Season 2 ＜第20話＞ 実親さんの存在をどう話すか

カテゴリ / コラムようこそわが家へ～モンテッソーリ×里親活動の記録～ Season 2

2023.07.27

Season 2 ＜第20話＞実親さんの存在をどう話すか

写真はイメージです。

里親子家庭で避けて通れないのが、実親さんの話です。

どういう経緯で里子に出されたのであれ、実親さんは子どもにとっては自分の大切なルーツです。昔は里親が、里子であることをずっと隠していて、思春期や社会人になってからその関係性をを知ってしまい…という話もあったかもしれませんが、今は基本的に子どもが小さなころから実親さんの存在を伝えるよう推奨されています。これを真実告知と呼びます。（この呼び方は堅くて重い雰囲気があるため私は好きではなく、よって以後使いません。笑）

Aちゃんのケースでも、おうちに来た頃から実親さんの存在は随所で伝えるようにしていました。
最初に頂いた「Aちゃんのお引越しのお話」というフォトブックでは、Aちゃんが乳児院に入った経緯とその後私たちとの交流を経てお引越しに至るまでの成長記録が書かれています。その中に、写真はないですが「ママはAちゃんを育てられなかったけど幸せに育ってほしいと願っていたよ」という文言が入っています。そしてだいぶ大きくなってから初めて、「お父さんとお母さんがAちゃんと仲良くなりたいって遊びに来てくれたよ」と私たち里親の写真が出てきます。産んでくれた「ママ」と「お母さん（私）」は違う人だということは、この時点で伝えていました。意味が分かっても分からなくても、Aちゃんがおうちに来たばかりの頃はこの本が拠り所だったようで、「これ読んで」と何度も一緒に読みました。

その後、ある日たまたま見ていた動画で妊婦さんが出てきて、「あのお母さんのおなかの中に赤ちゃんがいるんだね」と話していた時に「Aちゃんもお母さんのおなかにいたの？」と聞かれました。そのとき、私はいいチャンスだと思い、「お母さんはね、残念なんだけどAちゃんを産めなかったの。○○さんっていう産んでくれたママがいるの。お母さんもAちゃん産みたかったな～」とお話すると、きょとんとした顔をしてそれでその話は終わりました。

今の年齢ではこの程度の伝え方ですが、実親さんの存在を伝えるということは、その後年齢が進んだ時に「なんでママは自分を育てられなかったのか」「どうして自分はママと一緒に住めなかったのか」「何でうちは他の家と違うのか」など、里子自身の疑問・モヤモヤに繋がっていく可能性があります。その時々に、私たちはどういうふうに応えるのがいいのか…前向きにあっけらかんと答えられる内容ばかりではないので、児童相談所の職員さんたちと相談しながら、Aちゃんにとってよりよい選択をしていけたらいいなと今から思います。
でも、揺るぎないのは、「Aちゃんがおうちに来てくれてすごくうれしい」ということ。ここを軸に伝えていけたらいいなと思っています。

Season 2 ＜第１話＞ Aちゃんが我が家に来た日　たくさんのお別れを胸に
 Season 2 ＜第２話＞ Aちゃんの素が出た日　それは想像していた姿とだいぶ違っていて
 Season 2 ＜第３話＞素でぶつかってくるAちゃん、それを受け入れようとする私たち。でも現実は…
Season 2 ＜第４話＞自分も子どもも辛い日々　誰でもいいから助けて欲しい
 Season 2 ＜第５話＞今、必要なのは自己観察だった　嫌いになりかけたモンテッソーリに戻った瞬間
 Season 2 ＜第６話＞私が苦手なこと：他人の手を借りる
 Season 2 ＜第７話＞私一人が頑張らない。そのための環境整備
 Season 2 ＜第８話＞幼稚園の始まり、子どもの成長、私一人の時間！
Season 2 ＜第９話＞実家との交流　新しい親戚、新しい家族
 Season 2 ＜第10話＞ママ友との出会いとつながり　孤育てはあぶない
 Season 2 ＜第11話＞モンテッソーリ的観察で生活が変わってきた話　着替え編
 Season 2 ＜第12話＞モンテッソーリ的観察で生活が変わってきた　食事編
 Season 2 ＜第13話＞モンテッソーリ的観察で生活が変わってきた　歯磨き編
 Season 2 ＜第14話＞モンテッソーリ的観察で生活が変わってきた？　片づけ編
 Season 2 ＜第15話＞モンテッソーリを知っていても全然うまくいかない　声かけ編
 Season 2 ＜第16話＞モンテッソーリ知っててよかった　トイレラーニング編
 Season 2 ＜第17話＞モンテッソーリ知っててよかった？　歌でコミュニケーション編
 Season 2 ＜第18話＞雑談　Aちゃんとバギー
 Season 2 ＜第19話＞結果、愛着形成。　絵本の読み聞かせ
Season 2 ＜第20話＞実親さんの存在をどう話すか
Season 2 ＜第21話＞なぜこんなに〇〇なのか
 Season 2 ＜第22話＞最終的に大切なのは、愛

> Season 1のコラムはこちらからご覧ください。

コラムの感想やシロクマさんへの応援メッセージを↓下記フォームより送って頂けると嬉しいです。

	国際モンテッソーリ教師、保育士／シロクマ 30歳過ぎてからモンテッソーリに出会い、その考え方に惚れこむあまり国際資格を取る。その後、モンテッソーリ教師・保育士としてこどものいえや保育園で約10年働く。途中、結婚して子どもに恵まれなかったことがきっかけで里親制度に興味を持ち、里親として子どもの養育に関わりたいと思い、今に至る。現在2歳半の里子ちゃんの長期養育を目指して交流中。子どものためのモンテッソーリ、子どものための里親制度がより多くの人に知ってもらえたらという思いで執筆中。

国際モンテッソーリ教師、保育士／シロクマ
30歳過ぎてからモンテッソーリに出会い、その考え方に惚れこむあまり国際資格を取る。その後、モンテッソーリ教師・保育士としてこどものいえや保育園で約10年働く。途中、結婚して子どもに恵まれなかったことがきっかけで里親制度に興味を持ち、里親として子どもの養育に関わりたいと思い、今に至る。現在2歳半の里子ちゃんの長期養育を目指して交流中。子どものためのモンテッソーリ、子どものための里親制度がより多くの人に知ってもらえたらという思いで執筆中。