カテゴリ / コラム ようこそわが家へ~モンテッソーリ×里親活動の記録~
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<第9話> 里子ちゃんの気持ちをぜんぶ言葉にすることで進んだ交流

最初のうちは
Aちゃんのいるお部屋に私たちがお邪魔して
お部屋の子たちとも遊びながら、
少しずつAちゃんだけと遊ぶように
担当さんをはじめとする周りの職員さんたちが
配慮して下さいました。

 

担当さんから

「私とお父さんお母さんが
 いい関係を作ることで
 Aちゃんも安心して
 お父さんお母さんの所に行けるように
 なると思うんです。
 だから
 最初は私の方ばかり来るかもしれませんが
 あまり気にせず、
 私と自然におしゃべりを楽しんでください」

と仰っていただき、あぁなんて心強い…
と感じました。

 

実際、担当さんはとてもユーモア溢れる方で
何かAちゃんが困ったことをする度に

「ほんとはうれしいんだけど
 でも何かモヤモヤするんだ!
 だからこうしちゃうんだ!」

とアテレコしてこちらとお話して下さるので、
私も真似して

「そっか、Aちゃんドキドキしちゃうんだね。
だってお父さんとお母さん
たまにしか来ないもんね
お父さんとお母さんは
Aちゃんに会えてうれしいんだよ」

などとアテレコしつつ、
こちらの気持ちも伝えつつ、
担当さんとの会話を楽しんでいました。

Aちゃんが嫌がるそぶりを見せたときも

「そうだよね、イヤだよね
 じゃあお母さんはここで見てるね
 ○○(担当)さんと一緒にやろうね」

などと、
Aちゃんの気持ちはこうかな?という予想で
ずっと口に出していました。

 

小さな子どもの行動にアテレコするのは
保育士時代からずっとやっており
半分クセみたいになっていました。

もしかしたらモンテッソーリ教師としては
うるさい人だったかもしれません。汗

ただ今回に限っては
これがよかったと、
後で担当さんから仰って頂きました。

「お母さんがAちゃんの気持ちを
 全部受け止めてくれて、
 ぜんぶ言葉にしてくれていたのが
 Aちゃんが
『あ、この人私のこと分かってくれてる』と
 心を開くきっかけになったと思います」

 

この時、
気持ちを言葉にして伝えたら安心する
というのは
どの子どもにも共通なんだな
と感じました。

 

保育園でも、乳児院でも、おうちでも
どこにいる子どもでも、
どんな時代の子どもでも
周りの大人が気持ちを代弁してくれたら
分かってくれていると感じて安心して、
少し気持ちが整理されて、落ち着く。

 

このとき、Aちゃんは
おそらく言語の爆発期「前」の段階。

言葉のインプットはだいぶ進んで
意味も分かっているけど
アウトプット、
言いたいことを言葉で伝えるのは
まだ難しい という段階にいました。

だからこそ
周りの大人がかわりに言葉にしてくれるのは
子ども本人にとっても嬉しいことですし
モヤモヤがスッキリしたんじゃないかなと思うのです。

そうやって大人の言葉を通して
こういうときはこういう言い方をするのか
ということを無意識にも意識的にも学んでいる時期。

2歳台はまさにその時期だと思います。
だからアテレコが功を奏したんだと。

 

こういうことがあるたびに

モンテッソーリを通して
子どもの発達のことを知っていてよかった

これまでの現場での
子どもたちとの関わりが、
今、Aちゃんと関係を築くときにも
生かされていて
ほんとにありがたい

と感じずにはいられないのです。

抱っこを求めてくれると嬉しいものです♡ (画像はイメージです)

 

1~2ヶ月経った頃には
担当さんだけとつないでいた手をこちらにも伸ばしてくれたり、
抱っこさせてくれるようになったりして、
少しずつ距離が縮まっていきました。(続く)


<第1話> 里親になろう、そう思ってから実際に動き始めるまで
<第2話> いざ、里親研修へ 心に残る愛着障害の話
<第3話> ドキドキの児童養護施設実習 の中で思い出される発達の4段階
<第4話> このモヤモヤは何?…里親家族のロールモデルを求めて
<第5話> 里親登録後の実習の方が長いゾ! 乳児院の子どもたちとの出会い
<第6話> 乳児院の子どもたちを通して見えてきた実親さんの背景と、里親側の気持ちの変化
<第7話> いざ養育委託の話が来たら、ただただ嬉しいだけだったという話
<第8話> はじめまして、里子ちゃん 戸惑いと反発と喜びとが交錯する初対面 
<第9話> 里子ちゃんの気持ちをぜんぶ言葉にすることで進んだ交流 
<第10話> 私の持ち物を通して交流が進んだ話 
<第11話> 初めてのおうち体験 魅力的なのはおもちゃじゃなかった 日常生活との出会い 
<第12話> 一般家庭は危険がいっぱい 安全確保とモンテッソーリの考え方とのせめぎ合い 
<第13話> おうちは楽しい だけじゃない。不安と緊張で戸惑うことも 
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<第18話> 2回目のお泊まり お迎え時に聞いた初めての言葉
<第19話> 泣く理由が180°変わった3回目のお泊まり 愛着関係の移り変わり
<第20話> お客さんへの反応で垣間見えた、Aちゃんにとってのおうちの意味
<第21話> 交流最後の振り返り Aちゃんをおうちに迎え入れるためのミーティング(第1シーズン最終回)

国際モンテッソーリ教師、保育士/シロクマ   
30歳過ぎてからモンテッソーリに出会い、その考え方に惚れこむあまり国際資格を取る。その後、モンテッソーリ教師・保育士としてこどものいえや保育園で約10年働く。途中、結婚して子どもに恵まれなかったことがきっかけで里親制度に興味を持ち、里親として子どもの養育に関わりたいと思い、今に至る。現在2歳半の里子ちゃんの長期養育を目指して交流中。子どものためのモンテッソーリ、子どものための里親制度がより多くの人に知ってもらえたらという思いで執筆中。
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