カテゴリ / コラム ようこそわが家へ~モンテッソーリ×里親活動の記録~
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<第12話> 一般家庭は危険がいっぱい 安全確保とモンテッソーリの考え方とのせめぎ合い

小さな子にとっては、階段自体がおもちゃ。(画像はイメージです)

 

一般的なおうちは
大人が使いやすいような造りになっている
≒子どものためのつくりではない 

ということを、
Aちゃんとのおうち交流で
あらためて思い知ることになります。

 

例えばドアひとつとっても、

ここに指挟んだら
下手したら指切断だな!
(カミナリたくみくん風に読んでください)

とか

お風呂場に水張っておいたら
頭から落ちてそのまま溺れるな!

とか

洗濯機の蓋、開けっ放しにしておいたら
頭から落ちそうだな!

とか

階段、手すりもないし、
今のAちゃんの歩行能力だと転がり落ちるな!

とか

ベランダ、室外機の上にのぼったら
そのまま柵超えて落下だな!

と、次から次へとツッコミどころ
もとい
危ない所が見つかります。

 

Aちゃんがおうちに来る前に、
乳児院の里親支援専門員さんが我が家を訪れて
危険箇所の確認と、
危険を回避する方法を一緒に考えて下さいました。
それをもとに、ひとつずつ対策を取っていきました。

包丁や刃物、お掃除の薬品など
危険なものは手の届かないところへ置き
ドアストッパー、窓の補助ロック、階段の滑り止めシート、階段のゲート、収納庫付き室内機カバーなど、思いつくものを全て導入。

 

実は、
モンテッソーリの考え方と
現実とのギャップで少し葛藤したのが、
この安全確保の部分です。

例えば
「子どもひとりで自由に行き来できないように
 階段にゲートをつける」
ことを提案された時、

 

え~、もう2歳過ぎてるのに? 
ちょっと過保護じゃない? 
すぐ要らなくなるだろうし…

 

と正直感じてしまいました。

 

モンテッソーリの考え方では

子どもにはできるだけ
自由に動ける環境を与えましょう
それはおうちの中でも例外ではなく
子どもを閉じ込めるゲートや柵は
使わない方が望ましいですよ

というのが定石で
私もそれに納得していたので
いざ、その正反対のことを提案されてしまうと
(えぇ~…)という気持ちになってしまいました。

 

でも、やっぱり一番大事なのは子どもの命と
一生残ってしまうような大ケガをさせないこと。

プラス、目の前の子どもを観察して
その子に必要な環境を整えること。

 

実際のところ、Aちゃんはお座りも歩き始めも定型発達の子どもよりは半年以上遅く、この時点で2歳半を過ぎていたものの、歩行が安定していませんでした。何もない平面でいきなり転んだり、ちょっと方向転換しようとしただけでよろけて尻もちをついてしまったりします。

 

なので、子どもの現状と優先順位とを総合して、
ここは今まで面倒を見て下さっていた担当さんや
経験豊富な里親支援員さんの意見を聞こう
と思い直しました。

 

もうひとつ特筆すべきは、

立場としては
「お預かりしている他所のお子さん」
なので、保育園レベルとはいかないまでも
ある程度の安全対策がおうちでも求められる

ということを、この時知りました。

 

あとは単純に
(うわ、安全対策だけでお金めっちゃかかる…)
と及び腰の部分も正直、ありました。

が、これも、命や健康はお金に変えられるものではないなと思い直し、ちょっと値が張る物も奮発して購入した次第です。現実、お財布は泣いてますが。ハハ…(泣き笑い)

 

余談ですが
準備費が支給されると後から聞いて
少し安心しました。
全額ではなく定められた一定額ですが
それでもありがたいことです。

これも自治体によって違うのかもしれませんが
金銭面の手厚さは
NPO団体などを通した特別養子縁組とは
異なるところのひとつです。
これはもっと知られてもいい所かなと感じています。

 

補助金が関わってくるからこそ、研修がしっかりしているという面もあると思うのです。里親ビジネスという悲しい言葉が存在するのは、この制度を利用してよからぬことを考える大人も少なからずいるという表れだと思っています(ほんとやめて)。それを防ぐための研修。

 

話を元に戻して
児童相談所や乳児院の職員さんのお墨付きの元、
安全性を確保した上で
おうち交流を進めていきました。

 

とは言え、
どこで何をやらかすのか分からないのが子ども。

ましてや、おうちが初めてとなると
何をどこまでやっていいのか
全部試しながら、
こちらの反応を見ながらやっている感じなので
だんだんこちらも
「それはしないよ」
「それは触らないでね」
という禁止のお願いが増えてきました。
…物理的な対策の限界…むぅ…

 

このあたりから
Aちゃんにも、里親の私たちにも、
楽しいだけじゃない、
ストレスも少しずつ溜まり始めます。(続く)


<第1話> 里親になろう、そう思ってから実際に動き始めるまで
<第2話> いざ、里親研修へ 心に残る愛着障害の話
<第3話> ドキドキの児童養護施設実習 の中で思い出される発達の4段階
<第4話> このモヤモヤは何?…里親家族のロールモデルを求めて
<第5話> 里親登録後の実習の方が長いゾ! 乳児院の子どもたちとの出会い
<第6話> 乳児院の子どもたちを通して見えてきた実親さんの背景と、里親側の気持ちの変化
<第7話> いざ養育委託の話が来たら、ただただ嬉しいだけだったという話
<第8話> はじめまして、里子ちゃん 戸惑いと反発と喜びとが交錯する初対面 
<第9話> 里子ちゃんの気持ちをぜんぶ言葉にすることで進んだ交流 
<第10話> 私の持ち物を通して交流が進んだ話 
<第11話> 初めてのおうち体験 魅力的なのはおもちゃじゃなかった 日常生活との出会い
<第12話> 一般家庭は危険がいっぱい 安全確保とモンテッソーリの考え方とのせめぎ合い 
<第13話> おうちは楽しい だけじゃない。不安と緊張で戸惑うことも 
<第14話> まだおうちに来てもいないのに幼稚園選び? 慌ただしくもなんだか楽しい
<第15話> 初めてのお泊まりで、初めて大泣きした夜のこと
<第16話> 甘え全開で嬉しいけど身体が(涙) でもとても大事な「甘え」の意味
<第17話> 今は何が最優先? 難しすぎる育児と家事のバランスゲーム
<第18話> 2回目のお泊まり お迎え時に聞いた初めての言葉
<第19話> 泣く理由が180°変わった3回目のお泊まり 愛着関係の移り変わり
<第20話> お客さんへの反応で垣間見えた、Aちゃんにとってのおうちの意味
<第21話> 交流最後の振り返り Aちゃんをおうちに迎え入れるためのミーティング(第1シーズン最終回)

国際モンテッソーリ教師、保育士/シロクマ   
30歳過ぎてからモンテッソーリに出会い、その考え方に惚れこむあまり国際資格を取る。その後、モンテッソーリ教師・保育士としてこどものいえや保育園で約10年働く。途中、結婚して子どもに恵まれなかったことがきっかけで里親制度に興味を持ち、里親として子どもの養育に関わりたいと思い、今に至る。現在2歳半の里子ちゃんの長期養育を目指して交流中。子どものためのモンテッソーリ、子どものための里親制度がより多くの人に知ってもらえたらという思いで執筆中。
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