カテゴリ / コラム モンテッソーリ教育に影響を受けた著名人
一覧

AI時代、幼児期に本当に育てたい力とは? ― Googleをつくった二人が語った「モンテッソーリ教育」から考える

AIによって、社会は大きく変わろうとしています。

文章を書く。絵をつくる。プログラムを書く。翻訳する。調べる。分析する。

これまで人間が時間をかけて行ってきた仕事の一部を、AIが担う時代になりました。

そんな時代に、幼児教育について考えるとき、ひとつの興味深い事実があります。

Googleを創業したLarry Page(ラリー・ペイジ)Sergey Brin(セルゲイ・ブリン)は、幼少期にモンテッソーリ教育を受けていました。

でも、ここで少し考えてみたいことがあります。

彼らがモンテッソーリ教育を受けていた幼児期には、Googleもスマートフォンも生成AIもありませんでした。

それでも二人は、後から登場したデジタル社会に適応しただけではなく、世界の情報との関わり方そのものを変えるサービスをつくる側になりました。

では、これからAIによって社会が大きく変化していく時代に、子どもたちに本当に必要な力とは何なのでしょうか。

Googleをつくった二人が語ったモンテッソーリ教育

2004年、Barbara Waltersによるインタビューで、Google創業者のLarry PageとSergey Brinは、自分たちの成功について語りました。

その中で二人は、幼少期にモンテッソーリスクールに通っていたことに触れています。

Pageは、モンテッソーリ教育について、単に決められたことを覚えるのではなく、自分から動くこと、世の中で起きていることに疑問を持つこと、少し違った方法を試してみることにつながったという趣旨の発言をしています。

このインタビュー内容は、Association Montessori Internationale(AMI)の公式記事「The Business of Montessori」でも紹介されています。

未来の技術を幼児期に教えることはできない

現在、多くの人が「AI時代に備えるためには、子どもの頃からデジタルに触れさせた方がよいのでは」と考えています。

プログラミング。
タブレット。
パソコン。
生成AI。

もちろん、これからの社会でデジタル技術を理解することは大切です。

しかし、ここで考えたいことがあります。

未来に必要になる技術を、今の大人がすべて予測することはできません。

Googleがまだ存在しなかった時代に幼児だった二人へ、Googleの使い方を教えることはできませんでした。

同じように、現在の幼児たちが大人になるころ、どんなAIが社会の中心になっているのかは誰にも分かりません。

だからこそ、「今ある最新技術を早く覚えること」と「未来の社会に適応できること」は、必ずしも同じではないのかもしれません。

モンテッソーリ教育が幼児期に育てるもの

幼児期のモンテッソーリ環境を見ると、最新技術とは遠い世界に見えるかもしれません。

水を注ぐ。
豆を移す。
机を拭く。
ボタンを留める。
物を順番に並べる。
文字をなぞる。
数を数える。

そして、子ども自身が活動を選びます。

誰かから答えを与えられるのではなく、自分でやってみる。
うまくいかなければ、もう一度試す。
興味を持ったことは、何度も繰り返す。

この経験は、一見するとデジタル社会とは関係がないように見えます。

しかし、未知の問題に出会ったとき、自分で考え、試し、修正していく力という意味では、これからの時代に必要になる力と重なる部分があります。

モンテッソーリ教育と創造性を調べた研究

2019年、Denervaud氏らは、スイスのモンテッソーリ校と従来型の学校に通う子どもたちを比較する研究を発表しました。

この研究では、201人の子どもを対象に、学業成績だけでなく、実行機能、創造性、そして学校生活の中で子どもがどのように感じ、過ごしているかについても調べられました。

結果として、モンテッソーリ校の子どもたちは、従来型の学校の子どもたちより創造性の課題で高い結果を示しました。

ただし、ここで注意が必要です。

「モンテッソーリ教育を受ければ、将来AI社会で成功する」と証明した研究ではありません。

研究から分かるのは、モンテッソーリ教育の特徴である、自分で活動を選ぶこと、試行錯誤すること、主体的に取り組むことなどが、創造性や一部の認知能力と関連している可能性が示されているということです。

