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低いベッドは何のため?- モンテッソーリの「自由に動ける寝床」と、赤ちゃんの安全な睡眠を一緒に考える

モンテッソーリの赤ちゃんの部屋を調べていると、床に近い位置にマットレスを置いた「低いベッド」や「フロアベッド」を目にすることがあります。

「ベビーベッドではだめなの?」
「床に近い方が、発達にいいの?」
「赤ちゃんが自分で降りられることに、どんな意味があるの?」

低いベッドは、ただ「モンテッソーリらしい寝室」をつくるためのものではありません。

その一番大きな意味は、目を覚ました子どもが、大人に抱き上げてもらうのを待たず、自分の身体を使って次の行動へ移れることにあります。

低いベッドの意味① 目覚めた瞬間から「自分で動ける」

一般的なベビーベッドには柵があります。
赤ちゃんが目を覚ましても、自分でベッドの外へ出ることはできません。

泣いたり声を出したりして、大人が来て、抱き上げてもらって初めて次の場所へ移ります。

もちろん、それ自体が悪いということではありません。

ただ、モンテッソーリでは、子どもが自分で身体を動かせるようになってきたとき、「できる動きまで、大人が代わりにしなくてもよい環境にできないだろうか」と考えます。

AMI(国際モンテッソーリ協会)の子育て支援サイト「Aid to Life」のThe Low Bedでは、低いベッドによって、子どもが目覚めたときから自由に動ける環境をつくることが紹介されています。

身体を動かせるようになった子どもなら、目を覚ましたあと、

目を覚ます。
周囲を見る。
身体を動かす。
寝床から出る。

という一連の行動を、自分から始められます。

Aid to Lifeで紹介されている「低いベッド」の動画。目覚めた子どもが、自分の身体を使って寝床から活動へ移れる環境を見ることができます。動画:Aid to Life

「大人に出してもらうまで待つ」のではなく、目覚めたあとに自分の身体を使って次の行動へ移れること。
ここが、低いベッドを考える大きな理由です。

低いベッドの意味② 「寝る場所」と「活動する場所」が子どもの動きでつながる

Aid to Lifeでは、低いベッドだけを置くのではなく、子どもの手が届く低い棚に、少数の玩具や絵本を用意することも勧めています。

すると、目を覚ました子どもは、

ベッドから出る。
棚まで移動する。
絵本を見る。
玩具に手を伸ばす。

というように、寝る場所から活動する場所までを、自分自身の動きでつなげることができます。

大人がそのたびに、

「起きたから抱き上げる」
「ここへ連れていく」
「これを渡す」

と、すべての場面をつなぐ必要がありません。

モンテッソーリでいう「環境を準備する」とは、子どもに何かをさせることではなく、子ども自身が次の行動へ進めるように環境側を整えておくことでもあります。

だから、低いベッドだけを置けば「モンテッソーリの寝室」になるわけではありません。
寝床を含めて、部屋全体を子どもの発達に合わせて考える必要があります。

低いベッドの意味③ 自分で寝床へ戻れる環境にもなる

低いベッドの特徴は、「自分で出られる」ことだけではありません。

身体の発達が進んでくれば、自分で寝床へ近づいたり、戻ったりすることもできます。

遊んでいた子どもが疲れて寝床へ戻る。
眠くなってきたとき、自分から休む場所へ向かう。

もちろん、赤ちゃんが最初から自分で睡眠を管理できるという意味ではありません。

大人の援助は必要です。

それでも、「眠る場所へ連れていかれる」だけではなく、子ども自身も睡眠への移行に参加できる環境をつくることができます。

「一人で寝られる子にする」ためではありません

ここは誤解されやすいところです。

低いベッドを使う目的は、「早く一人で寝られるようにする」ことではありません。

AMIの0〜3歳トレーナー Molly Schayot(モリー・シャヨット)は、Collaborating Toward Sleep Independenceの中で、睡眠の自立について、大人と子どもの「collaboration(協働)」という視点から説明しています。

必要であれば大人がそばに座る。
優しく触れる。
歌を歌う。
静かにそばにいる。

そして、子どもが少しずつ自分でできるようになってきた部分では、大人が徐々に援助を減らしていきます。

全部やってあげるのでもなく、いきなり全部一人でさせるのでもありません。

その子が今、自分でできる部分を見つけ、そこは子どもに任せる。

これは、食事や着替え、歩行など、モンテッソーリで考える他の「自立」と同じです。

つまり、低いベッドで大切なのは「自分で動ける経験」

低いベッドそのものに、何か特別な発達効果があるということではありません。

大切なのは、そこで生まれる経験です。

目を覚ましたら、自分で身体を動かせる。
行きたい場所へ、自分で移動できる。
身体の発達が進めば、自分で寝床へ近づくこともできる。

こうした、「自分の身体を自分で使って、次の行動へ移る経験」を環境によって妨げないために、モンテッソーリでは低いベッドという考え方があります。

だから、大切なのはベッドの高さを真似することではありません。

「この環境では、子どもが自分でできることは何だろう?」

と考えることなのです。

ただし、「自由に動ける」と「安全に眠れる」は別に考えます

ここからは、とても大切な点です。

Aid to Lifeで低いベッドが紹介されているからといって、どのような床置きマットレスでも乳児の睡眠に安全だという意味ではありません。

日本のこども家庭庁「赤ちゃんが安全に眠れるように」では、1歳未満の赤ちゃんについて、身体が沈み込まない硬めで平坦な布団やマットレスを使うこと、1歳までは掛け布団を使わないこと、寝床にはぬいぐるみやタオルなどを置かないことなどを案内しています。

また、こども家庭庁の「窒息・誤飲事故」では、0〜1歳頃の就寝について、できるだけベビーベッドを利用することも勧めています。

これは、大人用ベッドや壁との隙間への挟まり、柔らかな寝具への埋没、大人の身体による圧迫など、睡眠中の事故を防ぐためです。

つまり、「モンテッソーリでは低いベッドを紹介しているから、乳児には低いベッドの方が安全」とは言えません。

発達のために自由な動きを保障することと、睡眠時の安全を確保すること。
この二つは分けて考える必要があります。

「モンテッソーリだから低いベッド」ではありません

低いベッド。
低い棚。
小さな絵本。
シンプルな部屋。

写真だけを見ると、それが「モンテッソーリの赤ちゃんの部屋」のように見えることがあります。

でも、モンテッソーリ教育で大切なのは、形を真似することではありません。

子どもが今、どんな身体の動きを獲得しているのか。
自分でできることは何なのか。
大人がしていることの中に、本当は子ども自身ができることはないか。

その姿を観察しながら環境を考えます。

低いベッドの意味も、そこにあります。

子どもが自分でできる動きを、環境によって奪わないこと。

そのうえで、年齢や発達段階に応じた安全性をきちんと確保する。

「低いベッドを使うか、使わないか」だけではなく、「この子が、自分の身体を自分で使える安全な環境をどうつくるか」と考えること。

それが、モンテッソーリの寝室づくりで大切にしたい視点です。


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