穫を、子どもの毎日に

2026.09.17カテゴリ / コラム AMIトレーナーの言葉

「できない」とき、すぐに手伝わないで – 毎日の暮らしで育つ「実行機能」とは?

2026.09.17カテゴリ / コラム 赤ちゃんの発達と子育て

赤ちゃんにコップはまだ早い?「自分で飲む」を育てる、小さなコップの始め方

2026.09.16カテゴリ / コラム 漫画で学ぶモンテッソーリ教育

漫画で学ぶモンテッソーリ教育|第6話 「くまちゃん、まだ。」

2026.09.16カテゴリ / コラム 世界のモンテッソーリ研究

AI時代の到来が、モンテッソーリ教育の価値にあらためて光を当てる – これから求められる力と、100年以上前から育ててきた力が驚くほど重なっている

2026.09.15カテゴリ / コラム 漫画で学ぶモンテッソーリ教育

漫画で学ぶモンテッソーリ教育|第5話 「ボタンと、ためいき」