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「なぜ、そうでなければならないの?」 Googleをつくった二人に残ったモンテッソーリ教育

Googleの共同創業者、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン。

二人が子どものころ、モンテッソーリ教育を受けていたことは、よく知られています。

けれど、興味深いのは「有名な成功者がモンテッソーリ出身だった」ということだけではありません。

二人は大人になってから、自分たちが受けたモンテッソーリ教育について、何度も振り返っています。

その言葉を追っていくと、共通して出てくるものがあります。

自分のペースで進むこと。
自分の興味を追うこと。
自分から動くこと。
そして、「なぜ、そうでなければならないの?」と問い続けること。

幼いころの教育から何十年もたったあと、二人の中に何が残っていたのでしょうか。

「成功の理由は、ご両親が大学教授だったから?」

2004年、米国のテレビジャーナリスト、バーバラ・ウォルターズがラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンにインタビューしました。

二人とも、研究者や大学教授のいる家庭で育っています。

そこでウォルターズは、そうした家庭環境が二人の成功に大きく影響したのではないかと尋ねました。

ところが、二人が話題にしたのは、幼いころに受けたモンテッソーリ教育でした。

ペイジは、二人ともモンテッソーリ校へ通っていたことに触れ、それが、

命令やルールにただ従うのではなく、自分から動き、世界で起きていることに疑問を持ち、少し違った方法を試す

という姿勢につながったのではないか、と語っています。

AMI(国際モンテッソーリ協会)も2025年の公式記事「The Business of Montessori」で、この発言をあらためて取り上げています。

Googleの検索技術を幼児期の教育が生み出した、という話ではありません。

二人自身が振り返ったとき、成功を支えたものの一つとして思い出したのが、「何を教わったか」より、「どのように学んでいたか」だったことが興味深いのです。

2004年、バーバラ・ウォルターズのインタビューで、モンテッソーリ教育について語るGoogle共同創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン。動画:BergamoSchool/YouTube(英語)

セルゲイ・ブリンが覚えていたのは「自分のペース」

セルゲイ・ブリンは、1979年に家族とともにソビエト連邦からアメリカへ移住しました。

そしてメリーランド州のモンテッソーリ校へ通います。

大人になったブリンは、そのころを振り返って、モンテッソーリ教育がとても好きだったと話しています。

理由として挙げたのは、

「自分のペースで成長できた」

ことでした。

さらに、自分の興味に合った活動を選べる環境が、創造性を育てる助けになったとも振り返っています。

2009年には教育について語る場で、6歳から11歳までモンテッソーリ校に通い、自分の興味を探究できた経験について話しています。

今でこそ世界的なテクノロジー企業をつくった人物として知られていますが、当時の姿については、もっと興味深い証言が残っています。

「特別に頭のいい子だとは思わなかった」

ブリンが通っていた学校の当時の責任者Patty Barshay氏は、後に彼について振り返っています。

セルゲイは特別に社交的な子どもではなかった。

けれど、自分がやろうと決めたことを追いかける自信を持っていたといいます。

好きだったのは、パズル、地図、算数のゲームなど。

そしてBarshay氏は、意外なことも話しています。

「ほかの子より特別に頭がいいとは思わなかった」

というのです。

これは、とても興味深い証言です。

「幼いころから誰が見ても天才だった子が、やがてGoogleをつくった」という物語ではありません。

目の前にある興味を追い、自分のペースで取り組み、自分で決めたことをやってみる。

そうした子どもの姿があったのです。

Googleを理解するには、二人が「モンテッソーリの子」だったことを知る必要がある

そして、この話をさらに面白くする人物がいます。

Googleの初期から二人と仕事をしてきたマリッサ・メイヤーです。

2011年、Googleを長年取材したジャーナリストSteven Levyによる『In the Plex』の取材で、メイヤーは二人について非常に印象的なことを語っています。

