カテゴリ / コラム ようこそわが家へ~モンテッソーリ×里親活動の記録~
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<第8話> はじめまして、里子ちゃん 戸惑いと反発と喜びとが交錯する初対面

画像はイメージです

 

*以後、里子ちゃんをAちゃんと表記します。

さぁいよいよAちゃんとご対面…

の前に、担当職員さんから、Aちゃんについての情報を伺いました。

生まれてから乳児院に来るまでの経緯、
乳児院での成長の様子、
健康状態、
運動や言葉、情緒の発達について、
食べ物の好き嫌い、
好きな遊び、などなど。

そのきめ細やかな内容からも、お話される口ぶりからも
この子は担当職員さんをはじめ、
ここの大人の方々に愛されて育ってきたんだな
ということが伝わってきて、なんだか安心しました。

 

そして今度は私たちの顔写真を撮りました。
その写真をお部屋の、職員さんたちの写真の所に並べて貼って
「Aちゃんのお父さんとお母さんだよ」
とあらかじめ紹介してくれるとのこと。

モンテッソーリの絵カードみたい!
というのが私の感想。
(もうこのあたりは職業病です。笑)

この日は、遠巻きに「あの子です」と教えてもらい
それで終わりでした。

 

後日、写真を見せたときのAちゃんの反応はというと、

「まずAちゃんだけに写真を見せて、
『Aちゃんのお父さんとお母さんだよ
 今度会いに来るんだよ』
って伝えたら、

『Aちゃんの、おとうた―――――――――ん!!!』

と部屋中を駆け回って叫んだんです。
嬉しかったみたいですよ。
なぜかお父さんなんですけどね。笑」(担当さん談)

 

…か、かわいい!!!

何だその反応…可愛いじゃないか…ちくしょう…
できればお母さんも呼んでくれ…笑

 

「でも、嬉しい気持ちは確実にあるんですけど、
 初対面の大人への反発や
 何が自分に起こるんだろう?という不安もあるので
 実際会ったときには違う反応を見せるかもしれません」

 

ほほう。
どんな反応なんだろう?

と初めてお部屋にお邪魔すると…

 

ガシャーン!ガシャガシャーン!

 

むくれ顔でおもちゃを手あたり次第投げていました。笑

 

「この、嬉しいけどドキドキする気持ちをどうしたらいいんだー!
 ということだと思います(苦笑)」

と担当さんがアテレコしてくれました。

「そうだよね~。
いきなり知らない人が、お父さんだよお母さんだよって来たら、
びっくりするよね。
はじめましてAちゃん。お父さんとお母さんです。
よろしくお願いします」

と思ったままを言葉に出しながら
大人に会ったときと同じように丁寧にあいさつしました。

 

どんなに赤ちゃんでも、まだ言葉が分からない子ども相手でも
決して子ども扱いせず、
ひとりの人として尊重しています という気持ちで
はじめましてのご挨拶をする
こちらのそういう気持ちや態度を感じ取ってもらえて、
結果としていい関係を築く手助けとなることが多い

 

というのを、モンテッソーリの子どものいえで教えてもらって以来
ずっと実践していて、本当にそうだなぁと感じています。

より具体的には、
「私はあなたにとって害のない人間ですよ
 安心して大丈夫ですよ」
という気持ちで、その雰囲気をもって
(字面だけ見ると詐欺師みたいですが…笑)

距離を詰めすぎないよう、且つ離れすぎないよう
ほどよい距離感で接するようにしました。

 

確かに大人でも、初対面の人に最初からぐいぐい来られたら
「近っ 
 最初から距離つめすぎで、怖っ
 ひくわ~」
ってなることありますよね。

少なくとも私はこういう人は苦手なので(笑)
「あら~かわいい~♡」
と急に顔を近づけられたりベタベタ触られたりして
固まったり泣いたりする子どもの気持ちはよく分かります。

 

なので、まずはお部屋の一員としてなじめるよう、
他の子どもたちとも遊びながら
Aちゃんに受け入れてもらえるように努めました。

余談ですが
お目当て以外の子どもたちの方が寄ってきてくれます(笑)
これは交流あるあるだそうです。
子どもの察する能力、あなどれない(笑)
そしてみんなそれぞれ可愛いんだ…ほんとに…

 

そうやっていろんな子どもたちと楽しく遊んでいるうちに
Aちゃん自身も
(あ、この人たちはどうやら害がなさそうだな)
と感じてくれたのか、少しずつ、
ほんとに少しずつですが寄ってきてくれるようになりました。

 

最初は1,2時間の交流、
ここから少しずつ時間を伸ばし
週2~3回のペースで私たちが乳児院にお邪魔して、
時間をかけて関係を作っていきます。(続く)


<第1話> 里親になろう、そう思ってから実際に動き始めるまで
<第2話> いざ、里親研修へ 心に残る愛着障害の話
<第3話> ドキドキの児童養護施設実習 の中で思い出される発達の4段階
<第4話> このモヤモヤは何?…里親家族のロールモデルを求めて
<第5話> 里親登録後の実習の方が長いゾ! 乳児院の子どもたちとの出会い
<第6話> 乳児院の子どもたちを通して見えてきた実親さんの背景と、里親側の気持ちの変化
<第7話> いざ養育委託の話が来たら、ただただ嬉しいだけだったという話
<第8話> はじめまして、里子ちゃん 戸惑いと反発と喜びとが交錯する初対面 
<第9話> 里子ちゃんの気持ちをぜんぶ言葉にすることで進んだ交流 
<第10話> 私の持ち物を通して交流が進んだ話 
<第11話> 初めてのおうち体験 魅力的なのはおもちゃじゃなかった 日常生活との出会い 
<第12話> 一般家庭は危険がいっぱい 安全確保とモンテッソーリの考え方とのせめぎ合い 
<第13話> おうちは楽しい だけじゃない。不安と緊張で戸惑うことも 
<第14話> まだおうちに来てもいないのに幼稚園選び? 慌ただしくもなんだか楽しい
<第15話> 初めてのお泊まりで、初めて大泣きした夜のこと
<第16話> 甘え全開で嬉しいけど身体が(涙) でもとても大事な「甘え」の意味
<第17話> 今は何が最優先? 難しすぎる育児と家事のバランスゲーム
<第18話> 2回目のお泊まり お迎え時に聞いた初めての言葉
<第19話> 泣く理由が180°変わった3回目のお泊まり 愛着関係の移り変わり
<第20話> お客さんへの反応で垣間見えた、Aちゃんにとってのおうちの意味
<第21話> 交流最後の振り返り Aちゃんをおうちに迎え入れるためのミーティング(第1シーズン最終回)

国際モンテッソーリ教師、保育士/シロクマ   
30歳過ぎてからモンテッソーリに出会い、その考え方に惚れこむあまり国際資格を取る。その後、モンテッソーリ教師・保育士としてこどものいえや保育園で約10年働く。途中、結婚して子どもに恵まれなかったことがきっかけで里親制度に興味を持ち、里親として子どもの養育に関わりたいと思い、今に至る。現在2歳半の里子ちゃんの長期養育を目指して交流中。子どものためのモンテッソーリ、子どものための里親制度がより多くの人に知ってもらえたらという思いで執筆中。
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