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なぜ名詞は黒い三角、動詞は赤い丸? – マリア・モンテッソーリが文法記号に込めた物語

日本語の品詞記号の一例。以下で紹介するオルテガの記事とは、一部の品詞の分類・記号の対応が異なります。

名詞は黒い三角。動詞は赤い丸。
モンテッソーリ教育の文法記号には、決まった色と形があります。

でも、どうして名詞は三角なのでしょう。どうして動詞は丸く、赤いのでしょうか。

この疑問について、AMI(国際モンテッソーリ協会)の3〜6歳トレーナー、Gabriela Ortega(ガブリエラ・オルテガ)は、AMI公式「Voices of AMI Training」の記事で、記号の背後にある物語を紹介しています。

色と形には、言葉の働きを子どもに伝えるための工夫があります。その物語を知ると、見慣れた教具が少し違って見えてきます。

なお、原記事は冠詞・前置詞などを含む9品詞を扱っています。日本語の教材とは一部の対応が異なるため、ここでは原記事の品詞名に沿って物語を紹介し、日本語の例を補足しています。

今回お話を紹介するAMIトレーナー

Gabriela Ortega(ガブリエラ・オルテガ)

AMI 3–6 Trainer

Gabriela Ortega(ガブリエラ・オルテガ)の人物イラスト

AMI(国際モンテッソーリ協会)の3〜6歳トレーナー。イタリアのローマで0〜3歳、ペルージャで3〜6歳、ベルガモで6〜12歳のモンテッソーリ教師資格を取得。幼児教育と教育心理学を学び、メキシコのカンクンとプラヤ・デル・カルメンのモンテッソーリ校、アクマルのマヤ・コミュニティセンターの設立に携わりました。教師養成機関Formación Pedagógica Montessorianaの創設者でもあり、学校への助言、AMIコースの試験官、国内外での講演などを通じて教育者の育成に取り組んでいます。

出典:Association Montessori Internationale(AMI)/Colegio Montessori de Cancún

※人物イラストはAMI公式および公開されている本人写真を参考に制作したイメージです。

文法記号の物語を、一つの風景から

まず、オルテガが紹介する物語をもとにしたイメージ画を見てみましょう。

大地にはピラミッド。空には太陽、月、彗星。言葉をつなぐ橋や、金色の錠もあります。ここから、それぞれの色と形に重ねられた物語をたどっていきます。

ピラミッド、太陽、月、彗星、橋などで文法記号の物語を表した風景のイメージ画

オルテガが紹介する文法記号の物語をもとに制作したイメージ画。原記事の品詞名に沿っており、日本語の教材とは一部の記号の対応が異なります。マリア・モンテッソーリの原図を再現したものではありません。

名詞は、長い年月を越えて残るピラミッド

オルテガが紹介する名詞の物語には、ピラミッドが登場します。

人の世代が変わっても、名前は受け継がれていく。その持続性を、長く残る建造物に重ねたものです。黒い色には、太古の植物から生まれた石炭のイメージが結びついています。

そのピラミッドを平面の「影」として表したものが、名詞の黒い正三角形です。

三角形だけを見ていると気づきにくいのですが、その向こうには立体があります。形の由来を知ると、記号を見ながら、どっしりと立つピラミッドを思い浮かべられます。

動詞は、動きとエネルギーをもつ赤い球体

一方、動詞に重ねられているのは、太陽のような赤い球体です。

安定して立つピラミッドに対し、球体は転がります。太陽のイメージには、生命を支えるエネルギーもあります。この球体の「影」が、動詞の赤い丸になります。

名詞と動詞の違いを、形そのものの性質に重ねる。ここに、文法を感覚で捉えられるようにする工夫が見えてきます。

たとえば、日本語で「花瓶」と言えば、ものが思い浮かびます。そこに「運ぶ」「洗う」「拭く」が加わると、その花瓶をめぐる場面が動き出します。

子どもが自分で経験してきた動作には、それぞれ言葉があります。動詞を考えることは、その経験を言葉でもう一度確かめる機会になります。

名詞のそばにいる、二つの青い三角

名詞の仲間には、小さな水色の三角で表される冠詞と、濃い青の三角で表される形容詞があります。

オルテガは、名詞を母親、冠詞をその腕に抱かれた赤ちゃん、形容詞を母親と手をつなぐ子どもにたとえて説明しています。そばに付き添う姿から、言葉同士の関係を伝えます。

太陽の光を受ける、副詞の月

動詞に寄り添う副詞は、動詞より小さなオレンジの丸。動詞を太陽にたとえると、副詞はその光を受ける月になります。

さらに、動詞と副詞の関係には、大小の歯車がかみ合って動くたとえも紹介されています。動作と、その行われ方を一緒に考える表現です。

ここで、日本語の例を考えてみましょう。
「花」から「赤い花」へ。
「歩く」から「ゆっくり歩く」へ。

花と赤い花、歩くとゆっくり歩くを品詞記号で比較した図

言葉の働きを示す日本語の補足例。

「赤い」が加わると、どんな花なのかが伝わります。「ゆっくり」が加わると、歩き方が伝わります。三角と丸を共有する仲間の関係が、言葉の中にも見えてきます。

名詞の場所を取ろうと、背伸びする代名詞

代名詞は、紫の細長い三角です。物語の中では、名詞に代わろうと背伸びし、紫の怒りを見せる登場人物。形と色を、その性格に重ねています。

たとえば「花瓶」を「それ」と言い換えると、名前を繰り返さずに話せます。こうした言葉の働きを思い浮かべると、名詞の場所に現れる登場人物という物語もわかりやすくなります。