「二人がモンテッソーリの子どもだったことを知らなければ、Googleを理解できない」

という趣旨の発言です。

彼女が注目したのは、二人がいつも既存のやり方に対して、

「なぜ、そうでなければならないの?」

と問い続けていたことでした。

権威のある人が言ったから。
昔からそうしているから。
普通の会社はそうだから。

それだけでは、二人にとって十分な理由にはならなかったのでしょう。

メイヤーは、モンテッソーリで育った経験が、そうした二人の問題への向き合い方に深く組み込まれていると見ていました。

モンテッソーリの「自由」は、好き勝手にすることではない

ここで少し注意したいことがあります。

ペイジの「ルールや命令に従わない」という言葉だけを取り出すと、モンテッソーリ教育は「子どもに好きなことだけをさせる教育」のようにも聞こえます。

もちろん、そうではありません。

モンテッソーリの環境には、秩序があり、他者への尊重があり、活動にも使い方があります。

その環境の中で、子ども自身が興味を持ったものを選び、自分で取り組む。

大人から次々に指示されるのではなく、

「これをやってみたい」

という自分の意思から活動が始まります。

だからこそ、ペイジとブリンの言葉で重要なのは、「ルールに従わない」という部分だけではありません。

自分から動く。自分の興味を追う。そして、目の前のものをそのまま受け入れず、自分で考える。

二人がモンテッソーリについて語るとき、繰り返し現れるのはこちらの姿勢なのです。

「なぜ?」から始まった会社

Googleが生まれたきっかけも、既にある検索の仕組みをそのまま受け入れることではありませんでした。

インターネット上に膨大なページがあるとき、本当に重要なページをどう見つければいいのか。

既存の検索方法とは違う考え方はできないか。

スタンフォード大学の大学院で出会った二人が取り組んだ研究が、やがてGoogleへと発展していきました。

もちろん、それを「モンテッソーリ教育のおかげ」と結論づけることはできません。

二人の家庭環境、能力、大学での研究、出会った人々、時代、さまざまな条件が重なってGoogleは生まれています。

それでも、二人自身がモンテッソーリ教育を振り返り、さらに長年一緒に働いた人物までが、

「なぜ、そうでなければならないの?」

と問い続ける二人の姿勢とモンテッソーリを結びつけていたことは、無視できないエピソードです。

Googleは、マリア・モンテッソーリをDoodleで紹介した

2012年8月31日。

Googleのトップページには、マリア・モンテッソーリの生誕142周年を記念したGoogle Doodleが登場しました。

モンテッソーリ教具をモチーフにしたデザインです。

Googleの公式Doodleページでは、従来の一斉的な講義や暗記中心の教育に対して、モンテッソーリが子ども自身による探索や、自分のペースで学ぶことを重視した教育を切り開いたと紹介しています。

さらに面白いことに、このDoodleを担当したSophia Foster-Dimino氏自身も、幼児期から8年生までモンテッソーリ校に通っていました。

彼女は制作にあたってモンテッソーリ教具を調べたことで、数のビーズや三項式などを使っていた子ども時代の記憶がよみがえったと書いています。

ペイジやブリンがDoodleの制作を指示したという意味ではありません。

けれど、二人がつくったGoogleという会社が、世界中の人が目にするトップページでマリア・モンテッソーリを紹介したことも、印象的な出来事です。

大人になって残るものは、教具の名前ではないのかもしれない

子どもがモンテッソーリの教室で過ごしていると、大人はつい、

「今日は何ができたの?」

と成果を見たくなります。

ピンクタワーが完成した。
数字が分かった。
文字が読めるようになった。

もちろん、それも子どもの成長です。

でも、ペイジとブリンが大人になってモンテッソーリを振り返ったとき、語っていたのは、できるようになった教具の名前ではありませんでした。

自分のペースで進めたこと。
自分の興味を追えたこと。
自分から動いたこと。

そして、目の前の「当たり前」に、

「なぜ?」

と問いかけること。

Googleという会社をつくったことを、モンテッソーリ教育の成果として語ることはできません。

けれど、幼いころの教育から何十年もたったあと、本人たちがその経験を思い出し、自分たちの考え方とのつながりを語っている。

そこには、私たちが幼児教育を考えるうえで、とても興味深いものがあります。

幼児期の教育で本当に残るものは、そのとき何ができるようになったかだけではなく、その人が世界をどう見るか、なのかもしれません。

「これは、こういうものだから」

と言われたときに、

「なぜ、そうでなければならないの?」

と、自分でもう一度考えてみる。

ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの言葉を追っていくと、モンテッソーリ教育が目指しているものの一つが、何十年も先の姿として少し見えてくるように思います。

参考資料・出典

Association Montessori Internationale
The Business of Montessori

Moment Magazine
The Story of Sergey Brin

WIRED
Larry Page Wants to Return Google to Its Startup Roots

Google Doodles
Maria Montessori’s 142nd Birthday

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