AIを使える子と、AIで何かを生み出す子

これからの子どもたちは、おそらくAIを使う時代を生きていきます。

しかし、大切なのは「AIの操作方法を知っていること」だけではないのではないでしょうか。

AIに質問する前に、何を知りたいのか。
何をつくりたいのか。
どんな問題を解決したいのか。

そこには、人間側の問いが必要です。

そして、AIが出した答えをそのまま受け取るのではなく、

「本当に正しいのだろうか」
「もっと良い方法はないだろうか」
「別の考え方はできないだろうか」

と考える力も必要になります。

これは、モンテッソーリ教育が長年大切にしてきた、子ども自身が観察し、考え、発見していく姿勢と重なります。

変化する社会に適応する力を育てる

もちろん、Larry PageやSergey Brinが成功した理由を、幼少期のモンテッソーリ教育だけで説明することはできません。

家庭環境、その後の教育、出会った人々、時代背景、本人たちの努力など、多くの要素があります。

また現在の研究でも、モンテッソーリ教育を受けた子どもほど、将来AI社会への適応能力が高くなるという直接的な証明はありません。

しかし、ここには考える価値のある問いがあります。

未来の社会に必要な力とは、未来の道具を早く覚えることだけなのでしょうか。

それとも、未知のものに出会ったとき、

自分で観察する。
疑問を持つ。
試してみる。
失敗から学ぶ。
必要なことを自分で学び直す。

そうした力なのではないでしょうか。

まだ存在しない未来に、子どもをどう準備するか

今の4歳の子どもに、2040年代に使われるAIの操作方法を教えることはできません。

どんな仕事が生まれるのか。
どんな技術が当たり前になるのか。
私たちにも分かりません。

だからこそ、幼児期に育てたいのは、特定の時代の技術ではなく、変化する世界に自分から関わっていく力なのかもしれません。

モンテッソーリ教育は、AI時代のためにつくられた教育ではありません。

しかし、100年以上前から、

自分で選ぶ。
自分で考える。
繰り返し挑戦する。
自分で答えを見つける。

という経験を大切にしてきました。

モンテッソーリ教育を受ければ、必ず未来の社会で成功するわけではありません。

でも、変化し続ける世界の中で、自分自身で学び続ける力を育てること。
そこに、これからのAI時代を生きる子どもたちへの大きなヒントがあるのではないでしょうか。

参考資料

Association Montessori Internationale
“The Business of Montessori”
AMI公式記事

Denervaud, S. et al. (2019)
“Beyond executive functions, creativity skills benefit academic outcomes: Insights from Montessori education”
PLOS ONE
論文情報

RECENT ENTRY 一覧

2026.09.20カテゴリ / コラム モンテッソーリ教育に影響を受けた著名人

「なぜ、そうでなければならないの?」 Googleをつくった二人に残ったモンテッソーリ教育

2026.09.20カテゴリ / コラム AMI公式 モンテッソーリQ&A

AMI Q&A|モンテッソーリの教室は、一度つくったら完成? ― 子どもを見ながら“環境を変える”という教師の仕事

2026.09.20カテゴリ / コラム モンテッソーリ教育に影響を受けた著名人

「問題を恐れない」元Cisco CTO パドマスリー・ウォリアーが、モンテッソーリ教育から持ち続けたもの

2026.09.19カテゴリ / コラム AMIトレーナーの言葉

「またこの絵本?」何度も同じ本を読みたがるのはなぜ?「たくさん読む」より大切な0〜3歳の読書環境

2026.09.18カテゴリ / コラム モンテッソーリを伝えた人たち

相良敦子 – モンテッソーリを日本の家庭に届け、子どもの見方を変えた人

2026.09.18カテゴリ / コラム AMIトレーナーの言葉

自然遊びを「イベント」にしない。 水やり・収穫を、子どもの毎日に