自然遊びを「イベント」にしない。 水やり・収穫を、子どもの毎日に

「子どもには、自然にたくさん触れて育ってほしい」
そう思うと、森へのお出かけや、畑での収穫体験を思い浮かべるかもしれません。でも、次の休日を待たなくても、子どもが自然と関われることはあります。
AMI(国際モンテッソーリ協会)の「Voices of AMI Training」に、AMI 3–6トレーナー、Angela Shang(アンジェラ・シャン)先生による「Let Nature Call Children」という記事があります。
そこで語られているのは、自然をときどき体験する特別な活動にするのではなく、子どもの毎日の暮らしの中に取り戻していくことです。
Association Montessori Internationale「Let Nature Call Children」
「育ててみたい」は、収穫から始まることも

植物を育てるなら、まず種をまいて、水をあげて、芽が出るのを待つ。大人はつい、そんな順番を思い浮かべます。
ところが、シャン先生の記事では、モンテッソーリが子どもの「収穫」への強い関心に注目していたことが紹介されています。
育ったものに出会う経験が、「これはどうやって育ったのだろう」という疑問につながるというのです。
例えば、家族が育てている野菜を、大人と一緒に収穫する。採れたものを洗って、食卓へ運ぶ。
「これ、ここにできたの?」
そんな驚きがあったら、もう一度、育っていた場所を見に戻ってもよいでしょう。「まだ小さいのがあるね」と、次に収穫できそうなものを探してみることもできます。
「育て方を知ってから収穫する」だけでなく、「収穫してみたから、育つことが気になる」という入り口もある。
そう考えると、最初から種まきに興味を示さなくても、急がなくてよいのかもしれません。栽培の仕組みを一度に教えようとせず、「また採れるかな」と、次に見に行く楽しみを残しておくこともできます。
庭がなくても、ベランダの一鉢から
シャン先生の記事では、子どもが一つひとつの植物をよく知り、世話に参加できる規模の庭についても紹介されています。
大切なのは、広く立派な庭をつくることではありません。植える、水をやる、草を取る、収穫する。子どもが自然の中で本当に必要な仕事に参加できる環境です。
とはいえ、日本の住まいでは、庭を用意するのが難しいご家庭も多いでしょう。
その考え方を家庭に取り入れるなら、ベランダの一角で、鉢植えの花や野菜を育ててみるのも一つの方法です。
小さなじょうろで水を運ぶ。新しい葉が出ていることに気づく。育った野菜を、大人と一緒に収穫する。
大人だけがお世話をして「見てごらん」と呼ぶのではなく、子どもにも、できることに参加してもらう。身近な場所に、そんなふうに関われる自然を少しずつつくってみてはいかがでしょうか。
ただし、ベランダでは、子どもがよじ登って転落しないための環境づくりが先です。
手すりの近くに、足場になる鉢や植木台、椅子などを置かないようにしましょう。子どもだけでベランダに出られないようにし、お世話をするときも必ず大人が一緒に過ごします。
安全な場所を確保できない場合は、無理にベランダを使わず、室内で育てられる鉢植えから始めてもよいでしょう。
では、雨の日は自然遊びもお休み?

最近、東京では雨の日が続いています。
いつもの公園へ行きにくく、「早く晴れないかな」と思っているご家庭もあるのではないでしょうか。
でも、雨の日にも、植物との関わりは続きます。
風雨が穏やかで、安全に過ごせるときには、大人と一緒にいつもの鉢を見てみましょう。
雨が当たって土が十分に湿っていれば、今日は水やりをしなくてもよいかもしれません。一方、屋根の下に置かれた鉢には、雨がほとんど届いていないこともあります。
「こっちの土は、まだしっとりしているね」
「この鉢には雨が届いていないね。土はどうかな」
いつものお世話をしながら、子どもが雨音に耳を向けたり、葉っぱについたしずくを見つけたりするかもしれません。
いつもの葉の上に、水の粒がある。
しずくが一つ、下へ落ちる。
さっきまで小さかった雨音が、少し大きくなる。
いつもの植物を世話する中で、雨の日の自然にも出会う。
雨について教える時間を別に用意しなくても、子どもが何かに気づいたら、大人も少し手を止めて、一緒に見てみればよいのです。
小雨の日や雨上がりに、安全に外へ出られるなら、長靴を履いて、いつもの道を歩いてみるのもよいでしょう。
「昨日は、ここに水たまりがなかったね」
大人が深さや足元を確かめた浅い水たまりに、子どもが入りたそうにしていたら、少し歩いてみる。足を置くと水が動く。もう一歩進むと、また違う音がする。
そして晴れた日に同じ場所を通ったら、もう一度見てみます。
水たまりは小さくなっているでしょうか。
それとも、もうなくなっているでしょうか。
違いを答えさせる必要はありません。
子どもが立ち止まったら、一緒に見る。何かを指さしたら、その先に目を向ける。そのくらいの付き合い方でよいと思います。
もちろん、強い雨や風、雷のある日に無理に外へ出る必要はありません。ベランダも含め、安全に過ごせることを優先します。
晴れた日と雨の日に、別々の「自然遊び」を用意するのではなく、いつもの植物や場所が変わっていく様子に触れる。
それも、自然との関わりを日常にする、一つの楽しみ方ではないでしょうか。
特別な体験を増やすより、毎日の関わりを
森へ出かける日や、畑で収穫する特別な一日も、もちろん素敵な体験です。
でも、自然との関わりを、その日だけに取っておかなくてもよいでしょう。
朝、大人と一緒に鉢植えの様子を見る。
帰り道に、昨日見つけた水たまりをもう一度見る。
育てている野菜が気になったら、収穫できそうか確かめてみる。
毎回、新しい発見や学びを用意しようとしなくてもかまいません。
「今日は、どうなっているかな」
そんな気持ちで見に行ける植物や場所が、身近に一つある。自然との付き合いは、そこから始められそうです。
次の休日に何を体験させようかと考える前に、今日、子どもと一緒に世話をする一鉢から。
晴れた日にも、雨の日にも、その子なりの自然との関わりが続いていくかもしれません。
参考資料
Association Montessori Internationale(AMI)
Angela Shang「Let Nature Call Children: How Montessori Responds to the Childhood Crisis of the Digital Age」Voices of AMI Training
消費者庁
「子どもの転落事故に注意!-落ちるまではあっという間です。事前の対策で事故防止を-」
気象庁
「雷から身を守るには」
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