言葉を結ぶ手と、川を渡る橋

ピンクの横棒で表される接続詞は、離れたもの同士が手をつなぐように、言葉を結びます。以前の記号は、結婚を思わせる二つのつながった輪だったと紹介されています。

一方、緑の記号で表される前置詞には、川を隔てた土地を結ぶ、葉やつるで覆われた橋の物語があります。言葉の間に関係をつくる働きを、橋に重ねた表現です。

金色の記号に重ねた、あふれる感情

「ああ」「わあ」のように感情があふれる間投詞・感嘆詞には、金色の記号が使われます。オルテガは古い金色の錠のイメージを紹介し、喜びへ開く扉や、子どもの熱意に結びつけています。

ものを指したり、動作を伝えたりする言葉に加えて、思わず声になる気持ちもある。文法記号の物語には、そのような言葉も登場します。

オルテガが紹介する「大地と空」の絵では、名詞・冠詞・形容詞が大地に、動詞・副詞・代名詞が空に配置されます。個々の物語を知ってから冒頭のイメージ画に戻ると、言葉の仲間とつながりを、もう一度見渡せます。

記号を描くと、もう一度読む理由が生まれる

文法の学びの土台には、子どもが日々の生活で聞き、話してきた言葉の経験があります。オルテガは、文法を暗記する規則としてではなく、子どもの中にすでにある言語を、あらためて確かめる活動として紹介しています。

記号を選んで描くために、子どもは言葉を読み返し、一つずつの働きに目を向けます。「ゆっくり歩く」なら、何をするのかを伝えるのは「歩く」。その歩き方を詳しくするのは「ゆっくり」です。

記号は、子どもが経験してきた言葉の働きを、目に見える形で確かめる手がかりになります。

どの記号を選ぶか考えるために、子どもは言葉に立ち止まります。手で記号を描く活動と、文を読み直す思考が結びつくのです。

「赤い花を飾る」という文なら、ものを示す言葉はどれでしょう。花の様子を伝えているのはどれでしょう。何をするのかを表す言葉はどれでしょうか。

文全体の意味がわかっていても、一つずつの言葉に目を向けると、それぞれが担っている役割が見えてきます。記号を選ぶ過程そのものに、考える時間があります。

言葉と経験を結ぶ、幼児期の生活

ここからは、幼児期の生活とのつながりを考えてみます。花をいけながら「茎」「葉」「花瓶」の名前を知る。布を絞り、「絞る」という動作を経験する。小さな子どもにとって、言葉はこうした具体的な経験と結びついています。

1歳半〜3歳ではその結びつきを豊かにし、3〜6歳では、関心や言語の育ちに合わせて言葉の働きを楽しむ機会を用意する。記号の学びも、子どもがすでに使っている言葉や経験を手がかりにしていきたいものです。

言葉の関係を、日本語でも確かめてみる

日本語では、「花を飾る」と「花が咲く」のように、助詞が言葉の関係を示します。

花を飾ると花が咲くを名詞・助詞・動詞の記号で示した図

日本語の品詞記号を使った補足例。原記事の前置詞と、日本語の助詞は同じ品詞ではありません。

同じ「花」でも、飾る対象になるときと、咲くものとして語られるときがあります。一つずつの言葉が、文の中でどのように働いているのかを確かめる楽しさがあります。

色と形の向こうに、言葉の働きを見る

ピラミッド、太陽、月、親子、手をつなぐ輪、川を渡る橋。オルテガが紹介する物語は、文法記号の色と形に、言葉の働きを想像する手がかりを与えてくれます。

子どもが記号を選ぶときにも、日々の会話を聞くときにも、その言葉が何を伝え、ほかの言葉とどうつながっているかに目を向ける。文法の学びには、いつもの言葉を新しい目で見直す楽しさがあります。

文法記号を伝える、マリア・モンテッソーリ

最後に、文法記号について説明するマリア・モンテッソーリの姿を紹介します。1950年、イタリア・ペルージャの養成コースで撮影された写真です。

1950年、イタリア・ペルージャの養成コースで文法記号について説明するマリア・モンテッソーリ

1950年|イタリア・ペルージャ。養成コースで文法記号について説明するマリア・モンテッソーリ。
出典:AMI Montessori Archives/Association Montessori Internationale。

参考資料

・Gabriela Ortega, “Stories, Essences, and Roots: The History of Grammatical Symbols”, Voices of AMI Training, Association Montessori Internationale(AMI), 2026年。
・Association Montessori Internationale, 同記事の配布資料(PDF・著者紹介付き)。
・Colegio Montessori de Cancún, “Gabriela Ortega Esquivel”。
・Association Montessori Internationale, “Formacion Pedagógica Montessoriana”。

※本記事はGabriela OrtegaによるAMI掲載記事をもとに、文法記号の物語を日本語で要約・紹介したものです。日本語の例・図版と教室生活への考察は、本記事で加えた補足です。全文翻訳ではありません。

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