カテゴリ / コラム ようこそわが家へ~モンテッソーリ×里親活動の記録~
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<第13話> おうちは楽しい だけじゃない。不安と緊張で戸惑うことも

最初はドキドキしながらも、
初めての日帰りおうち体験を
楽しんでいたAちゃん。

慣れてくると次第に、
楽しいだけではなくなってきました。

あ~それは触らないで
そこは登っちゃダメ!
など、禁止のお願いが増えてきました。

 

もっとモンテッソーリ教師らしく
ポジティブな声かけができればいいのに 
と我ながら思うのですが
もともとそこは、
私が努力して努力して
なんとか矯正していた部分なので
とっさのときは素が出てしまいます。

 

そこに加え、
相手はおうち生活のルールが
何もわからない子ども。
次から次へと、
本当に矢継ぎ早に
こちらが困ることをするので
とっさに出るのがネガティブな声かけに…

おうちの中って
意識していないだけで、
細かい暗黙のルールが
めちゃくちゃたくさんあるんだな
と感じています。

 

さらに
時期的に雨の日が続いたこともあり、
おうちから出られない時間が続き、
こちらも少しずつネタ切れになってきました。
(早い)

 

そうなると、
「帰る」と言い出すようになりました。

 

特にお昼寝前の眠くなった時や
お腹がすいてきたときに
「帰る」とぐずることが増えてきました。

 

今でこそ冷静に分析してつづっていますが
これもAちゃんがおうちにいない時間に
ぼんやり振り返ってみて
(あぁそういえば、ぐずるのは
眠い時とおなかが空く時間帯が多いな)
と初めて分かるという…

Aちゃんと一緒にいるときは
落ち着いて観察したり分析したり、
なんてとてもできず、
ただただ目の前のことに必死に対処するのみ。

 

「帰りたいかぁ、そうだよね。
 お友達も○○さん(担当さん)もいるもんね」

と共感しながら、
こちらも悲しくなってきました。

こんな調子で、この子が
「私たちと一緒にいたい」
と心から思える日々は
果たして来るんだろうか…

それを月1回の振り返り※の時間に
相談してみました。
(※私たち里親と、児童相談所の職員さん、乳児院の職員さんら複数人で、Aちゃんとの交流の振り返りをして、次回の交流にフィードバックする時間が月1回設けられています)

 

「Aちゃんに帰るって言われると
 こちらも困ってしまって
 何となく聞いて流しちゃうんですけど
そういうときって
具体的にどうしたらいいですか」

 

そのときの担当さんのアドバイスは、

 

「そういうときこそ、
 まずはしっかり共感してあげて下さい。
『そうだよね、帰りたいよね』と。
 
 そのうえで
『でもお父さんとお母さんは
 Aちゃんと一緒にいたいんだよ』と
大人側の愛情もしっかり言葉にして
伝えてあげて下さい」

 

というものでした。

 

…そうだった。
私これ、保育士として働いているときは
普通にやってたのに。

なのに家族という立場になったら、
ただただ困るだけになっちゃってた。

子どもがいる親御さんの気持ちって
もしかしたら、こんな感じなのかな?

と、仕事で子どもと向き合うときとの違いを
なんとなく感じた瞬間でした。

 

担「実は、Aちゃんは今、
乳児院の生活の中で、
情緒不安定になっています。

今までできていたことも
『やって』と甘えて大人にしてもらう、
私が帰るときに大泣きする、
抱っこ抱っこで、ご飯も膝の上で食べる
ということが増えてきています。

それは交流が進む上では、
子どもにとっては自然なことなので
こちらとしては
『それでいいんだよ。
 いっぱい泣いていいし、甘えていいんだよ
と伝えています。

今後は、そういう気持ちや行動を、
私たちだけじゃなく
里親さんにも出していけるといいなと
思っています」

 

それを聞いて、

あぁまだまだAちゃんは
私たちの前では
いろんな気持ちを出せていないんだな

と、寂しいような怖いような
何とも言えない気持ちになりました。

 

ただ「帰る」と少しぐずっただけで困っていて
この先どうなるんだろう
大丈夫かな

なるようにしかならないんだろうけど
ドキドキするな

ってことは、
Aちゃんはもっとドキドキしてるんだろうな
お互い大丈夫かな

交流が進んでほしいけど、
でも進んでほしくないような

 

というモヤモヤした気持ちのまま
いよいよ初のお泊まりを迎えます。

お泊まりの楽しいイメージ とはきっとわけが違うのです


<第1話> 里親になろう、そう思ってから実際に動き始めるまで
<第2話> いざ、里親研修へ 心に残る愛着障害の話
<第3話> ドキドキの児童養護施設実習 の中で思い出される発達の4段階
<第4話> このモヤモヤは何?…里親家族のロールモデルを求めて
<第5話> 里親登録後の実習の方が長いゾ! 乳児院の子どもたちとの出会い
<第6話> 乳児院の子どもたちを通して見えてきた実親さんの背景と、里親側の気持ちの変化
<第7話> いざ養育委託の話が来たら、ただただ嬉しいだけだったという話
<第8話> はじめまして、里子ちゃん 戸惑いと反発と喜びとが交錯する初対面 
<第9話> 里子ちゃんの気持ちをぜんぶ言葉にすることで進んだ交流 
<第10話> 私の持ち物を通して交流が進んだ話 
<第11話> 初めてのおうち体験 魅力的なのはおもちゃじゃなかった 日常生活との出会い
<第12話> 一般家庭は危険がいっぱい 安全確保とモンテッソーリの考え方とのせめぎ合い 
<第13話> おうちは楽しい だけじゃない。不安と緊張で戸惑うことも 
<第14話> まだおうちに来てもいないのに幼稚園選び? 慌ただしくもなんだか楽しい
<第15話> 初めてのお泊まりで、初めて大泣きした夜のこと
<第16話> 甘え全開で嬉しいけど身体が(涙) でもとても大事な「甘え」の意味
<第17話> 今は何が最優先? 難しすぎる育児と家事のバランスゲーム
<第18話> 2回目のお泊まり お迎え時に聞いた初めての言葉
<第19話> 泣く理由が180°変わった3回目のお泊まり 愛着関係の移り変わり
<第20話> お客さんへの反応で垣間見えた、Aちゃんにとってのおうちの意味
<第21話> 交流最後の振り返り Aちゃんをおうちに迎え入れるためのミーティング(第1シーズン最終回)

国際モンテッソーリ教師、保育士/シロクマ   
30歳過ぎてからモンテッソーリに出会い、その考え方に惚れこむあまり国際資格を取る。その後、モンテッソーリ教師・保育士としてこどものいえや保育園で約10年働く。途中、結婚して子どもに恵まれなかったことがきっかけで里親制度に興味を持ち、里親として子どもの養育に関わりたいと思い、今に至る。現在2歳半の里子ちゃんの長期養育を目指して交流中。子どものためのモンテッソーリ、子どものための里親制度がより多くの人に知ってもらえたらという思いで執筆中。
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